2015年05月29日

英国、EU残留の是非を問う国民投票へ-合理的な判断は残留支持だが・・・

経済研究部 常務理事 伊藤 さゆり

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■要旨

5月の総選挙で保守党が単独過半数を確保したことで、英国が17年末までにEU残留の是非を問う国民投票を行うことが決まった。

キャメロン首相は、「改革されたEU」への残留を望んでおり、国民投票の前にEUに改革を提案する。提案は、(1)EUからの移民に対する規制、(2)EUの基本条約が掲げる「絶えず緊密化する連合」からの適用除外、(3)EU法の内容や決定プロセスの見直しからなる。

国民投票はEUとの交渉の成果を問うものであるため、EUとの交渉の結果は重要な意味を持つ。EUの欧州委員会は「ヒトの移動の自由」の原則の修正には応じられないが、EU法に関わる提案については前向きな取り組みが期待される。意思決定機関である首脳会議、閣僚会議のメンバーは、提案の内容ごとに利害が異なり、国ごとの温度差もある。中東欧は移民規制には反対の立場だが、北欧は英国と懸念を共有する。最も大きな影響力を持つドイツは今のところ柔軟な姿勢を示す。

世論調査は、EU残留支持が優勢だ。EUを離脱した場合の英国の立ち位置に不確実な要素が大きい。英国民は合理的に判断し、残留支持多数という結果に落ち着く可能性が高いと思われる。

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経済研究部   常務理事

伊藤 さゆり (いとう さゆり)

研究・専門分野
欧州の政策、国際経済・金融

(2015年05月29日「基礎研レポート」)

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