2018年08月06日

【インドネシアGDP】4-6月期は前年同期比5.27%増~消費拡大で2013年以来の水準まで景気回復

経済研究部 准主任研究員   斉藤 誠

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インドネシアの2018年4-6月期の実質GDP成長率1は前年同期比(原系列)5.27%増と、前期(同5.06%増)から上昇すると共に、市場予想2の同5.12%増を上回った。

4-6月期の実質GDPを需要項目別に見ると、消費の改善が成長率上昇に繋がった(図表1)。

民間消費(対家計民間非営利団体含む)は前年同期比5.22%増(前期:同5.01%増)と、小幅に上昇した。業種別に見ると、アパレル(同3.86%増)が再び鈍化した一方、食料・飲料(同5.38%増)やホテル・レストラン(同5.71%増)、輸送・通信(同5.32%増)が拡大した。
政府消費は前年同期比5.26%増となり、前期の同2.74%増から上昇した。

政府消費は前年同期比5.26%増となり、前期の同2.74%増から上昇した。

総固定資本形成は前年同期比5.87%増と、前期の同7.95%増から低下した。機械・設備(同22.48%増)が4期連続の二桁増となったほか、昨年後半に落ち込んだ自動車(同8.01%増)も堅調に拡大した。一方、昨年から堅調な伸びが続いていた建設投資(同5.02%)は鈍化した。

純輸出は実質GDP成長率への寄与度が▲1.21%ポイントとなり、前期の▲1.13%ポイントからマイナス幅が拡大した。まず輸出は前年同期比7.70%増(前期:同6.09%増)と小幅に上昇した。輸出の内訳を見ると、財輸出が同8.09%増と、非石油・ガス輸出を中心に引き続き堅調に拡大した一方、サービス輸出は同4.52%増と緩やかな伸びに止まった。また輸入は同15.17%増(前期:同12.66%増)と更に上昇し、4期連続の二桁増を記録した。

 
(図表1)インドネシア実質GDP成長率(需要側)/(図表2)インドネシア 実質GDP成長率(供給側)
供給項目別に見ると、第一次産業が改善した(図表2)。

第一次産業は同4.76%増(前期:同3.29%増)と、好天に恵まれた穀物が5四半期ぶりのプラスに転じて上昇した。

成長を牽引する第三次産業は同5.81%増(前期:同5.90%増)と若干低下した。内訳を見ると、構成割合の大きい卸売・小売が同5.24%増(前期:同4.93%増)、ホテル・レストランが同5.75%増(前期:同5.45%増)、ビジネスサービスは同8.89%増(前期:同8.04%増)、行政・国防が同7.20%増(前期:同5.79%増)となり、それぞれ上昇した。一方、情報・通信が同6.06%増(前期:同8.52%増)、不動産が前年同期比3.11%増(前期:同3.23%増)、金融・保険は同3.02%増(前期:同4.33%増)と、それぞれ低下した。運輸・倉庫(同8.59%増)は横ばいだった。

また第二次産業は同4.14%増(前期:同4.44%増)と小幅に低下した。内訳を見ると、鉱業が前年同期比2.21%増(前期:同0.74%増)と上昇したものの、製造業が同3.97%増(前期:同4.56%増)、建設業が同5.73%増(前期:同7.35%増)と、それぞれ低下した。
 
 
1 8月6日、インドネシア統計局(BPS)が2018年4-6月期の国内総生産(GDP)を公表した。
2 Bloomberg調査

4-6月期GDPの評価と先行きのポイント

インドネシア経済は2013年以来で最も高い成長となったが、依然として5%前後の成長に止まっている。インドネシア政府の今年の成長目標は当初5.4%に設定されていたが、現在では5.2%に引き下げられており、成長ペースが早まる見通しを描き難くなっているようだ。

4-6月期は、停滞していた民間消費の上昇が成長率を押し上げた。民間消費は低インフレ環境の継続(図表3)や高水準の消費者心理指数(図表4)、政府の社会扶助プログラムの増加に加え、4-6月期はラマダン(イスラム教の断食月)や地方選挙に伴う支出増、公務員賞与の増額などが追い風となった。もっとも賃金上昇ペースの鈍化や政府の税徴収の強化などは引き続き消費の抑制要因となっており、今後も消費の回復傾向が続くかどうかは慎重に見ておく必要がありそうだ。

建設投資の増勢は鈍化したものの、機械・設備や自動車などの投資は好調に推移している。また輸出も世界貿易とコモディティ価格の持続的な回復によって堅調に拡大しており、企業部門が経済を牽引する構図は続いていると言えよう。

先行きについても、ごく緩やかな景気の回復傾向が続きそうだ。今年後半は8月から9月にかけてアジア競技大会、10月には世界銀行IMF年次総会の開催が予定され、消費の拡大が見込まれる。その後も19年4月に予定される総選挙と大統領選挙に向けた支出拡大も経済成長を押し上げるだろう。
(図表3)インドネシアの為替レート・インフレ率・政策金利/(図表4)インドネシアの企業景況感、消費者信頼感
しかしながら、海外発の景気下振れリスクによりインドネシア経済の先行き不透明感は強まってきている。1つは、米国の金融政策の正常化を背景とするインドネシアから米国への資金流出が挙げられる。ルピア相場は今年に入り7%程度減価している。通貨安が進むと、外貨建て債務の返済負担が増加するほか、輸入価格を通じてインフレ率が上昇して国内需要を減退させる恐れがある。インドネシア中央銀行はルピア相場を安定させるべく、金融引き締めに舵を切り、政策金利を5月と6月にそれぞれ+0.5%ずつ(計1.0%)引き上げた。その後はルピア相場に下げ止まりの兆しが見られたことから、7月の月例理事会では追加利上げは見送られたが、足元では再びルピア安が進行しつつある。

今後はルピア安および燃料価格上昇によってインフレ圧力が強まるだろうが、利上げの影響で物価上昇は限定的に止まるだろう。一方で金利上昇により設備投資や住宅投資が手控えられるほか、企業と消費者のマインドに水を差すなど悪影響が出てくる可能性がある。なお、インドネシア中央銀行は利上げで懸念される住宅ローンへの負担増を軽減すべく、6月末には住宅ローンの借入額比率(LTV)の緩和を発表している。

もう1つは米国発の貿易摩擦の問題だ。インドネシアにとって貿易取引額が1位の中国と2位のアメリカの双方が関税引き上げ措置とそれに対する報復措置の応酬を繰り返せば、インドネシア経済にもネガティブな影響を与えかねない。これまでアメリカに向かっていた安価な中国製品がインドネシア国内に流入すれば国内製造業の成長を阻害する可能性もある。また米国が4月に途上国からの輸入関税を優遇する一般特恵関税制度(GSP)について、インドネシアの適格性を見直すと発表しており、直接的な影響も懸念される。インドネシア政府は米中貿易摩擦による国内経済への悪影響を軽減すべく、短期では輸出志向型産業や輸入代替製造業、観光業に対する支援策を導入する方針で検討を進めている。

こうした景気下振れリスクにより、成長ペースが今後加速する期待は低く、ジョコ大統領が2014年の就任時に掲げた7%の成長目標への道筋は見えない。こうしたなか、8月4日には来年の大統領選挙の候補者登録が開始した。再選を目指すジョコ大統領の支持率は、現在のところ他の有力者を圧倒しているが、これまでの緩慢な経済成長は選挙戦の逆風となりそうだ。
 
 

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
アジア・新興国経済

(2018年08月06日「経済・金融フラッシュ」)

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