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- 3割上限ルールの影響-結局、返礼品割合の高い自治体が選ばれる
コラム
2018年07月09日
返礼品割合が減った自治体2割強に対して、返礼品割合が増えた自治体は3割強
まず、各自治体別に寄附金受入金額に占める返礼品の調達に係る費用の割合(以下、返礼品割合)の対前年度変化を確認した。その結果、返礼品割合が減った自治体の占率が24.5%にとどまる一方、返礼品割合が増えた自治体の占率は35.0%であった(図表2の左)。2016年度時点で返礼品割合が3割を超えていた自治体に限ると、返礼品割合が減った自治体の占率は45.4%に及ぶ(図表2の右)。返礼品割合が高い自治体ほど、返礼品割合を減らす傾向があると解釈できる。つまり、返礼品割合の高騰を抑える効果が確認できるが、その効果は限定的だ。既に返礼品割合が3割を超えている自治体でも、半数以上は返礼品割合を減らしておらず、ましてや返礼品割合を増やした自治体が21.0%もあるのだ。むしろ、3割上限ルールが、3割までの返礼品の送付に対しお墨付きを与えた効果があったのではないだろうか。全自治体で見た返礼品割合を増やした自治体占率が35.0%に対し、2016年度時点で返礼品割合が3割を超えていた自治体で返礼品割合を増やした自治体占率が21.0%と低いことは、2016年度時点で返礼品割合が3割を下回っていた自治体に限れば、返礼品割合を増やした自治体が結構多かったということである。
ふるさと納税に係る総費用の割合は増えている
高い返礼品割合が問題視される理由は大きく2つある。1つ目は、趣旨から逸脱したふるさと納税制度の利用が進むことであり、2つ目が、返礼品を調達する為の費用がかさみ、実質的な財源が減少することである。返礼品の調達費用だけが、実質的な財源減少をもたらすわけではない。返礼品の送付に係る費用や、ふるさと納税ポータルサイトの利用料等もある。特に、ふるさと納税ポータルサイトの利用料は寄附金額11%~12%に及び、決して小額ではない。一括してポータルサイト運営会社に委託していることを理由に、返礼品調達に係る費用をそれ以外の費用として報告する自治体もあり、名目上の返礼品割合だけに着目するのは適切ではない。そこで、寄附金受入金額に占めるふるさと納税に係る全ての費用の割合(総費用割合)についても、対前年度変化を確認した。その結果、総費用割合を減らした自治体の占率は、返礼品割合を減らした自治体の占率よりも更に低い21.3%であった。また、総費用割合を増やした自治体の占率は、返礼品割合を増やした自治体の占率よりも高く46.2%に及ぶ。
返礼品割合の高い自治体が納税者に選ばれている
現時点において、3割上限ルールには過度な返礼品競争を抑制する効果はなさそうだ。むしろ、それを逸脱した自治体が寄附を集めることになった。その結果、趣旨から逸脱したふるさと納税制度の利用が収束する気配はない。また、ふるさと納税に係る費用は、未だ増加傾向にあり、実質的な財源の減少が収まる気配もない。
3割上限ルールを守らない自治体の問題か、それとも返礼割合の高い自治体に寄附する納税者の問題か。答えはどちらでもなく、そのような行動を誘発する制度の問題ではないだろうか。
3割上限ルールを守らない自治体の問題か、それとも返礼割合の高い自治体に寄附する納税者の問題か。答えはどちらでもなく、そのような行動を誘発する制度の問題ではないだろうか。
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経歴
- 【職歴】
1999年 日本生命保険相互会社入社
2006年 ニッセイ基礎研究所へ
2017年4月より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
(2018年07月09日「研究員の眼」)
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