2014年04月21日

貿易統計14年3月~輸出の低迷と駆け込み需要に伴う輸入の急増から貿易赤字がさらに拡大

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・貿易赤字がさらに拡大
・輸出は一進一退が続く
・3月の経常収支(季節調整値)は赤字幅拡大の公算

■要旨

財務省が4月21日に公表した貿易統計によると、14年3月の貿易収支は▲14,463億円の赤字となった。輸出の伸びが2月の前年比9.8%から同1.8%へと低下する一方、輸入が2月の前年比9.0%から同18.1%へと伸びを高めたため、前年に比べた貿易収支の悪化幅は前月よりも拡大した。輸入は消費税率引き上げ前の駆け込み需要に加え、4月からの環境税(地球温暖化対策のための石油石炭税の税率の特例)増税を前にした原油の輸入量急増(前年比14.7%)が押し上げ要因となった。
季節調整済の貿易収支は▲17,142億円の赤字となり、2月の▲11,840億円から赤字幅が大きく拡大した。四半期ベースの貿易赤字は13年4-6月期の▲8.5兆円(季節調整済・年率換算値)から7-9月期が▲11.9兆円、10-12月期が▲15.1兆円、14年1-3月期が▲18.8兆円と拡大傾向が続いている。
14年度入り後は、消費税率引き上げ後の内需の減速に伴い輸入の伸びが低下することを主因として貿易赤字は縮小する可能性が高い。ただし、海外生産シフトの進展といった構造的な要因もあり輸出の回復ペースは引き続き緩やかなものにとどまる可能性が高いことなどから、赤字が解消することは見込めない。現時点では14年度の貿易収支は▲10兆円程度の赤字になると予想している(13年度は▲13.7兆円)。

1-3月期の輸出数量指数を地域別(当研究所による季節調整値)で見ると、米国向けが前期比1.2%(10-12月期:同▲1.0%)、EU向けが前期比▲1.1%(10-12月期:同0.2%)、アジア向けが前期比▲2.2%(10-12月期:同3.0%)、全体では前期比▲1.6%(10-12月期:同1.4%)であった。景気が比較的底堅い米国向けは持ち直しているものの、EU向け、アジア向けが低迷している。大幅な円安が進行し始めてから1年以上が経過しているにもかかわらず輸出は一進一退の状況を脱していない。
一方、1-3月期の輸入数量指数(季節調整値)は前期比2.6%(10-12月期:同2.6%)と3四半期連続の増加となった。消費税率引き上げ前の駆け込み需要もあって国内需要が堅調に推移したことが高い伸びにつながった。GDP統計の外需は2四半期連続でマイナスとなっているが、14年1-3月期も成長率の押し下げ要因となる可能性が高い。

経常収支(季節調整値)は14年1月が▲5,833億円、2月が▲414億円の赤字となったが、3月は貿易赤字(季節調整値)が拡大したため、経常収支の赤字幅は2月から大きく拡大する可能性が高い。この結果、13年度の経常収支は0.8兆円程度とかろうじて黒字を確保することが見込まれる(12年度は4.2兆円の黒字)。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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