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- 中国経済の見通し:財政出動に加え、利下げに踏み切った中国経済の行方
- 前月発表された4月の景気指標では、これまで景気を牽引してきた投資・輸出・消費の3本柱が揃って減速したことで、景気減速が「緩やかでは済まないのではないか」との懸念が浮上、景気下ぶれリスクは一気に高まった。
- 一方、4月の消費者物価は前年同月比3.4%上昇と抑制目標の4%前後を3ヵ月連続で下回り、最近では原油価格も急落したためインフレ懸念は大きく後退した。また、住宅価格が値下がりし、特にバブル度の高い一部都市では下落幅が大きくなったことから、厳しい住宅価格抑制策を緩和する動きもある。但し、バブル崩壊を防ぐには膨張を抑制することが肝要とする「マクロプルーデンス」を重視する中国政府が、調整途上の現段階で全面緩和に向かう可能性は低く、地域・対象限定の選択的緩和になると考えている。
- 景気下ぶれリスクの高まり、インフレ懸念の後退と住宅価格下落を受けて、中国政府は「安定成長をより重要な位置に据える」との方向性を示した。今回の財政出動は小規模に留まるものの、鉄道建設の本格再開と時期を同じくすることから景気下支え効果は十分ある。また、今回の財政出動では第12次5ヵ年計画など長期計画との整合性を重視しているため、追加の財政出動は「戦略的新興産業」、「循環型経済」、「消費拡大」などの分野になる可能性が高い。
- また、6月7日には貸出・預金基準金利の引き下げが発表された(実施は8日)。8月頃には追加の利下げが実施される可能性も高い。但し、貸出・預金の基準金利を引き下げても効果は限定的で、バブル再膨張のリスクを伴うため、利下げは2回で終了とみている。
- 当面景気減速は続くものの、追加の景気テコ入れ策もあって緩やかな回復に転じ、2012年は8.4%成長、新最高指導部が本格稼動する2013年には9.0%成長を予想する。また、リスクとしては「欧州危機の深刻化」と「旧来型の景気テコ入れ策の復活」が挙げられる。特に後者のリスクは大きく、当面は高成長となるものの将来にバブル崩壊の巨大リスクを残す。
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三尾 幸吉郎
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(2012年06月08日「Weekly エコノミスト・レター」)
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