2013年02月20日

貿易統計13年1月~貿易赤字は当面拡大傾向が続く公算

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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■見出し

・貿易赤字は原数値では過去最大に
・当面貿易赤字の拡大傾向が続く公算

■introduction

財務省が2月20日に公表した貿易統計によると、13年1月の貿易収支は▲16,294億円と7ヵ月連続の赤字となり、赤字幅は事前の市場予想(QUICK集計:▲13,722億円、当社予想は▲14,929億円)を大きく上回った。輸出が前年比6.4%(12月:同▲5.8%)と8ヵ月ぶりの増加となる一方、輸入が12月の前年比1.9%から同7.3%へと伸びを高めたため、前年に比べた貿易収支の悪化幅は前月よりも拡大した。
原数値の赤字幅は過去最大となったが、1月はもともと正月休みの影響で輸出量が少なく貿易赤字になりやすいという季節性も影響している。季節調整済の貿易収支は▲6,789億円と23ヵ月連続の赤字となったが、12月の▲7,838億円から赤字幅が若干縮小した。輸出入ともに前月比で増加したが、輸出の伸び(前月比3.6%)が輸入の伸び(同1.4%)を上回ったことが赤字幅縮小に寄与した。
輸出は弱めの動きが続いているが、海外経済が中国を中心に持ち直しつつある中、大幅な円安が進行するなど輸出を取り巻く環境はここにきて改善しており、近いうちに下げ止まりから持ち直しに向かうだろう。
ただし、輸出の持ち直しが金額ベースの貿易収支の改善につながるまでには一定の時間がかかる可能性が高い。日本の貿易取引を通貨別に見ると、外貨建ての割合は輸出が61.6%、輸入が77.1%(米ドル建ては輸出が51.5%、輸入が72.5%、いずれも2012年下期実績)となっており、為替レートの直接的な影響は輸出価格よりも輸入価格のほうが大きくなる。このため、短期的には円安は貿易収支の悪化につながりやすくなる。
1月の貿易赤字は季節調整値では前月よりも縮小したが、輸出が春節の影響で押し上げられていることを考慮すれば、実態として赤字が縮小したとは言えない。2月以降は輸入価格の上昇が輸出価格の上昇を上回る交易条件悪化の影響を主因として貿易赤字(季節調整値)は再び拡大することが予想される。円安に伴う輸出数量の増加(輸入数量の減少)が金額ベースの貿易赤字の縮小をもたらすまでには半年程度の時間を要するだろう。

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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