2013年03月29日

鉱工業生産13年2月~生産は予想外の低下、実体経済の回復は緩慢

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・市場予想を下回り、3ヵ月ぶりの低下
・実体経済の回復は緩慢

■introduction

経済産業省が3月29日に公表した鉱工業指数によると、13年2月の鉱工業生産指数は前月比▲0.1%と3ヵ月ぶりの低下となった。先月時点の予測指数の伸び(前月比5.3%)、事前の市場予想(QUICK集計:前月比2.5%、当社予想は同1.5%)をいずれも大きく下回った。
アベノミクスへの期待から円安、株高が進み、企業、家計のマインドは大幅に改善しているが、輸出、生産などの実体経済の回復は極めて緩やかなものにとどまっている。
2月の生産を業種別に見ると、国内販売の持ち直しを背景に輸送機械が前月比1.8%と好調を維持し、一般機械(前月比1.3%)、鉄鋼(同2.1%)なども堅調だったが、先月時点の予測指数では前月比14.5%の高い伸びとなっていた電子部品・デバイスがスマートフォン向けの落ち込みが響いて同▲5.0%と大幅なマイナスとなったことが指数全体を大きく押し下げた。
製造工業生産予測指数は、13年3月が前月比1.0%、4月が同0.6%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(2月)、予測修正率(3月)はそれぞれ▲3.6%、▲3.0%と大幅なマイナスとなり、ほとんどの業種で生産計画が下方修正されている。円安が大きく進んでいるにもかかわらず企業の想定通りに輸出が回復していないことが影響していると考えられる。特に電子部品・デバイスは実現率(▲14.0%)、予測修正率(▲10.6%)ともに1割を超えるマイナスとなった。
13年2月の生産指数を3月の予測指数で先延ばしすると、13年1-3月期は前期比1.7%の上昇となる。4四半期ぶりの増産は確保されそうだが、先月時点では5%以上の伸びが見込まれていたことからすれば、生産の回復ペースは緩慢で期待を裏切るものとなっている。
企業が増産計画を維持していること、在庫指数が7ヵ月連続で低下するなど在庫調整圧力が低下していることなどから、現時点では生産が腰折れしてしまう可能性は低いと考えられる。ただし、輸出の低迷が長引くようであれば、生産がさらに下振れするリスクが高まる。景気は期待先行で回復ムードが高まっているが、鉱工業生産をはじめとした実体経済の回復がさらに遅れるようであれば、期待が失望に変わる恐れもあるだろう。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

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