コラム
2005年03月07日

若年単身世帯の消費動向

篠原 哲

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1.進む晩婚化
最近、晩婚化や未婚者の増加が話題となっている。厚生労働省より公表された人口動態統計では、人口1,000人に対する各年の婚姻件数を示す婚姻率は2004年で5.7%と1987年に並び過去最低の水準となった。また平均初婚年齢も年々高くなる傾向が続いており、人口動態統計では2003年の男性の平均初婚年齢は29.8歳、女性も27.6歳となるなど、1990年の男性28.4歳・女性25.6歳に比べ、晩婚化が進展していることは明らかである。国立社会保障・人口問題研究所が2002年に実施した「第12回出生動向基本調査 結婚と出産に関する全国調査(独身者調査)」では、未婚者を対象にして、独身に留まっている理由(理由は3つまで選択)を調査している。それによると、25~34歳では「適当な相手にめぐり会わない(男性44%、女性49%)」、「必要性を感じない(男性34%、女性34%)」などに次いで、「自由や気楽さを失いたくない(男性29%、女性34%)」、「趣味や娯楽を楽しみたい(男性23%、女性21%)」との回答が男女ともに多い。また独身生活の利点については、「行動や生き方が自由(男性63%、女性68%:18~34歳までの未婚者を対象)」と回答するものが男女ともに圧倒的に多くなっている。このように、独身者が結婚に慎重になっている原因のひとつには、自分が働いて稼いだお金を、趣味などに自由に使いたいという意向が強くなっていることがあるようだ。
では実際に若年の独身者は、どのようなことにお金を使っているのだろうか?そこで、以下では総務省の家計調査を用いて、若年の単身世帯における消費の特徴を確認してみることにしよう。そもそも家計調査では、毎月公表される「二人以上の世帯」を対象とした調査結果とは異なり、単身世帯を対象とした調査結果は四半期ごとにしか公表されない。しかし晩婚化が進み、将来的にも単身世帯数の増加が予想されるなか、若年の単身世帯の消費動向を把握する重要性は高まっていると考えられる。

2.若年単身世帯の消費動向
ここでは家計調査を用いて、20歳台後半の男性、女性の単身者世帯(勤労者世帯)における消費支出の内訳を調べてみることにする。対象とした世帯は、表1にある男性の単身世帯(平均年齢27.5歳)、女性の単身世帯(平均年齢27.0歳)であり、表1ではこれらの世帯における2004年の年間収入や消費支出額なども示した。ここから、男性と女性の単身世帯を比較してみると、所得水準に差があることなどもあり、女性の方が消費性向が高い傾向があるようだ。
なお表1では参考までに、同様に家計調査を用いて、既に結婚している同年代の平均的な「二人以上世帯(勤労者世帯)」(世帯主の平均年齢27.5歳)のデータも掲載している。この世帯の家族構成は、家計調査より、「世帯主、配偶者、18歳未満の子供一人の3人世帯」と仮定した。
 

 
表2では、表1で示したそれぞれの世帯における、年間の消費支出額に占める項目別支出額の割合をまとめてみた。それぞれの所得水準などが異なるため、厳密な比較が難しい点には留意が必要であるが、ここから男性の単身世帯では、食料、交通・通信、教養娯楽などにあてる割合が大きいことが分かる。なかでも外食や教養娯楽分野に対する支出割合が、単身女性世帯や、二人以上世帯に比べて大きい。教養娯楽分野には、テレビ、パソコンなどの「教養娯楽用耐久財」、パック旅行費などの「教養娯楽サービス」等が含まれており、単身男性世帯が外食に加えて、このような趣味等に関する分野への消費にも積極的である様子を確認することができる。
一方、女性の単身世帯を見てみると、住居、被服及び履物、教養娯楽、その他の消費支出への支出割合が、他の世帯に比べて相対的に大きい。なかでも衣類関係(洋服、シャツ・セーター類、下着類を合計)への消費割合は7.6%と、男性単身世帯の2.7%、二人以上世帯における婦人用衣類(婦人用の洋服、シャツ・セーター類、下着類を合計)の1.6%を大きく上回っている。また「理美容サービス」や化粧品などの「理美容用品」に対する支出割合も7.8%と他の世帯に比べて高く、女性の単身者は、衣類や美容関係への消費に意欲的な傾向が見られる。
 

 

 
参考までに二人以上世帯の消費支出の内容を見てみると、単身世帯に比べ「教養娯楽」などに対する支出割合が低くなっている反面、「家具・家事用品」、「教育」、「保健医療」など、生活や育児関連に対する支出割合が大きくなっていることが分かる。
もちろん結婚して家族を持つか否かは、個人の価値観に基づき自由に選択されるべきであり、ここで問題とするべきことではないが、価値観が多様化し、婚姻率の低下や晩婚化が進行していく傾向が続くなかで、趣味や娯楽、美容関連に関する消費は、単身世帯を中心に今後さらに活発になっていくものと考えられる。
 
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篠原 哲

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