2016年01月29日

2050年のCO2削減目標をコミットした企業-「低炭素杯2016」の『ベスト長期目標賞』受賞企業が決定

川村 雅彦

このレポートの関連カテゴリ

文字サイズ

はじめに

低炭素杯実行委員会(小宮山宏委員長)は、昨年12月、「低炭素杯2016」の一環として『ベスト長期目標賞』の受賞企業10社を公表した(図表1)。この賞は、超長期時間軸でCO2排出削減目標を掲げ先進的に取り組む企業を表彰(公募ではなく、企業の公表情報を基に審査)するものである。

そもそも「低炭素杯」とは何か。次世代に向けた低炭素社会の実現をめざし、全国の地球温暖化(気候変動)防止に関する活動の表彰を通じて、優れた取組のノウハウや情報を共有し、さらなる活動へ連携や意欲を創出する仕組みとして、2010年度より毎年開催されている。

今年度は、昨年12月にパリで開催された国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)に合わせて、2050年を見据えた長期的かつ志の高いCO2排出量の削減目標を設定し、積極的に取り組んでいる自治体および企業を表彰することになった。

他にも超長期目標を設定する企業は金融業も含めて複数あるが、本稿では、選ばれた10社について分析してみたい(筆者も審査にかかわったが、その評価基準を踏まえつつ筆者独自の視点から)。
図表1: 低炭素杯2016の 『ベスト長期目標賞』 企業一覧

1――「低炭素杯2016」 と 『ベスト長期目標賞』 の狙いと概要

1|「低炭素杯2016」の概要
〔2010年度から始まった「低炭素杯」〕
異常気象などで実感する地球温暖化(気候変動)問題に立ち向かう人々を応援し、その取組を全国に紹介する表彰制度が「低炭素杯」である。しかし、ご存じでない方もいると思うので、その狙いと概要を説明したい。「低炭素杯」は、次世代に向けた低炭素社会の構築をめざし、全国の地球温暖化防止に関する多様な主体の活動の表彰を通じて、優れた取組のノウハウや情報を共有し、さらなる活動への連携や意欲を創出するための場である。2011年春に東京大学・安田講堂で産声をあげ、それ以来毎年開催されており、今年2月の表彰式(詳細は後述)で6回目を数えるまでとなった。

この表彰制度のユニークなところは、予め表彰団体を決定するのではなく、各部門別に“ファイナリスト”を選び、ファイナルステージでの各団体のプレゼンテーションにより受賞者を決めることである。市民目線も尊重することから、低炭素杯実行委員会の委員に加え「ゲスト審査員」を公募する。

〔今年2月開催の「低炭素杯2016」〕
来月開催する「低炭素杯2016」は、6年目の新たなる「低炭素杯」としてさらに成熟させるべく、東京・大手町の「日経ホール」にステージを移し、こちらも初めての試みとなる“平日の開催”となった。低炭素杯実行委員会が主催し、一般社団法人地球温暖化防止全国ネット(JNCCA)、一般財団法人セブン-イレブン記念財団、株式会社LIXILが共催する。また、様々な企業や団体が協賛・協力しており、後援は環境省、文部科学省、プラチナ構想ネットワークである(図表2)。

今回の部門別ファイナリストは、企業部門15社、地域部門10団体、学生部門8校、地域エネルギー部門5団体であり、その中から環境大臣賞と文部科学大臣賞をはじめ協賛・協力企業/団体賞が授与される。詳細は以下のホームページを参照されたい。
http://www.zenkoku-net.org/teitansohai/program.php

2|今年度から始まった 『ベスト長期目標賞』
今年度は、昨年12月にパリで開催された国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)に合わせて、2050年を見据えた長期的かつ志の高いCO2削減目標を掲げて、積極的に取り組んでいる自治体および企業を『ベスト長期目標賞』として表彰することになった。低炭素社会の実現には、社会を構成する主体の中で大きな影響力をもつ自治体と企業が重要な役割を果たすと考えられるからである。

この賞は、主催者である低炭素杯実行委員会がNPO法人「サステナビリティ日本フォーラム」および認定NPO法人「環境経営学会」と協力して新たに創設したもので、自治体158件から7件、企業256社から10社を次のように受賞団体として決定した。その中から1団体ずつ大賞が選ばれる。

<自治体部門>
長野県、横浜市、富山市、名古屋市、豊田市、北九州市、御嵩町
<企業部門>(五十音順)
(株)大林組、カシオ計算機(株)、キリンホールディングス(株)、コニカミノルタ(株)、サントリーホールディングス(株)、ソニー(株)、大成建設(株)、トヨタ自動車(株)、日産自動車(株)、本田技研工業(株)

『ベスト長期目標賞』の実際の評価・審査は、新たに組成された「特別審査会1」が行った。企業部門の審査方法は以下のとおりである(自治体部門は割愛)。
調査対象とした企業
企業256社:日経225対象銘柄(2015年10月1日現在)および過去10年間の環境省主催「環境コミュニケーション大賞」受賞企業
調査対象とした情報
HPで公表されている環境(CSR、サステナビリティ)報告書、有価証券報告書、アニュアルレポート、プレスリリースなど、公表されている情報
審査項目と評価
(1)長期目標内容、(2)実績評価、(3)トップコミットメント、(4)バリューチェーンでの取組の4項目を傾斜配点し、過去1年間のコンプライアンス調査を経て評価・審査
 
なお、『ベスト長期目標賞』の詳細は、以下のホームページを参照されたい。
http://www.zenkoku-net.org/teitansohai/news/news003.php
 
図表2: 「低炭素杯2016」 の案内状表紙


1 特別審査会の座長は後藤敏彦氏(環境経営学会会長)、副座長は倉阪秀史氏(千葉大学大学院教授)であり、筆者を含めて7名の委員から構成された。
Xでシェアする Facebookでシェアする

このレポートの関連カテゴリ

川村 雅彦

研究・専門分野

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【2050年のCO2削減目標をコミットした企業-「低炭素杯2016」の『ベスト長期目標賞』受賞企業が決定】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

2050年のCO2削減目標をコミットした企業-「低炭素杯2016」の『ベスト長期目標賞』受賞企業が決定のレポート Topへ