2018年08月16日

貿易統計18年7月-米国向けを中心に輸出が弱い動き

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.貿易収支は再び赤字へ

財務省が8月16日に公表した貿易統計によると、18年7月の貿易収支は▲2,312億円と2ヵ月ぶりの赤字となり、事前の市場予想(QUICK集計:▲500億円、当社予想は▲538億円)を大きく下回る結果となった。輸出は前年比3.9%(6月:同6.7%)と前月から伸びが低下する一方、輸入が前年比14.6%(6月:同2.6%)と前月から伸びを大きく高めたため、貿易収支は前年に比べ▲6,378億円の悪化となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比0.8%(6月:同3.2%)、輸出価格が前年比3.0%(6月:同3.4%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比4.1%(6月:同▲4.5%)、輸入価格が前年比10.2%(6月:同7.4%)であった。
貿易収支の推移
なお、貿易統計は本日発表された18年7月分から貿易指数(輸出入に関する金額指数、価格指数及び数量指数)が2010年基準から2015年基準に改定されたが、長期系列の公表は8/30になる。このため、今回のレポートでは2017年7月までは旧基準(2010年基準)の指数、2017年8月以降については、本日公表の速報資料に掲載されている新基準(2015年基準)の過去1年分の伸び率によって旧基準の指数を延長して用いている。

季節調整済の貿易収支は▲456億円(6月は831億円)と2ヵ月ぶりの赤字となった。輸出は前月比1.0%(6月:同▲0.1%)と3ヵ月ぶりに増加したが、輸入が前月比2.9%(6月:同▲5.3%)と輸出の伸びを上回った。
原油価格の推移 7月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=76.8ドル(当研究所による試算値)と、6月の76.4ドルから若干上昇した。足もとのドバイ原油価格は70ドル程度となっており、通関ベースの原油価格は8月以降も70ドル台半ばで推移することが見込まれる。貿易収支(季節調整値)は18年に入ってから黒字と赤字を繰り返しているが、先行きもゼロ近傍の推移が続くことが見込まれる。

2.米国向け輸出が自動車中心に弱い動き

7月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比▲4.8%(6月:同▲0.3%)、EU向けが前年比1.0%(6月:同1.1%)、アジア向けが前年比3.3%(6月:同3.6%)となり、米国向けが特に弱い動きとなった。

7月の輸出数量は米国向けを中心に弱い動きとなったが、7月上旬の西日本豪雨によって自動車メーカーを中心に一時的に工場の操業停止を余儀なくされたことが輸出に悪影響を及ぼした可能性もある。輸出が基調として弱い動きとなっていると判断するのは早計だろう。

米国向けの自動車輸出は18年2月から4月にかけて前年比で二桁の高い伸び(台数ベース)なっていたが、6月(前年比▲11.2%)、7月(同▲12.5%)と前年比二桁の大幅減少となった。現時点で米国の通商政策の影響が出ているとは考えられず、西日本豪雨による生産休止に加え、米国における日本車販売の不調が輸出低迷の一因になっていると考えられる。
OECD景気動向指数の推移 日本の輸出数量に対して先行性のあるOECD景気先行指数(OECD+非加盟主要6カ国)を確認すると、ユーロ圏を中心にOECD加盟国は弱めの動きとなっているが、中国、インドなどの非加盟国が好調を維持していることから全体としては底堅く推移している。現時点では、先行きの輸出は2017年中の勢いを取り戻すことは難しいものの、海外経済の回復を背景に緩やかな増加が続くとみている。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2018年08月16日「経済・金融フラッシュ」)

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