2014年05月30日

鉱工業生産14年4月~4-6月期の減産は確実、注目は在庫動向

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・4月の生産は市場予想を上回る減産幅に
・注目される在庫動向

■要旨

経済産業省が5月30日に公表した鉱工業指数によると、14年4月の鉱工業生産指数は前月比▲2.5%と2ヵ月ぶりの低下となり、事前の市場予想(QUICK集計:前月比▲2.0%、当社予想も同▲2.0%)を下回る結果となった。出荷指数は前月比▲5.0%と3ヵ月連続の低下、在庫指数は前月比▲0.5%と2ヵ月ぶりの低下となった。
4月の生産を業種別に見ると、速報段階で公表される15業種中12業種が前月比で低下した。特に、駆け込み需要の影響もあって13年度末にかけて増産ペースが大きく加速した輸送機械が前月比▲3.5%と大きく落ち込んだ。一方、設備投資の回復を反映し、はん用・生産用・業務用機械は前月比0.5%と堅調を維持した。

製造工業生産予測指数は、14年5月が前月比1.7%、6月が同▲2.0%となった。予測指数を業種別に見ると、設備投資の回復基調を受けて増産が続くはん用・生産用・業務用機械は5月が前月比4.1%、6月が同2.2%と好調を維持する見込みとなっている、一方、これまで生産の牽引役となっていた輸送機械は4月実績の前月比▲3.5%の後、5月が同0.2%、6月が同▲5.4%となっている。駆け込み需要の反動から国内販売が大きく落ち込んでいることを背景として、当面は生産調整が続く可能性が高い。
14年4月の生産指数を5月、6月の予測指数で先延ばしすると、14年4-6月期は前期比▲2.4%となる。6四半期ぶりの減産となることは確実だが、13年度後半の生産が駆け込み需要によって大きく押し上げられていたことを考えれば、このこと自体はあまり悲観的に考える必要はないだろう。
生産以上に注目されるのは在庫の動きだ。前回の消費増税後の生産は97年4-6月期が前期比▲0.5%、7-9月期が同0.5%とほぼ横ばい圏の動きが続いたが、その間在庫が大きく積み上がった(97年4-6月期:前期末比6.5%、10-12月期:同1.0%)ことがその後の生産調整を深刻なものにした面があった。14年4月の在庫指数は前月比▲0.5%の低下となったが、これは輸送機械が輸出の船待ちの影響で3月に前月比20.2%の急上昇となった反動で4月には同▲18.1%と急低下した影響が大きい。4月の在庫指数を業種別にみると、15業種中10業種が前月比で上昇しており、全体としては在庫が積み上がる兆しもみられる。
消費税率引き上げ後の最終需要の落ち込みに伴い在庫がある程度積み上がることは避けられないが、最終需要の落ち込みが想定以上のものとなれば、意図せざる在庫が積み上がることにより生産計画の下方修正を余儀なくされる可能性がある。生産の先行きを占う上では引き続き在庫の動きが注目される。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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