2013年10月11日

9月マネー統計 ~ 貸出の伸びが一服、金利は過去最低に

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■見出し

・貸出動向:貸出金利は長短ともに過去最低に
・マネタリーベース:順調に増加
・マネーストック:投資信託の伸び率が2ケタ台に

■introduction

貸出・預金動向(速報)によると、9月の銀行貸出の伸び率は前年比2.3%(前月も同じ)となった。従来上昇傾向にあった伸び率は2ヵ月連続で横ばいになっている。残高の増加基調自体は続いているものの、伸び率には一服感が出てきている。日銀短観の設備投資計画が小幅の上方修正に留まったように、企業の設備投資マインドは今ひとつ盛り上がっていない一方、手持ちの現預金は過去最高水準にあるため、伸び率の頭打ち傾向はしばらく続く可能性がある。また、銀行の新規貸出金利(8月)は、短期、長期ともに統計で遡れる1993年10月以降で最低を記録した。日銀の異次元緩和が効いている証左とも言えるが、銀行貸出の採算はさらに厳しさを増している。

9月末のマネタリーベース残高は185.5兆円と7ヵ月連続で過去最高を更新した。マネタリーベースの前月比増加額は平残ベース(季節調整済み)で7.8兆円、末残ベース(季節調整前)では8.6兆円と目標達成ペースを大幅にクリア。7・8月は、資金吸収要因である国債の発行超が大きかったという特殊要因で伸びが鈍化していたが、9月には解消した。マネタリーベースの13年末残高見通しである200兆円程度に向けて順調に進んでおり、達成も十分視野に入っている。

マネーストック統計によると、9月のM2平均残高の伸び率は前年比3.8%、M3は同3.1%と、6月以降ともに伸び率が一進一退となっている。一方、リスク性資産を含む広義流動性の伸び率は3.7%と10ヵ月連続で拡大。狭義のマネーの伸び率は近頃一服ぎみだが、一部で従来よりもリスクを選好する資金の動きが続いているため、広義のマネーとしては伸び率拡大が続いている。

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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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