2018年08月13日

データで見る「東京一極集中」東京と地方の人口の動きを探る(下・流出編)-人口デッドエンド化する東京の姿-

生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子

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1――(下)のはじめに・最新の流出入格差を探る

本レポートは、上・下シリーズで、直近2017年における年間の東京と地方の人口の動きを俯瞰することによって、2015年国勢調査に基づく地域人口推計結果が示した「東京一極集中のさらなる進行」の未来を変えられるかどうか、探るものである。
 
2017年において東京都への他のエリアからの流入は41万9千人、逆に東京から都外に流出した人口は34万4千人であった。
1年間で7万5千人の人口が流入超過しており、東京へ流入した人口の82%しか、東京から地方へ流出していない計算となる。年間人口純増の規模のイメージ的には、丁度、徳島県(都道府県人口ランキング44/47位)の人口の1割である。
東京都において2017年1年だけで、徳島県民の10人に1人分、東京に人口が増えたということになる。
 
やはり、東京都が全国の移動人口のデッドエンド(行き止まり)化している様相が垣間見えてくる。
本稿では、2017年に東京から地方へ流出した人口についてエリア別に検証してみたい。
 
デッドエンド化している東京からどれだけの人を呼び戻すことに各エリアが成功しているのか。
検討してみたい。
 

2――2017年・人々は東京都からどこへ流出したのか

2――2017年・人々は東京都からどこへ流出したのか

1|男女合計した流出状況-大都市圏に集中
まずは2017年、男女あわせた総数で東京都からどの道府県へ人々が流出していったのか最初に見てみたい(図表1)。上位7エリアまで(神奈川・埼玉・千葉・大阪・愛知・福岡)が1万人以上の男女が東京都から流出しているエリアになるが、三大都市圏などいずれも政令指定都市をもつ大都市エリアばかりである。特に神奈川県と埼玉県は流出人口全体の約2割ずつの6~7万人の人口が流出している、東京からのメジャー引越先となっている。
 
注意したいのは、上位3エリアが特に流出が多い状況であるが、いずれも東京近郊エリアであり、3エリアともその一部は東京へのメジャー通勤・通学エリアとなっているということである。
東京都から住民票上の転居はしたものの、昼間は東京で仕事や勉学をしている夜間のみの人口移動が含まれている、ということは指摘しておきたい。
 
1万人には届かないものの、東京から5千人以上流出しているエリアは茨城・静岡・兵庫・宮城・長野・栃木の6エリアあり、東京への通勤通学にはやや遠い関東エリアならびに陸路アクセスの良好な中部エリアがメインとなっている。これらの6エリアは夜間のみではなく昼間の人口としての流出先であると見られるものの、東京都に近いことが条件となっているようである。
【図表1】 2017年年間「東京から流出してゆく人々」ランキング(男女計)
2|男女別の流出状況
次に男性のみ、女性のみの東京都からの流出を個々に見てみたい(図表2、図表3)。
流入と同じく男女とも、ベスト3はやはり関東(神奈川、埼玉、千葉)であり、この3エリアのみ、東京都から年間に万単位の流出がある。
 
ただ、男女の流出規模には相違があり、男性では1万人未満でも5千人を超える移動がさらに6エリア存在するのに対し、女性では2エリアしか存在しない。またその流出先2つも三大都市圏エリアである大阪府、愛知県となっている。
 
男性に比べ女性に関しては、徹底して再度大都市エリアに流出している様子がうかがえる。女性の流出は主に「大都市間移動」の様相となっている。
女性ランキングの続く5千人未満2千人以上の流出エリアをみてみると、男性に比べ東京のより近距離エリアがランクインしていることが見て取れる。東京都から流出する女性は、あまり遠方への転居を選択しないようである。
【図表2】 2017年年間「東京から流出してゆく人々」ランキング(男性計)
【図表3】 2017年年間「東京から流出してゆく人々」ランキング(女性計)
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生活研究部   人口動態シニアリサーチャー

天野 馨南子 (あまの かなこ)

研究・専門分野
人口動態に関する諸問題-(特に)少子化対策・東京一極集中・女性活躍推進

経歴
  • プロフィール
    1995年:日本生命保険相互会社 入社
    1999年:株式会社ニッセイ基礎研究所 出向

    ・【総務省統計局】「令和7年国勢調査有識者会議」構成員(2021年~)
    ・【こども家庭庁】令和5年度「地域少子化対策に関する調査事業」委員会委員(2023年度)
    ※都道府県委員職は就任順
    ・【富山県】富山県「県政エグゼクティブアドバイザー」(2023年~)
    ・【富山県】富山県「富山県子育て支援・少子化対策県民会議 委員」(2022年~)
    ・【三重県】三重県「人口減少対策有識者会議 有識者委員」(2023年~)
    ・【石川県】石川県「少子化対策アドバイザー」(2023年度)
    ・【高知県】高知県「中山間地域再興ビジョン検討委員会 委員」(2023年~)
    ・【東京商工会議所】東京における少子化対策専門委員会 学識者委員(2023年~)
    ・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する情報発信/普及啓発検討委員会 委員長(2021年~)
    ・【主催研究会】地方女性活性化研究会(2020年~)
    ・【内閣府特命担当大臣(少子化対策)主宰】「少子化社会対策大綱の推進に関する検討会」構成員(2021年~2022年)
    ・【内閣府男女共同参画局】「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」構成員(2021年~2022年)
    ・【内閣府委託事業】「令和3年度結婚支援ボランティア等育成モデルプログラム開発調査 企画委員会 委員」(内閣府委託事業)(2021年~2022年)
    ・【内閣府】「地域少子化対策重点推進交付金」事業選定審査員(2017年~)
    ・【内閣府】地域少子化対策強化事業の調査研究・効果検証と優良事例調査 企画・分析会議委員(2016年~2017年)
    ・【内閣府特命担当大臣主宰】「結婚の希望を叶える環境整備に向けた企業・団体等の取組に関する検討会」構成メンバー(2016年)
    ・【富山県】富山県成長戦略会議真の幸せ(ウェルビーイング)戦略プロジェクトチーム 少子化対策・子育て支援専門部会委員(2022年~)
    ・【長野県】伊那市新産業技術推進協議会委員/分野:全般(2020年~2021年)
    ・【佐賀県健康福祉部男女参画・こども局こども未来課】子育てし大県“さが”データ活用アドバイザー(2021年~)
    ・【愛媛県松山市「まつやま人口減少対策推進会議」専門部会】結婚支援ビッグデータ・オープンデータ活用研究会メンバー(2017年度~2018年度)
    ・【愛媛県法人会連合会】結婚支援ビッグデータアドバイザー会議委員(2020年度~)
    ・【愛媛県法人会連合会】結婚支援ビッグデータ活用研究会委員(2016年度~2019年度)
    ・【中外製薬株式会社】ヒト由来試料を用いた研究に関する倫理委員会 委員(2020年~)
    ・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する意識調査/検討委員会 委員長(2020年~2021年)

    日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
    日本労務学会 会員
    日本性差医学・医療学会 会員
    日本保険学会 会員
    性差医療情報ネットワーク 会員
    JADPメンタル心理カウンセラー
    JADP上級心理カウンセラー

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