2018年08月09日

【フィリピンGDP】4-6月期は前年同期比6.0%増~純輸出悪化で期待外れの成長鈍化

経済研究部 准主任研究員   斉藤 誠

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2018年4-6月期の実質GDP成長率は前年同期比6.0%増1と、前期の同6.8%増から低下し、市場予想2(同6.6%増)を大きく下回る結果となった(図表1)。

4-6月期の実質GDPを需要項目別に見ると、主に純輸出の悪化が成長率低下に繋がった。

民間消費は前年同期比5.6%増(前期:同5.7%増)と若干低下した。民間消費の内訳を見ると、シェアの大きい食料・飲料(同6.3%増)や住宅・水道光熱(同5.9%増)が堅調だった一方、家具・住宅設備(同5.4%増)、交通(同1.3%増)、レストラン・ホテル(同4.3%増)が伸び悩んだ。

政府消費は同11.9%増(前期:同13.6%増)と高水準ながら小幅に低下した。

総固定資本形成は同21.2%増(前期:同8.8%増)と大きく上昇した。まず設備投資は同28.6%増(前期:同8.4%増)と上昇した。設備投資の内訳を見ると、全体の4割を占める道路運送車両(同28.9%増)をはじめ、電気通信装置(同43.6%増)や鉱業・建設機械(同53.3%増)、オフィス機器(同32.1%増)が大幅に増加した。また建設投資は同12.9%増(前期:同10.0%増)と上昇した。公共建設投資(同21.0%増)が好調を続けると共に、民間建設投資(同7.9%増)が堅調に拡大した(図表2)。

純輸出は実質GDP成長率への寄与度が▲4.7%ポイントとなり、前期の▲3.0%ポイントからマイナス幅が拡大した。まず輸出は同13.0%増(前期:同6.5%増)と上昇した。輸出の内訳を見ると、財輸出が同13.9%増(前期:同3.7%増)と主力の電子部品が持ち直して大きく上昇した。一方、サービス輸出は同9.6%増と、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)産業を中心に堅調を維持しているものの、外国人旅行者数の鈍化によって好調だった前期の同16.4%増から低下した。輸入は同19.7%増(前期:同9.6%増)と大幅に上昇して、輸出の伸びを上回った。
(図表1)フィリピン 実質GDP成長率(需要側)/(図表2)建設部門の粗付加価値額(GVA)
供給項目別に見ると、第二次産業の鈍化が成長率低下に繋がった(図表3)。

まず第二次産業は同6.3%増(前期: 同7.7%増)と低下した。建設業(同13.5%増)が大幅に増加する一方、製造業(同5.6%増)がラジオ、テレビ・通信機器やコンピュータ機器、電気機械を中心に伸び悩んだ。電気・ガス・水供給業(同3.8%増)も低調だったほか、鉱業・採石業(同10.9%減)は石炭などへの物品税増税や鉱山の操業停止等が響いてマイナスとなった。

GDPの約6割を占める第三次産業は同6.6%増(前期: 同6.8%増)と小幅に低下した。不動産・事業活動(同3.7%増)と商業(同6.1%増)、運輸・通信(同6.2%増)が伸び悩んだものの、金融(同8.7%増)と行政・国防(同15.0%増)が引き続き好調だった。

第一次産業は前年同期比0.2%増と、前期の同1.1%増から低下した。コメとサトウキビ、マンゴー、コーヒーの生産が落ち込んだ農業(同0.2%増)が伸び悩んだほか、水産業(同0.3%増)と林業(同0.5%増)はそれぞれプラスに転じたものの、微増に止まった。
 
 
1 8月9日、国家統計調整委員会(NSCB)が国内総生産(GDP)統計を公表。前期比(季節調整値)は1.3%増と前期(同1.5%増)から低下した。
2 Bloomberg調査

4-6月期GDPの評価と先行きのポイント

フィリピン経済は概ね6%台後半の高成長を続けていたが、4-6月期は3年ぶりの6%成長まで鈍化した。政府が力強いインフラ整備を加速するなか、その呼び水効果が民間部門に波及するなど内需は投資を中心に堅調に拡大しており、海外経済の拡大を背景に財輸出も二桁増まで回復した。しかしながら、政府は4月に環境破壊を背景に国内有数の観光地であるボラカイ島を半年間閉鎖したことからサービス輸出が伸び悩んだほか、インフラ投資を背景とする資本財輸入の増加により純輸出が悪化したことが成長鈍化に繋がった。フィリピン政府は今年の成長率目標を7-8%と設定しているが、4-6月期の景気減速により目標達成はより一層難しくなったと言える。

またGDPの約7割を占める民間消費が若干減速して2四半期連続の5%台で伸び悩んでいることも成長鈍化の一因だ。民間消費は、海外出稼ぎ労働者からの送金額(ペソベース)の拡大(4-5月:前年同期比14.7%増)を背景に底堅い伸びを維持しているが、足元の物価上昇や就業者数の減少、そして物品税増税を控えた自動車の駆け込み需要の反動で年明けから新車販売が二桁減まで落ち込んでいることが消費減速に繋がったとみられる。消費者信頼感指数についても直近2四半期で明確に低下している。
(図表3)フィリピン 実質GDP成長率(供給側)/(図表4)フィリピンのインフレ率と政策金利
消費減速の一因となったインフレ率であるが、7月の消費者物価上昇率は前年同月比5.7%増と昨年末から+2.8%ポイント上昇して5年ぶりの高水準を記録している(図表4)。物価上昇要因は税制改革に伴う酒類・たばこの値上げや燃料価格の上昇、通貨ペソ安、天候不順による食品供給の減少などが挙げられる。今回のGDP統計から見ても物価上昇は景気過熱によるものではないが、今後も通貨ペソ安は進行するものと見込まれ、当面インフレ押し上げ圧力が継続する公算が大きい。

物価上昇により民間消費の雲行きが悪くなるなか、政府はインフレ対策として貧困層や乗り合いバスの運転手に対する補助金を支給することにより消費者負担を軽減する方針を打ち出したほか、食品の輸入関税引下げも検討し始めている。

またフィリピン中央銀行は物価目標(2~4%)を上回る物価上昇を受けて、5月と6月の金融委員会の政策決定会合で2会合連続の利上げ(計+0.50%)を実施しており、インフレ目標を堅持する姿勢を示している。そして本日開催する金融委員会でも3回連続の利上げが実施される可能性が高い。継続的な利上げにより、今後は設備投資や住宅投資が手控えられるほか、企業と消費者のマインドに水を差すなど悪影響が出てくるだろう。

政府の包括的税制改革は遅れつつも着実に前進しており、財源の目途が立つインフラ整備事業は今後も進展するものと見込まれ、現段階では景気減速が持続的なものになるとは考えにくい。しかしながら、物価上昇は足元でも落ち着きを見せておらず、政府と中央銀行がインフレ対策を誤れば、経常収支や財政収支の悪化、通貨下落などマクロ経済が不安定化する恐れがあるだけに、フィリピン経済を注意して見ていく必要があるだろう。
 
 

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
アジア・新興国経済

(2018年08月09日「経済・金融フラッシュ」)

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