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- 「人生100年時代」の憂慮-長寿は「結果」であり、「目的」ではない、と思う。
長寿時代を生き抜くために健康志向が強まることは必然だ。日本では健康増進のための基本方向として『健康日本21(第2次)』に「健康寿命の延伸と健康格差の縮小」が掲げられている。ただ、日本人の健康寿命の延びは平均寿命の延びを下回っており、長寿化に伴い要介護の期間が長くなっている。多くの人は健康に長生きしたいと願っているが、平均寿命が延びる時代には、介護・看護を必要とする期間は長くなり、要介護のリスクが高まっているのである。
最近のフィットネスクラブを覗くと、どこも元気なシニア層の人たちであふれている。ジム通いに熱心なシニア層が大勢いる背景には、長寿化にともなう高齢者の根強い健康志向がある。厚生労働省「平成28年 国民健康・栄養調査の結果の概要」をみると、運動習慣のある者(1回30分以上の運動を週2回以上実施し、1年以上継続している者)の割合は、全体で男性35.1%、女性27.4%だが、年齢階級別では、男女ともに60代以上のシニア層が多くなっている。
「人生100年時代」を幸せに暮らすためには、なにがなんでも健康でなければならないのだろうか。高齢化が進むと、加齢により健康状態が万全でなくなるのは当然のことだ。誰もが老化による衰えを経験する時代には、健康寿命と共に「自分が健康であると自覚している期間」である「主観的健康寿命」が重要だ。昔から「一病息災」と言われるが、ケガや病気とうまく付き合うことが、「人生100年時代」を幸せに生き抜く上で重要なヒントになるだろう。
「人生100年時代」と言われることが、かえって高齢者にとってプレッシャーになってはならない。心から喜べる長寿社会とは、長寿が人生の目的ではなく幸せに生きた結果ではないかと思う。たとえ100年生きるために必要な経済的基盤や身体的健康を保つ医療や介護、精神的健康を維持する社会的つながりなどがあったとしても、なお100年の長き人生を生きることは大変なことだ。われわれは、長寿時代の主観的幸福を見出す感受性を育むことが求められているのではないだろうか。
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土堤内 昭雄
研究・専門分野
(2018年07月24日「研究員の眼」)
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