コラム
2019年11月18日

マイナンバーカード普及に向けた、「マイナポイント」の導入

清水 仁志

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1――はじめに

政府は、2020年9月から、自治体ポイント(以下、マイナポイント)の付与を計画している1

マイナポイントとは、マイナンバーカードと紐付けしたキャッシュレス決済手段に、国費で付与されるプレミアムポイントである。

政府は、このマイナポイントを利用し、消費税率引上げに伴う需要平準化に加え、マイナンバーカード普及を狙う。
 
1 時期については、第11回経済財政諮問会議(令和元年11月13日)大臣記者会見より。

2――マイナポイントとは、その狙いは

マイナポイントとは、マイナンバーカードと紐付けした交通系ICカードや、QRコードなどのキャッシュレス決済手段に、前払い等(チャージなど)をした際に、上乗せして付与されるプレミアムポイントである。商品購入の際は、チャージ金額とプレミアム分の合計を利用して決済を行うことが出来る2

現行のキャッシュレス還元と比べると、ポイント獲得までにはいくつかの手続きが必要になる。キャッシュレス決済による還元は、特に手続をする必要はなく、中小企業等においてクレジットカードなどのキャッシュレス決済を利用すれば、自動的に割引やポイント還元が行われる3。一方で、マイナポイントは、マイナンバーカードを取得していることが必要で、さらにスマホかパソコンからキャッシュレス決済手段に紐付けし、チャージ等をすることで付与される。
 
政府のマイナポイント導入の狙いは、(1)キャッシュレス還元終了後に需要が急減する消費の崖対策、(2)低迷するマイナンバーカード普及のてこ入れ、の2つである。

現在実施されているプレミアム付商品券、キャッシュレス決済によるポイント還元は、期間限定である。それぞれ2020年3月、同年6月に打ち切り予定で、キャッシュレス還元終了を境に消費の落ち込み、いわゆる崖問題が懸念されている。7、8月はオリンピック・パラリンピックの効果があり、一定の消費が期待出来る。その直後の9月に導入が予定されているマイナポイントは、消費の急激な落ち込みを防ぐ崖対策としての役割を持つ(図表1)。

また、マイナンバーカードは、デジタル・ガバメントを進めるために必須のインフラであるが、現在の普及状況は、1,823万枚(人口の14.3%、11月1日時点)と、2018年度末までに8,700万枚とする当初の予定を大幅に下回っている。「マイナンバーカードの普及とマイナンバーの利活用の促進に関する方針」では、今後のマイナンバーカード普及に向け、(1)自治体ポイント(マイナポイント)の実施(2020年9月開始予定)、(2)マイナンバーカードの健康保険証利用(2021年3月開始予定)、(3)マイナンバーカードの円滑な取得・更新の推進等の3つを軸に、2022年度中にほとんどの住民がマイナンバーカードを保有することを想定している(図表2)。政府は、マイナポイントの導入により、思うように普及が進まないマイナンバーカード取得へ、弾みをつけたいと考えている。
(図表1)政府のマイナポイント導入の狙い/(図表2)マイナンバーカード交付枚数の実績と想定
 
2 総務省「マイナポイント活用官民連携タスクフォース(第2回)」配布資料
3 ただし、一部のキャッシュレス手段では、ポイント還元のための事前手続が必要。

3――「取得」から「利用」へ繋げられるか

内閣府「マイナンバー制度に関する世論調査(平成30 年11 月)」によると、マイナンバーカードを取得しない理由で一番多かったのは、「取得する必要性が感じられないから(57.6%)」であった。マイナポイントでは、実際にポイント還元という明確なメリットがあることから、マイナンバーカードを取得する動きが一時的に出る可能性がある。

消費税対策として予算がつけられる今回、デジタル化のインフラであるマイナンバーカードを短期間で普及させたいという政策立案者の判断は理解する。しかし、還元を目当てにマイナンバーカードが取得されたとしても、制度終了後にそれが利用に繋がるかどうかは未知数である。

消費税の平準化対策だけが目的であれば、マイナンバーカードと紐付けるといった面倒な仕組みではないほうがよい。成長戦略の一環として、マイナンバーカード普及という目的を付け加えるのであれば、取得だけではなく、利用へ繋げられるようにしなければならない。そのためにも、マイナポイントの制度検討と同時に、取得後にマイナポイント以外で利用してもらえるような、利便性向上に向けたシステム作り、広報を進めていくことが重要だ。
 
 

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清水 仁志

研究・専門分野

(2019年11月18日「研究員の眼」)

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