2018年06月22日

消費者物価(全国18年5月)-エネルギー価格の上昇率拡大から、コアCPI上昇率は夏場に1%へ

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.コアCPI上昇率は前月と変わらず

消費者物価指数の推移 総務省が6月22日に公表した消費者物価指数によると、18年5月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比0.7%(4月:同0.7%)となり、上昇率は前月と変わらなかった。事前の市場予想(QUICK集計:0.7%、当社予想も0.7%)通りの結果であった。

生鮮食品及びエネルギーを除く総合は前年比0.3%(4月:同0.4%)と上昇率が前月から0.1ポイント縮小、総合は前年比0.7%(4月:同0.6%)と上昇率が前月から0.1ポイント拡大した。
消費者物価指数(生鮮食品除く、全国)の要因分解 コアCPIの内訳をみると、電気代(4月:前年比4.4%→5月:同3.3%)、ガス代(4月:前年比2.6%→5月:同2.4%)、の上昇幅は縮小したが、灯油(4月:前年比13.6%→5月:同14.3%)、ガソリン(4月:前年比7.5%→5月:同10.5%)の上昇幅が拡大したため、エネルギー価格の上昇率は4月の前年比5.3%から同5.6%へと若干拡大した。

一方、外国パック旅行費(4月:前年比9.8%→5月:同5.6%)の上昇幅縮小などから、教養娯楽が4月の前年比0.2%から同0.0%へと伸び率を低下させたことが、コアCPIを押し下げた。

コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが0.44%(4月:0.41%)、食料(生鮮食品を除く)が0.25%(4月:0.28%)、その他が0.00%(4月:0.02%)であった。

2.上昇品目数は前月とほぼ変わらず

消費者物価(除く生鮮食品)の「上昇品目数(割合)-下落品目数(割合)」 消費者物価指数の調査対象523品目(生鮮食品を除く)を、前年に比べて上昇している品目と下落している品目に分けてみると、5月の上昇品目数281品目(4月は282品目)、下落品目数は178品目(4月は180品目)となり、上昇品目数、下落品目数ともに前月からあまり変わらなかった。上昇品目数の割合は53.7%(4月は53.9%)、下落品目数の割合は34.0%(4月は34.4%)、「上昇品目割合」-「下落品目割合」は19.7%(4月は19.5%)であった。

上昇品目数の割合は16年後半以降、50%台の推移が続いている。この間、コアCPI上昇率はマイナスから1%まで変動したが、そのほとんどがエネルギー価格の変動によるもので、物価の基調は長期にわたってあまり変わっていないこと。

3.エネルギー価格の上昇率拡大からコアCPI上昇率は夏場に再び1%へ

コアCPI上昇率は18年2月に3年6ヵ月ぶりに1%(消費税を除くベース)に達した後、4、5月には同0.7%まで鈍化したが、6月以降はエネルギー価格の上昇率拡大を主因として上昇ペースが高まる可能性が高い。
コアCPIに対するエネルギーの寄与度 ガソリン、灯油の上昇率はすでに再拡大しているが、原油価格上昇の影響が遅れて反映される電気代、ガス代も夏場以降は上昇率が高まることが見込まれる。現時点では、コアCPI上昇率はエネルギー価格の上昇率拡大を主因として、8月に1%に達すると予想している。

ただし、企業の価格改定に直結する個人消費の回復が緩やかにとどまり、経済成長率を下回る状態が続くこと、賃金上昇率がベースアップでゼロ%台にとどまる中ではサービス価格の上昇圧力も限られることなどから、上昇率はその後頭打ちとなり、1%程度の推移が続くことが見込まれる。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2018年06月22日「経済・金融フラッシュ」)

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