2014年10月07日

健康寿命も延びているか-2013年試算における平均寿命と健康寿命の差

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任 村松 容子

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7月31日に厚生労働省から「2013年簡易生命表」が公表され、平均寿命が男女とも過去最高を更新したことがわかった。しかし、最近では、生きている長さそのものよりも、いつまで健康で生きていられるのか?という視点から、「健康寿命」への関心が高まっている。
   そこで、「2013年簡易生命表」と7月上旬に同じく厚生労働省から公表された「2013年国民生活基礎調査」の結果から2013年時点における健康寿命を試算してみたところ、2010年からの3年間で男性が+0.77年、女性が+0.59年延びていた。この延びは、男女とも平均寿命の延びを上回っているが、健康寿命は平均寿命と比べると、男性で約9年余、女性で約12年余短く、依然として不健康な期間は長い。
   本稿では、2013年の平均寿命と健康寿命の概要を示したあと、今後の健康寿命のさらなる延伸に向けた課題を整理したい。

1―この3年間で、平均寿命も健康寿命も延伸

1|平均寿命は男女とも過去最高

7月31日に厚生労働省から2013年の簡易生命表が公表された。これによると、平均寿命は男性が80.21歳、女性が86.61歳となっている。日本で男性の平均寿命が80歳を超えたのは初めてであるほか、女性も過去最高を更新しており、平均寿命は今もなお延びている[図表1]。




2|健康寿命も延びているが平均寿命との差は縮まっていない

健康寿命は、厚生労働省による定義では、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間とされ、「生命表」と「国民生活基礎調査」の「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」という設問の結果を用いて算出している。直近の健康寿命としては2010年時点のものが公表されており、男性が70.42歳、女性が73.62歳だった。
   2013年時点の健康寿命を、今回公表された「2013年簡易生命表」と、7月上旬に厚生労働省から公表された「2013年国民生活基礎調査」の結果を使って2010年の算出方法に倣って、筆者が計算してみたところ、男性が71.19歳、女性が74.21歳となった。この結果から健康寿命はこの3年間で男性が+0.77歳、女性が+0.59歳延びたことになる。この間の平均寿命の延びは、男性が+0.57歳、女性が+0.22歳なので、この3年間の健康寿命の延びは、平均寿命の延びを上回っている。
   厚生労働省の健康寿命は、2001年時点のものから3年おきに計4時点のものが既に公表されている。今回の結果もあわせて、健康寿命は男女とも、毎回少しずつ延びているが、健康寿命と平均寿命の差はほぼ横ばいで推移している。上述のとおりこの3年間に関しては、男女とも健康寿命の延びが平均寿命の延びを上回ったものの、平均寿命との差は依然として男性で約9年、女性で12年余と長く、その差、すなわち、健康上の問題で日常生活に影響がある期間は改善していない。




2―健康上の問題で日常生活に影響がある割合~女性は男性より高い。65歳以降で改善傾向。

では、健康度合はどの程度改善しているのだろうか。
   健康寿命の計算に使われているのは、「国民生活基礎調査」の「あなたは現在、健康上の問題で日常生活に何か影響がありますか」という設問である。2013年の結果は、全体の13.3%(男性12.0%、女性14.5%)が「健康上の問題で日常生活に影響がある」と回答している
   健康上の問題で日常生活に影響がある割合を年齢階層別にみると、男女とも年齢が高いほど健康上の問題で日常生活への影響がある割合が高く、70歳以降で急激に高くなる[図表3左]。
   男女を比較すると、女性は30~59歳、75歳以上と、ほとんどの年代で男性よりも健康上の問題で、日常生活への影響がある割合が高い[図表3左]。この男女の違いは、他の年の調査でも同様である。このように、女性は男性よりも、健康上の問題で日常生活への影響がある割合が高いことから、平均寿命では男性を+6.40歳上回っているのに対し、健康寿命では+3.02歳上回っているに過ぎない。
   つづいて、2004年からの時系列でみると、60歳未満では、ほぼ横ばいであるのに対し、65歳以上の高齢者では継続的に改善している[図表3右。図表3では、29歳未満を省略したが、29歳未満についてもほぼ横ばいとなっている。]65歳以上の高齢者の改善の影響もあって、健康寿命は延びている。




3―健康寿命の延伸に向けて

生活習慣病やロコモティブシンドロームは、65歳以上の年代に症状が深刻になるケースが多く、ただちに死亡にいたるわけではないが、特に高齢者の生活の質(QOL)を下げる要因の1つと考えられている。現在、健康寿命の延伸に向けて、生活習慣病や、ロコモティブシンドロームについて、予防、および重症化を防ぐための政策が行われているが、こういった政策や健康意識の高まりが、65歳以上の高齢部分における健康度合の改善につながっているとすれば、今後も引き続き改善が見込める可能性があるだろう。
   一方で、65歳未満の健康度合は横ばいで推移しており、現在のところ改善はみられない。また、本稿では詳細は示していないが、健康度合の男女差も現在のところ改善はないようだ。65歳未満の健康度合の改善と、健康度合の男女差の縮小は引き続き課題となるだろう。
   さらに、厚生労働省は健康寿命の公表にあたり、健康寿命の延伸と同時に、健康寿命の都道府県格差を縮小することを目標として掲げている。2010年時点では、都道府県の差は最大で男性 2.79年、女性 2.95年だった。2013年については、まだ都道府県別の生命表が公表されていないため不明だが、この差がどう改善していくかについても注目したい。

 

 
 1 2013年時点の健康寿命は筆者試算による。
 2 「国民生活基礎調査」は毎年実施されているが、健康寿命の算出に使用する設問を含む健康調査は3年に1回実施されている。
 3 ここでは、2013年簡易生命表の結果と2013年国民生活基礎調査の結果を使って、厚生労働科学研究「健康寿命における将来予測と生活習慣病対策の費用対効果に関する研究」のロジックを使って計算をした。正式な健康寿命は厚生労働省からの公表を待ちたい。
 4 2010年は、第21回完全生命表による平均寿命。
 5 日常生活に影響がある人の影響の内容は「日常生活動作」が39%、「外出」が36%、「仕事・家事・学業」が44%、「運動」が35%、「その他」が14%となっている(割合はいずれも男女年齢計)。
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村松 容子 (むらまつ ようこ)

研究・専門分野
健康・医療、生保市場調査

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