2014年03月03日

【アジア新興経済レビュー】輸出主導経済の改善も足踏みか

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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  1. (実体経済)
    前月は輸出主導経済に回復の兆しが見られたが、今月はそれほど良好な指標は見あたらず、足踏み状況にあると考えられる。また、ASEANの一部やインドでGDPが発表された。タイで景気鈍化が深刻となっていることが明らかになる一方で、マレーシアは比較的高い成長を維持しており、インドネシアも市場予想を上回る結果となった。
  2. (インフレ率)
    インフレ率はインドネシアとインドで高い状態が続いている。ただし、方向感には差が生じており、インドネシアで上昇に歯止めがかからない一方で、インドでは低下が続いている。また、フィリピンのインフレ率も上昇基調が続いている。
  3. (金融政策)
    インドネシアで金融政策決定会合が開催されたが、通貨が安定していることや貿易収支が改善していることを受けて、政策金利は据え置かれた(インドでは2月に会合は開催されていない。次回は4月1日を予定)。また、インフレが上昇傾向にあるフィリピンでも政策金利は据え置かれ、特段利上げを示唆するような声明もなかった。
  4. (2月の注目ニュース)
    2月は韓国で「経済革新3カ年計画」の具体案が発表された。潜在成長率の引き上げを狙った改革としては好感できる内容であると言えるが、財政支出を伴うものではないため、即効性には乏しいと見られる。細かな数値目標を多く導入していることから、その目標達成の成否が注目と言えるだろう。また、台湾と中国で分断後初めてとなる中台政策担当者の閣僚級会談が開催されている。首脳会談まで踏み込む内容ではなかったものの、今後も対話が続く見通しであり、中台関係の進展がうかがえる。
  5. (3月の注目点)
    3月にはインドで2013年10-12月期の経常収支が公表される。インドはサービス輸出や労働者による送金によって流入する資金が多く、また7-9月期は金への関税強化によって貿易収支の改善が見られたこともあって、経常収支が大きく改善していた。ただし、10-12月期の経常収支が悪化していたことが判明すると、通貨に下落圧力が生じる可能性があるだけに、その結果が注目される。また、タイの反タクシン派によるデモ活動も収束の兆しを見せておらず、その動向が引き続き注目される。
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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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