2018年06月20日

日銀短観(6月調査)予測~大企業製造業の業況判断D.I.は2ポイント下落の22と予想

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
  1. 6月調査短観では、注目度の高い大企業製造業で2四半期連続での景況感悪化が示されると予想する。大企業製造業では、長引くIT関連材の生産調整や原材料価格上昇などによる悪影響が円高是正による好影響を上回り、景況感が押し下げられるだろう。一方、大企業非製造業では、個人消費の持ち直しや好調なインバウンド需要を追い風に景況感の改善が予想されるが、原材料高や人件費増加が重石となるため、改善幅はわずかに留まりそうだ。中小企業も基本的に強弱材料は大企業と同様であるが、非製造業は人手不足感が極めて強いだけに、大企業とは逆に景況感が弱含むと見ている。
     
  2. 先行きの景況感は、米政権の保護主義に端を発する貿易摩擦への懸念などから幅広く悪化すると予想。前回調査以降も米政権は中国への通商圧力を強めており、報復を予告する中国との間で貿易戦争に発展するリスクが高まっている。輸出関連企業のみならず、消費・サービス関連企業もインバウンドを通じて海外経済の影響を受けやすくなっているだけに、幅広く先行きへの懸念が現れるだろう。
     
  3. 2018年度の設備投資計画は前年比4.2%増と予想。例年6月調査では、計画が固まってくることで上方修正される傾向が強いうえ、良好な企業収益を受けた投資余力の改善や人手不足に伴う省力化投資などが追い風となり、実勢としても底堅い投資スタンスが維持されていると見込まれる。前回に続いて例年と比べて高めの伸び率が示されると見ている。
     
  4. 今回の短観で注目されるテーマは「貿易摩擦の影響がどこまで現れるか」だ。先行きの景況感は貿易摩擦への懸念などから悪化が避けられないと見込まれるが、どこまで悪化するかが注目される。また、設備投資計画がもし抑制的な結果となれば、貿易摩擦への懸念から、企業の間で設備投資に一部先送りの動きが生じている可能性を示唆することになる。
■目次

6月短観予測:先行きは貿易摩擦への懸念で悪化、設備投資は堅調維持か
  ・大企業製造業は2四半期連続で悪化すると予想
  ・注目ポイント:貿易摩擦の影響と販売価格の動向
  ・日銀金融政策への影響は限定的
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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