2018年07月04日

多くの人の確定拠出年金は、ほとんどをリスク性資産に

金融研究部 研究理事 年金研究部長 兼 年金総合リサーチセンター長   德島 勝幸

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公的年金の財政検証を来年度に控え、国勢調査、人口動態推計など、徐々に基礎材料となるデータが集まりはじめ、経済環境の見通しなどについても今後に向けた議論が開始されている。最終的な落とし所がどう決着するか、現時点では予断を許さないが、既に表面に出て来ている議論や、将来の人口構成変化を考えると、国に任せるだけで豊かな老齢給付が受領できるといったことはないだろう。更なる高齢化の進行によって、より多くの高齢者の生活を少ない現役世代が支えなければならなくなる。その際には、掛金負担を抑え、同時に、一般会計の社会保障費を抑制する観点から、老齢給付の受給開始年齢を柔軟に選択できるようにしたり、マクロ経済スライドの完全適用によって世代間の調整を図ったりすることが不可避となる。

そもそも日本の公的年金においては、住居費負担の有無や居住地域の物価水準、単身か夫婦かなどの差はあるものの、老齢基礎年金だけですべての生活費を賄うことは容易でないし、想定されていないと考えるべきである。定年によって雇用先からの退職を強いられる被用者は、退職前の報酬に応じた老齢厚生年金が給付される。もし退職後も雇用が継続でき所得が得られるのなら、年金給付額を多少削減されるのも、制度的には理に適っているように見える。結局のところ、少しでも豊かな老後生活を確保するためには、確定給付型企業年金は勤務先の制度設定次第であって能動的な立場になく、個人の自助努力次第であることが自明である。
図表1:確定拠出企業年金の資産配分推移
個人の自助努力型年金商品として容易に利用できるのは、生命保険会社等の提供する個人年金保険の他に、この十年強の間に制度が導入・拡充され使い勝手が改善されている確定拠出型年金がある。大きく分けると、企業等で制度設定されている確定拠出企業年金(企業型DC)と、ほとんどの人が加入できる個人型確定拠出年金(個人型DC;愛称“iDeCo”)がある。米国401(k)の成功を意識して導入された制度であるが、なかなか「貯蓄から資産形成へ」の流れが太い奔流になる兆しは見えない。2017 年3月末の各々の資産配分は、図表の通りである。
図表2:個人型確定拠出年金の資産配分推移
企業型でも個人型でも、元本確保商品と呼ばれる預貯金や保険商品が、確定拠出年金の投資対象で半分以上を占め続けている。ところが、日本銀行による強力な金融緩和によって、元本確保商品から得られる利回りは極めて低い。元本が毀損しないことの裏腹である。そもそも確定拠出年金において、企業型では一般に一定の運用利回りを前提にDBや退職金から制度移行されていることもあって、それを上回る利回りを実現できなければ、将来の受取額は実質的に目減りしてしまう。個人型では、運営管理機関費用等の制度コストが小さくなく、ある程度の利回りを実現しない限り、徐々に元本が目減りしてしまいかねない。つまり、確定拠出年金においては、拠出時の所得税控除メリットがあるものの、一定以上の運用収益を獲得することが前提になっているのである。

そもそも家計の保有する金融資産全体を見ると、日本銀行の公表している資金循環統計(2017年12 月末速報)では、現金・預金が51.1%で、保険受給権等が14.4%を占めている。つまり、既に資産の約3分の2を安全な対象に振り向けているのである。それに加えて、確定拠出年金でも元本確保型商品を半分以上も持つ必要があるのか。世帯が保有する金融資産全体で考えると、現状では、過半どころか、ほとんどが安全資産になっているのである。確定拠出年金での運用資産には、元本確保型商品を組込まなくても良いのではないかとすら思える。

平均ではなく個々人の資産を見た場合には、確定拠出年金以外にも、NISA や株式投資、投資信託といった形でリスク性資産に投資していることもあろう。それならば、確定拠出年金では、過大な価格変動リスクを回避することもおかしくない。しかし、銀行預金や社内預金、保険会社の貯蓄性保険といった商品が多い個人の場合には、確定拠出年金ではリスクを取って運用することが、現代ポートフォリオ理論に基づく資産配分として肯定されるのである。単純に確定拠出年金の中だけでの資産配分を考えるのではなく、世帯の金融資産全体がどのような配分になっているのかを改めて確認しておくべきだろう。
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金融研究部   研究理事 年金研究部長 兼 年金総合リサーチセンター長

德島 勝幸 (とくしま かつゆき)

研究・専門分野
年金・債券・クレジット・ALM

(2018年07月04日「ニッセイ年金ストラテジー」)

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