コラム
2018年06月26日

「泊食分離」による訪日客誘致-多様な観光ニーズに応えるために!

社会研究部 主任研究員   土堤内 昭雄

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最近の温泉旅館の予約サイトをみると、食事の付いていないプランが掲載されていることがある。これまで温泉旅館といえば「1泊2食付き」が基本で、夕食には豪華な会席料理が出され、朝食も食べきれないほどのご馳走が並ぶことが多かった。しかし、近年ではホテル同様の素泊まりや朝食のみのプランなど、「宿泊代」と「食事代」を分けた「泊食分離」の傾向がみられるのだ。

観光庁が今年4月に公表した『宿泊施設の地域連携に関する調査事業』の結果によると、温泉街に立地する旅館・ホテル等のうち「泊食分離」を実施している割合は20.1%、今後取り組みたい意向は24.0%となっている。インバウンドに積極的に取り組んでいる宿泊施設では、40.7%が「泊食分離」を実施している。「泊食分離」は訪日客誘致に向けてひとつの重要な手段になっているようだ。

「泊食分離」にあたり他施設との連携については、「宿泊施設外の飲食店との連携」が43.5%と多い。軽井沢のとある高級温泉旅館では食事付きプランはなく、宿泊客には多様な食事の選択肢を提供するために周辺にさまざまなレストランを設けている。観光ニーズが多様化する今日、客室や食事などに豊富な選択肢を提供できるかどうかが、リピーターを含む観光客誘致の鍵を握っていると言えよう。

「泊食分離」のメリットはいろいろある。訪日外国人の観光目的のひとつは温泉を楽しむことだが、豪華な食事を求めていない外国人には、低価格で温泉旅館に泊まることができる。また、連泊をする場合も、日本人客でも同じような料理に飽きてしまう心配がない。プレミアムフライデーを利用した週末の仕事帰りのミニ旅行では、夕食の時間帯に間に合うかどうか気遣う必要もない。

一方、旅館側にとっての「泊食分離」の効果として、「人手不足が解消した」、「コストが削減できた」、「顧客満足度が向上した」ことが挙げられている。好きな時に食事をしたいなど旅のライフスタイルも大きく変わり、宿泊施設に求められる旅行者のニーズは多様だ。施設側の人手不足が深刻化するなか、「泊食分離」の推進がインバウンドの拡大につながっているのであろう。

観光庁『平成30年版観光白書』によると、訪日外国人の消費額は全体では増えているものの、1人当たりでは減少している。一方、外国人の延べ宿泊者数は地方部で大きく伸びているが、タイプ別の客室稼働率をみると「旅館」は4割未満と各種ホテルなどに比べて低い。今後、インバウンドの旅行者と消費額を伸ばすためには、訪日外国人の飲食施設の利用を容易にするキャッシュレス決済を促進し、地方の温泉旅館が「泊食分離」などの多様なニーズに応えるサービスの提供が求められる。
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社会研究部   主任研究員

土堤内 昭雄 (どてうち あきお)

研究・専門分野
少子高齢化・家族、市民社会・NPO、都市・地域計画

(2018年06月26日「研究員の眼」)

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