2018年07月04日

テクノロジーの進化とアクティブマネージャー選択

金融研究部 主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任   高岡 和佳子

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効率的市場とは、証券の価格に影響を及ぼす全ての情報が速やかに、かつ、正しく織り込まれる市場を指す。ミスプライスがそのまま放置されない市場と言い換えることも出来る。証券市場がそれなりに効率的だと考えるなら、アクティブマネージャーを採用するべきではない。ミスプライスが放置される可能性があまり無いならば、アクティブリスクや相対的に高い運用報酬に見合った超過収益の獲得が期待できないからだ。そうであるなら、超過収益の獲得を目指さず、運用報酬が相対的に低いパッシブマネージャーを採用するべきである。この他、証券市場は効率的でないと考えてはいるが超過収益獲得能力の高いアクティブマネージャーが見つからない場合や、経済成長や市場金利に見合う収益率が得られれば十分だと考える場合にも、パッシブマネージャーが採用される。

投資家すべてが経済成長や市場金利に見合う収益を享受することは可能だが、投資家すべてが超過収益を獲得することは不可能である。超過収益獲得は基本的にはゼロサムゲームであり、他の投資家に勝つことと同義だからだ。このため、超過収益を獲得できる可能性は低いといった考え方もある。

しかし、年金資産運用において超過収益獲得の重要性は決して低くない。投資格付情報センターによる年金運用の受託実績のある運用機関へのアンケート調査に基づき、資産クラス別にアクティブファンドの時価占率を求めたところ、国内債券以外はアクティブファンドが大部分を占める(図表1)。加えて、同調査によると、市場リスクを除去し、マネージャーの超過収益獲得能力にのみ投資するヘッジファンド(ロングショート戦略)も少なくない。これは、少なくとも一部のアクティブマネージャーは、超過収益獲得能力が高いと評価されていることの証左でもある。
図表1:資産クラス別アクティブファンドの時価占率
アクティブマネージャー選択においては、過去の運用実績に基づく定量評価よりも定性評価を重視すべきである。過去の運用実績が、高い超過収益獲得能力による結果ではなく、偶然の結果かもしれないからだ。偶然の結果ならば、採用後も高い超過収益を獲得してくれる可能性は低い。一般に定量評価には3年~5年の運用実績が用いられるが、超過収益獲得能力はないが幸運なアクティブマネージャーを除去するには不十分だ。3年~5年の運用実績を用いる根拠は、マーケットサイクルが3年~5年程度と考えられるからだ。少なくともマーケットサイクルを通して評価しなければ、運用スタイルの異なるアクティブマネージャーを公平に評価することも、運用スタイルに一貫性があるか否かを評価することも不可能だ。一方、定性評価において考慮すべき内容は、運用戦略やプロセス、超過収益の源泉、組織体制、情報開示など多岐に渡る。定性評価も容易ではないが、少なくとも超過収益の源泉が曖昧、もしくは明瞭に説明できないアクティブマネージャーは採用するべきではない。

昨今は、超過収益を獲得するために、人工知能などの最先端テクノロジーを活用する動きがある。テクノロジーの活用が進む環境下において、アクティブマネージャー選択の際には、これまで有効に機能してきた超過収益の源泉が、今後も引き続き有効に機能するかどうかに注意すべきであろう。

例えば、Cohen and Frazzini(2008)の研究によると、商品・サービスの販売先企業の株
価収益率に基づき投資判断することで、高い超過収益が獲得可能であった。この超過収益の源泉は投資家の情報収集・集約能力の限界にある。企業の収益は、取引関係にある企業の動向に左右されるため、株価には取引関係にある企業に関する情報も織り込まれる。しかし、企業間の関係は複雑な上、人間の情報処理能力には限界があるため、取引関係にある企業の情報を全て織り込むには時間がかかる。このタイムラグを利用することで超過収益が獲得できたのだ。

テクノロジーは進化し、情報処理能力は飛躍的に向上している。対象市場や手法の細部は異なるが、同じコンセプトの下、異なる対象期間で筆者が分析した結果、タイムラグの短期化が確認できる(図表2)。これは、テクノロジーの進化に伴い、投資家の情報収集・集約能力の限界に起因する超過収益の源泉が枯渇しつつあることを示唆する。資産運用領域におけるテクノロジー活用が進む中、超過収益の源泉の確認だけでなく、それが今後も継続するかといった視点が重要になるのではないだろうか。
図表2:CPU性能と取引関係にある企業情報が株価に織り込まれるまでの期間の変遷
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金融研究部   主任研究員・年金総合リサーチセンター兼任

高岡 和佳子 (たかおか わかこ)

研究・専門分野
リスク管理・ALM、価格評価、企業分析

(2018年07月04日「ニッセイ年金ストラテジー」)

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