2018年06月18日

見た目のケアと恋愛・結婚に関する一考察~未婚化社会データ考察:乾癬(2)  

生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子

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1――見た目・ルックスは結婚希望に影響するのだろうか

1既婚者の独身時代のルックス自信と未婚者のルックス自信比較
 
2015年の国立社会保障・人口問題研究所の18歳から34歳の独身男女への大規模調査によれば、結婚希望がある男女はそれぞれ約9割にのぼっている。未婚化が進む中、未婚者の希望の障壁となるものについて、可能な限り検討しておきたいところである。
本稿では、恋愛・結婚において「見た目・ルックス」についてデータを用いて検討してみたい。
 
恋愛・結婚において見た目が影響しそうだ、と思う人は少なからずいるだろう。
しかし、「見た目・ルックス」は非常に主観的な好みの問題が加味される。そのため、一律の基準でランク付けをして結婚の有無を論じるためには、かなりハードルの高い調査が必要となる1
 
「好みの問題」とは、例えば男性については、筋肉質な見た目の男性を好む女性もいれば、そうではない女性もいる。女性については、儚げなルックスを好む男性もいれば、そうではない男性もいるだろう。
 
このように「好みの問題」がある見た目に関して、そもそも「それが結婚の障壁となるのか」について、非常に興味深いデータがある。以下で確認してみたい。
 
下表は民間研究所が、日本における平均的な初婚年齢を丁度真ん中に挟む年齢ゾーンの25歳から34歳の「アラサー」男女に対して2017年に行ったアンケートの結果の一部である。
 
未婚者に関しては「アンケート回答日」の、既婚者に関しては「自分が独身だったころ」の自分の見た目への自信の有無について回答を求めている。
【図表1】ルックス・見た目への既婚者と独身者の自信の有無割合(%) 
結果からは、同じ独身時代で比べると既婚男女の方が未婚男女よりもルックス・見た目に自信をもっていることが見てとれる(図表1)。
 
男性については、既婚者の約3人に1人が独身時代に見た目に自信があったとしている一方で、未婚者は自分の見た目に自信がある者が5人に1人以下となっている。
女性についても、やはり既婚者は約3人に1人が見た目に自信があったとしている一方で、未婚者は見た目に自信がある者は約4人に1人となっている。
 
明らかに、既婚者の独身時代における自分の見た目・ルックスに自信を持っている割合の方が未婚者のその割合よりも男女とも高い。このことから、(それが客観的な評価をともなうかどうかは不明であるものの)自分の見た目への自信が未婚者と既婚者の間を隔てている1要素である様子がうかがえる。
特に男性の方が女性よりも見た目・ルックスへの自信の差が、既婚者と未婚者で大きく開いていることは大変興味深い。
 
男性が女性にアプローチする際の自信の拠り所の1つとして、見た目・ルックスがある可能性が示されており、「見た目自信向上支援」は結婚支援において効果があるのではないかと言えなくもない。
少なくとも、女性に「見た目自信向上支援」を行う場合よりも結婚支援として効果があるかもしれないことが示唆されている2
 
1 印象分析という手法もあるが、可能な限り一般的な印象順位付けを行うためには人員と手間が非常にかかる。
2 実際結婚支援の現場からは、髪型・服装も含めた身だしなみといった見た目についての改善が必要かつ改善によって支援効果がありそうな男性が多い、という指摘もよく聞く話の一つである。
2養護教諭による 「皮膚疾患=若い男女の恋愛阻害要因」 の指摘
 
一口に見た目・ルックスといっても、具体的に挙げるとなるとかなりの広がりがある。
結婚支援の現場からよくでてくる見た目に関する指摘としては、髪型・服装・服装や髪型のTPO(似合わないとは言わないが、イベントにジャージや作業着で来場してしまうなど)である。
その他に、生まれ持ったスタイルや顔立ち・表情・化粧・皮膚や肌の状態などもあるだろう。
 
最近では、男女が出会うイベント前に身だしなみに関するセミナーが行われるケースも珍しくはない。
しかし、生まれ持ったものに関してはどうしようもない、という議論もある。
とはいうものの、その一方で、小学校・中学校・高校における不登校児童を専門にケアする養護教諭に対して当研究所が実施したアンケートからは、以下のような興味深い結果が得られている。
 
学びリンク株式会社の協力で当研究所がおこなった「養護教諭定期交流会」におけるアンケート結果を以下に示してみたい(図表2)。
【図表2】「皮膚の疾患(トラブル)は若い男子・女子の恋愛を阻害していると思うか」(名)
上表は、2018年4月に行われた「養護教諭定期交流会」に参加した関東圏の学校(小学校1校・中学校3校・高校1校・非公開1校)のひきこもり児童などの不登校児童支援を行う養護教諭6名に対して行った、当研究所によるアンケートの結果の一部である。
 
6名の養護教諭のうち5名が皮膚の疾患やトラブルが若い男女の恋愛を阻害していると思う、と回答した。
また、交流会に参加した養護教諭全員が「皮膚の疾患(トラブル)をもつ患者を支援する情報提供があれば今後受けたいか」とする質問に「そう思う」と回答した。
 
皮膚疾患・トラブルが直接的に不登校につながるかどうかはさておき、10代の恋愛に少なからず影を落としている可能性を示す結果といえるだろう。
 
先天的要素ももちあわせる皮膚疾患ではあるが、すべてが「生まれ持ったものに関してはどうしようもない」という疾患であるわけではない。
皮膚疾患・トラブルが恋愛阻害要因の1つであるのであれば、それへのケアが結婚支援におけるアプローチの1つになりうると見ることができるだろう。
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生活研究部   人口動態シニアリサーチャー

天野 馨南子 (あまの かなこ)

研究・専門分野
人口動態に関する諸問題-(特に)少子化対策・東京一極集中・女性活躍推進

経歴
  • プロフィール
    1995年:日本生命保険相互会社 入社
    1999年:株式会社ニッセイ基礎研究所 出向

    ・【総務省統計局】「令和7年国勢調査有識者会議」構成員(2021年~)
    ・【こども家庭庁】令和5年度「地域少子化対策に関する調査事業」委員会委員(2023年度)
    ※都道府県委員職は就任順
    ・【富山県】富山県「県政エグゼクティブアドバイザー」(2023年~)
    ・【富山県】富山県「富山県子育て支援・少子化対策県民会議 委員」(2022年~)
    ・【三重県】三重県「人口減少対策有識者会議 有識者委員」(2023年~)
    ・【石川県】石川県「少子化対策アドバイザー」(2023年度)
    ・【高知県】高知県「中山間地域再興ビジョン検討委員会 委員」(2023年~)
    ・【東京商工会議所】東京における少子化対策専門委員会 学識者委員(2023年~)
    ・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する情報発信/普及啓発検討委員会 委員長(2021年~)
    ・【主催研究会】地方女性活性化研究会(2020年~)
    ・【内閣府特命担当大臣(少子化対策)主宰】「少子化社会対策大綱の推進に関する検討会」構成員(2021年~2022年)
    ・【内閣府男女共同参画局】「人生100年時代の結婚と家族に関する研究会」構成員(2021年~2022年)
    ・【内閣府委託事業】「令和3年度結婚支援ボランティア等育成モデルプログラム開発調査 企画委員会 委員」(内閣府委託事業)(2021年~2022年)
    ・【内閣府】「地域少子化対策重点推進交付金」事業選定審査員(2017年~)
    ・【内閣府】地域少子化対策強化事業の調査研究・効果検証と優良事例調査 企画・分析会議委員(2016年~2017年)
    ・【内閣府特命担当大臣主宰】「結婚の希望を叶える環境整備に向けた企業・団体等の取組に関する検討会」構成メンバー(2016年)
    ・【富山県】富山県成長戦略会議真の幸せ(ウェルビーイング)戦略プロジェクトチーム 少子化対策・子育て支援専門部会委員(2022年~)
    ・【長野県】伊那市新産業技術推進協議会委員/分野:全般(2020年~2021年)
    ・【佐賀県健康福祉部男女参画・こども局こども未来課】子育てし大県“さが”データ活用アドバイザー(2021年~)
    ・【愛媛県松山市「まつやま人口減少対策推進会議」専門部会】結婚支援ビッグデータ・オープンデータ活用研究会メンバー(2017年度~2018年度)
    ・【愛媛県法人会連合会】結婚支援ビッグデータアドバイザー会議委員(2020年度~)
    ・【愛媛県法人会連合会】結婚支援ビッグデータ活用研究会委員(2016年度~2019年度)
    ・【中外製薬株式会社】ヒト由来試料を用いた研究に関する倫理委員会 委員(2020年~)
    ・【公益財団法人東北活性化研究センター】「人口の社会減と女性の定着」に関する意識調査/検討委員会 委員長(2020年~2021年)

    日本証券アナリスト協会 認定アナリスト(CMA)
    日本労務学会 会員
    日本性差医学・医療学会 会員
    日本保険学会 会員
    性差医療情報ネットワーク 会員
    JADPメンタル心理カウンセラー
    JADP上級心理カウンセラー

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