2015年11月06日

地方交付税とは似て非なる臨時財政対策債の本質

石川 達哉

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■要旨

臨時財政対策債の発行額に関する地方公共団体の選択は、国から付与される発行可能額を上限として起債額を決定することのみであり、マクロの発行可能総額がどのように決まるかに依存する部分が大きい。地方交付税のための法定財源としての国税が十分にはない中で地方財政計画上の潜在的な財源不足を顕在化させないための手段が臨時財政対策債であり、その発行可能額は景気変動に伴って拡大と縮小を繰り返す。それに加えて、過去の臨時財政対策債の元利償還費のために新規の臨時財政対策債が割当てられる仕組みが採用されており、この仕組みが改められない限り、臨時財政対策債は今後も趨勢的に増加する。

一方、償還については、累積ベースで見た現実の償還額が元利償還金に対する交付税措置額を下回るという「償還不足」の度合いが縮小するなど46道府県全体では2010年度以降に改善が進んでいる。他方、この不足が拡大を続けている道府県もあり、2極化が示唆される。臨時財政対策債が広義の地方交付税とみなせる存在だとしても、地方債であることに変わりはない。臨時財政対策債を除外することなく、これを含む全地方債の残高の動向を見守ることが重要であろう。
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(2015年11月06日「基礎研レポート」)

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