2013年11月20日

貿易統計13年10月 ~貿易赤字は13年度末にかけてさらに拡大する可能性

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・大幅な貿易赤字が続く
・輸出は持ち直すも外需が景気の牽引役となることは期待できず

■introduction

財務省が11月20日に公表した貿易統計によると、13年10月の貿易収支は▲10,907億円と16ヵ月連続の赤字となり、赤字幅は事前の市場予想(QUICK集計:▲8,100億円、当社予想は▲9,032億円)を大きく上回った。輸出入ともに前月よりも伸びを高めたが、輸入の伸び(9月:前年比16.5%→10月:同26.1%)が輸出の伸び(9月:前年比11.5%→10月:同18.6%)を大きく上回り、貿易赤字は前年からほぼ倍増となった。ただし、輸入が前年比で極めて高い伸びとなったのは、昨年10月に環境税導入前の駆け込み需要の反動で原油輸入が大きく減少した裏が出た面があることには留意が必要だ。
季節調整済の貿易収支は▲10,725億円の赤字となり、9月の▲11,280億円からは赤字幅が若干縮小した。輸出が前月比1.5%(9月:同▲0.3%)と2ヵ月ぶりの増加となり、輸入の伸び(前月比0.5%)を上回った。先行きについては、輸出は持ち直しに向かうものの、消費税率引き上げ前の駆け込み需要を主因として国内需要の伸びが高まることにより輸入の伸びが加速することが見込まれるため、13年度末にかけて貿易赤字はさらに拡大することが予想される。
10月の輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前月比6.2%(9月:同▲5.8%)、EU向けが同3.1%(9月:同▲1.3%)、アジア向けが同4.6%(9月:同▲5.2%)、全体では同1.9%(9月:同▲1.2%)であった。
10月がいずれの地域向けも高めの伸びとなったのは、9月の落ち込みの反動による部分もあるが、10月の指数水準を7-9月期平均と比較すると、米国向けが3.4%、EU向けが2.1%、アジア向けが1.7%、全体では1.2%高くなっており、輸出は全体として持ち直しに向かっていると判断される。
一方、輸入数量指数(季節調整値)は前月比0.6%(9月:同1.2%)と堅調を維持しており、10月の水準は7-9月期平均よりも1.2%高くなっている。
7-9月期のGDP統計では、輸出が前期比▲0.6%となり、外需寄与度が前期比▲0.5%と3四半期ぶりに成長率の押し下げ要因となった。10-12月期は、輸出は持ち直すものの、内需堅調を反映し輸入も増加を続けることから、現時点では外需寄与度は前期比でゼロ近傍になると予想している。引き続き外需が景気の牽引役となることは期待できないだろう。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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