コラム
2020年01月16日

逆風の中での通常国会スタート~タイトなスケジュールの中で審議が進むのか

総合政策研究部 常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任 矢嶋 康次

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1――会期延長が難しい中、「15か月予算」と重要政策を十分審議できるのか?

新年度の予算案などを審議する今年の通常国会が1月20日に召集される。会期は、6月17日までの150日間だ。政府・与党は、一連の経済対策を盛り込んだ2019年度補正予算の早期成立を目指している。景気後退の懸念が燻り続けていることが背景にある。1月10日に2019年11月の景気動向指数が発表されたが、景気の現状を示す一致指数は2013年2月以来の低水準となり、基調判断は4ヵ月連続で景気後退の可能性が高いことを示す悪化で推移している。

今年の夏には東京都知事選や東京オリンピック・パラリンピック開催を控え、会期延長は難しい。そのため、政府は新規提出法案を絞り込む見込みだ。ただ、安倍晋三首相は、「全世代型社会保障改革」を最重要課題として掲げており、パートなど短時間労働者への厚生年金の適用拡大を図る年金制度改革関連法案や、企業に70歳までの就労確保に努めることを求める高年齢者雇用安定法の改正案が提出される予定で、議論が高まることが必至の情勢だ。また、デジタル・プラットフォーマー取引透明化法案など、他にも重要な法案は多い。

野党は、問題点が次々と浮上している「桜を見る会」の問題、衆院議員が逮捕されるに至った統合型リゾート(IR)をめぐる汚職事件、イラン問題が緊迫する中での自衛隊中東派遣の是非などについて、攻勢を強めるだろう。法案の内容以外でも、野党との激しい論戦が予想され、会期延長が難しいタイトなスケジュールの中で、中身のある十分な審議ができるのか、懸念が残る。
(図表1)一致指数による景気の基調判断

2――憶測を呼ぶ衆議院の解散時期や総裁4選の可能性

この通常国会中に、衆議院の解散時期や自民党総裁4選、首相の任期途中での退任をめぐる様々な思惑が高まることも予想される。

安倍首相の自民党総裁としての任期は21年9月、衆院議員の任期は21年10月である。衆議院解散について言えば、21年に入るといわゆる「追い込まれ解散」となって、与党に不利だとの見方があり、20年中の可能性が高いだろう。

この通常国会で早期に補正予算を成立させ、解散総選挙に向かうという選択肢も一時話題になった。しかしながら、もともとスケジュールがタイトである上に、IR疑惑で衆院議員が逮捕される事態となり、可能性は相当低くなったと言える。現時点では、秋の臨時国会のタイミングがメインシナリオ、との見方が強い。

12月に報道各社が発表した内閣支持率は、「桜を見る会」の問題で急落したが、1月分に発表されたいくつか調査を見ると、支持率は若干上昇、もしくは横ばいという結果になっているようだ。IR疑惑に対する政府与党への不信は高まっている。ただ、一方の野党は、立憲民主党と国民民主党の合流協議が難航しているなどと報じられており、内閣支持率の低下がそのまま野党支持に繋がっているとは言えない可能性もある。

まもなく始まる通常国会での論戦、さらには、夏の東京オリンピック・パラリンピックなどを通じて、内閣支持率がどう変化していくのか、解散総選挙の行方を占う上で大きく注目されるだろう。
(図表2)今後の政治日程
 
 

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総合政策研究部   常務理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任

矢嶋 康次 (やじま やすひで)

研究・専門分野
金融財政政策、日本経済 

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