2014年05月30日

消費者物価(全国14年4月)~消費税率引き上げ分を上回る価格転嫁

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・消費税率引き上げ分以上に上昇幅が拡大
・約6割の品目が100%以上の価格転嫁率に
・コアCPI上昇率は夏場以降鈍化へ


■要旨

総務省が5月30日に公表した消費者物価指数によると、14年4月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比3.2%(3月:同1.3%)となり、上昇率は前月から1.9ポイント拡大した。季節調整済・前月比では2.1%となった。
消費税率は4/1に5%から8%へと引き上げられた。消費者物価指数に占める非課税品目 の割合が約3割、経過措置で新税率の適用が5月以降となる品目 が約1割(いずれも生鮮食品を除く総合に対する割合)であるため、4月に消費税率引き上げの影響を受ける品目の割合は6割弱となる。この点を考慮すると、消費税率引き上げにより4月のコアCPI上昇率は1.7%ポイント押し上げられる計算となるが、実際の上昇率の拡大幅はこれを若干上回った。
内訳を見ると、消費税の課税品目(4月から新税率適用)の上昇率が3月の前年比1.0%から同4.1%となり、上昇率の拡大幅は消費税率引き上げ分(2.86%(=(1.08-1.05)÷1.05)を若干上回った。非課税品目は3月の前年比0.9%から同0.5%へと伸び率が低下する一方、経過措置により新税率の適用が5月以降となる品目は3月の前年比4.2%から同4.9%へと伸び率が若干高まった。

品目別の価格転嫁率を確認すると 、転嫁率が150%以上の品目が18%、120~150%の品目が14%、100~125%の品目が28%、75~100%の品目が19%、50~75%の品目が7%、50%未満の品目が4%であった。前回の増税時(97年4月)は価格転嫁率が100%を上回る品目は5割弱にとどまっていたが、今回は約6割の品目が100%を上回る転嫁率となった。特に、食料、教養娯楽で税率引き上げ分を超える価格上昇が目立った。

5月の全国コアCPIは、4月は旧税率が適用されている経過措置品目に新税率が適用されることから、さらに0.3%程度押し上げられることになる。全国のコアCPIは夏頃までは前年比で3%台半ばの伸びが続く可能性が高い。ただし、消費税率引き上げに伴う景気減速によって需給バランスが悪化すること、円安効果の一巡から輸入物価の伸びが低下することなどから、その後は伸び率が徐々に鈍化し、年末にかけては2%台後半(消費税率引き上げの影響を除くと0%台後半)の伸びになると予想する。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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