- シンクタンクならニッセイ基礎研究所 >
- 暮らし >
- 消費者行動 >
- 健康に関わる女性の不安-年齢とともに感染や罹患から介護へ、未婚40代は不安最多だが半数は対策をしておらず
健康に関わる女性の不安-年齢とともに感染や罹患から介護へ、未婚40代は不安最多だが半数は対策をしておらず
生活研究部 上席研究員 久我 尚子
1――はじめに
1 「日常生活における不安等に関する調査」、調査対象は学生を除く全国に住む20~69歳の男女、調査手法はインターネットリサーチ、実施時期は2014年8月、調査機関は株式会社マクロミル、有効回答4,131(男性2,051、女性2,080)
2――健康や医療、介護における不安~「受傷・罹患」「要介護関連」「医療過誤・感染」「介護・医療サービス受給」「インフォームド・コンセント」の5つに集約
調査では、健康や医療、介護に関わる19の不安をあげ、それぞれどの程度不安に感じるか、「不安でない」「あまり不安でない」「どちらともいえない」「やや不安である」「不安である」の5段階に、「該当しない」を加えた6つの選択肢を用意した。
得られたデータに因子分析を行い、健康や医療、介護に関わる不安要因を分析した(図表1)。図表1より、20~60歳代の男女では、健康や医療、介護に関わる不安は「受傷・罹患」「要介護関連」「医療過誤・感染」「介護・医療サービス受給」「インフォームド・コンセント」の5つに要約される。
これらの不安の強さについて、性年代による違いを見ると(詳細は付表1)、性別では、女性で「要介護関連不安」が強く、男性で弱い。女性は主な介護の担い手となることが多いため、自分に介護が必要となった時については不安が強いのだろう。
年代別には、20歳代で「医療過誤・感染不安」が強く、50歳代で弱い。この背景には、日常生活における感染症リスクとの距離や医療関連知識の差があるのだろう。また、50歳以上で「要介護関連不安」が強く20~30歳代で弱いこと、そして、20歳代で「受傷・罹患不安」が弱いことについては、加齢に伴う健康状態の違いによるものだろう。このほか、高年齢層の多い無職・専業主婦(主夫)層で「要介護関連不安」が強く、無収入層では「受傷・罹患不安」や「要介護関連不安」、「介護・医療受給サービス不安」が強いといった特徴がある。
3――女性のライフコースによる不安の変化~年齢とともに感染や罹患から介護へ、未婚40代が最多
また、50~60歳代の女性で全ての層にあらわれる「要介護関連不安」は未婚層や既婚・子なし層で強い。同様に不安の内訳を見ると、50歳代では既婚・子なし層で全体的に不安度が強い。また、60歳代では未婚層や既婚・子なし層で「入りたい介護施設に入所できない」や「希望しても自宅で介護を受けられない」、「要介護状態になったとき自分の尊厳が無視される」の不安度が高い。なお、60歳代では既婚・子あり・会社員/公務員層で「加齢により身体的機能が衰えて思ったように動けなくなる」が、既婚・子あり・会社員/公務員層や専業主婦層で「認知症になる」の不安度が高い。つまり、50~60歳代の女性では同様に「要介護不安」を抱えるが、ライフコースによって、少しずつ違いがあり、未婚や子がいない女性では希望通りの介護を受けられるかどうか、子のいる女性では自分の状態についての不安という意味合いが強い。
なお、参考のため男性も見ると、男性は女性と比べて健康や医療、介護に関わる不安は顕著に少ない(図表2(b))。男性では、同年代の女性とは対照的に、若い頃は属性によらず健康や医療、介護に関わる不安はない。また、無職では30歳代(サンプル数が少ないため参考値)から、未婚では40歳代あたりから、「要介護関連不安」や「受傷・罹患不安」などがあらわれる。無職では医療費などの経済面での不安、未婚では面倒を見てくれる人がいない不安などがあるのだろう。既婚者でも50歳代から、子なし層や子あり・パート/アルバイト層で不安があらわれ、面倒を見てくれる家族の存在や経済的な安定性が影響する様子がうかがえる。一方、既婚・子あり・会社員/公務員層は60歳代で「要介護関連不安」があらわれるのみであり、総じて不安が少ない。
2 日本乳癌学会乳癌診療ガイドライン「出産は乳癌発症リスクと関連するか (疫学.予防・リスク―生活習慣と環境因子・ID41240)」http://jbcs.gr.jp/guidline/guideline/g4/g41240/など。
03-3512-1878
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
公式SNSアカウント
新着レポートを随時お届け!日々の情報収集にぜひご活用ください。
新着記事
-
2024年04月19日
しぶといドル高圧力、一体いつまで続くのか?~マーケット・カルテ5月号 -
2024年04月19日
年金将来見通しの経済前提は、内閣府3シナリオにゼロ成長を追加-2024年夏に公表される将来見通しへの影響 -
2024年04月19日
パワーカップル世帯の動向-2023年で40万世帯、10年で2倍へ増加、子育て世帯が6割 -
2024年04月19日
消費者物価(全国24年3月)-コアCPIは24年度半ばまで2%台後半の伸びが続く見通し -
2024年04月19日
ふるさと納税のデフォルト使途-ふるさと納税の使途は誰が選択しているのか?
レポート紹介
-
研究領域
-
経済
-
金融・為替
-
資産運用・資産形成
-
年金
-
社会保障制度
-
保険
-
不動産
-
経営・ビジネス
-
暮らし
-
ジェロントロジー(高齢社会総合研究)
-
医療・介護・健康・ヘルスケア
-
政策提言
-
-
注目テーマ・キーワード
-
統計・指標・重要イベント
-
媒体
- アクセスランキング
お知らせ
-
2024年04月02日
News Release
-
2024年02月19日
News Release
-
2023年07月03日
News Release
【健康に関わる女性の不安-年齢とともに感染や罹患から介護へ、未婚40代は不安最多だが半数は対策をしておらず】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
健康に関わる女性の不安-年齢とともに感染や罹患から介護へ、未婚40代は不安最多だが半数は対策をしておらずのレポート Topへ