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2018年07月13日
●設備投資の回復は本物か
(短観の設備投資計画は過去最高の伸び)
日銀短観2018年6月調査では、大企業・製造業の業況判断DIが2期連続で悪化するなど、2018年入り後の景気の回復ペース鈍化を示すものとなる一方、設備投資計画の強さが目立った。
日銀短観2018年6月調査では、大企業・製造業の業況判断DIが2期連続で悪化するなど、2018年入り後の景気の回復ペース鈍化を示すものとなる一方、設備投資計画の強さが目立った。
設備投資回復の背景に好調な企業収益があることは言うまでもないが、それに加えてオリンピック関連投資、人手不足に伴う省力化投資が設備投資の押し上げ要因となっている。
通常の景気回復局面では、工場の稼働率上昇などに伴い機械投資が活発化し設備投資の牽引役となることが多いが、今回は建設投資の伸びが機械投資の伸びを大きく上回っている。1990年以降の景気回復局面と比較すると、機械投資の一致指標である「資本財総供給」は弱めの動きとなっているが、建設投資の一致指標である「建設工事出来高(民間非居住)」は最も高い伸びとなっている。景気の谷(2012年10-12月期)から直近(2018年1-3月期)までの伸び(年平均)は、資本財総供給の3.3%に対して、建設工事出来高(民間非居住)は6.5%である(図表2)。オリンピック関連施設の整備に加え、インバウンド需要拡大を受けたホテルの新築・増改築、都心の再開発などが建設投資の押し上げに寄与していると考えられる。
(企業の投資スタンスは変わったのか)
今回の景気回復局面では、企業収益の大幅増加と比べて設備投資の回復ペースは緩やかにとどまってきた。日銀短観2018年6月調査では、2018年度の経常利益計画が前年度比▲5.1%(全規模・全産業)の減益計画となるなかで、設備投資計画が強い結果となったことから、企業の設備投資意欲が高まっているとの見方がある。
今回の景気回復局面では、企業収益の大幅増加と比べて設備投資の回復ペースは緩やかにとどまってきた。日銀短観2018年6月調査では、2018年度の経常利益計画が前年度比▲5.1%(全規模・全産業)の減益計画となるなかで、設備投資計画が強い結果となったことから、企業の設備投資意欲が高まっているとの見方がある。
ここで、日銀短観を用いて「設備投資/経常利益」比率を計算すると、1980年代から2000年代初め頃までは100%を上回って推移しており、1990年代前半には200%を上回る水準まで上昇した。バブル崩壊後は過剰設備解消のために企業は長期にわたり設備投資の抑制を続けたため低下傾向が続き、2004年度に100%を下回った。その後、リーマンショックによる経常利益の急速な落ち込みによって、「設備投資/経常利益」比率は一時的に100%を上回ったが、2010年度以降は再び100%を下回って推移している。
設備投資の回復は、あくまでも企業収益の大幅な増加に伴う潤沢なキャッシュフローを主因としたもので、企業の設備投資スタンスが必ずしも積極化している訳ではないと考えられる。
2018年度の経常利益は、原材料費や人件費などのコスト増によって、2017年度の二桁増益から伸びが大きく鈍化する公算が大きい。米中貿易戦争の激化による世界貿易の停滞が、輸出や企業収益の下振れにつながるリスクも高まっている。経常利益に対する設備投資の比率が変わらなければ、企業収益の低迷に連動する形で設備投資も減速するだろう。
企業の投資スタンスが慎重であることは、法人企業統計からも読み取ることができる。法人企業統計の「設備投資/キャッシュフロー」比率は2010年度以降、50%台の低水準で推移しており、2017年度は56.8%と2016年度の57.3%から若干低下した。
2018年度の経常利益は、原材料費や人件費などのコスト増によって、2017年度の二桁増益から伸びが大きく鈍化する公算が大きい。米中貿易戦争の激化による世界貿易の停滞が、輸出や企業収益の下振れにつながるリスクも高まっている。経常利益に対する設備投資の比率が変わらなければ、企業収益の低迷に連動する形で設備投資も減速するだろう。
企業の投資スタンスが慎重であることは、法人企業統計からも読み取ることができる。法人企業統計の「設備投資/キャッシュフロー」比率は2010年度以降、50%台の低水準で推移しており、2017年度は56.8%と2016年度の57.3%から若干低下した。
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経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
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