2018年06月11日

米国経済の見通し-減税、拡張的な財政政策などから当面は堅調見通しも、影を落とす通商政策動向

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

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■要旨
  1. 米国の1-3月期の成長率(前期比年率)は+2.2%(前期:+2.9%)と、前期から伸びが鈍化。民間設備投資は好調を維持したものの、個人消費が大幅に鈍化したことが大きい。
     
  2. もっとも、減税に伴い可処分所得が増加しているほか、労働市場の回復持続、堅調な消費者センチメントなど、個人消費に追い風となっているため、消費不振は一時的と判断。4-6月期の成長率は、個人消費主導で3%超へ加速する見込み。
     
  3. 19年にかけても個人消費主導の景気回復が持続する中、減税や、拡張的な財政政策に伴う景気押上げ効果も期待できるため、当研究所では成長率(前年比)は18年が+2.9%、19年も+2.8%と17年の+2.3%から加速すると予想。
     
  4. 金融政策は、労働市場の回復持続に加え、原油価格や賃金の上昇に伴いインフレ率の加速が見込まれることから、FRBは18年に年4回の利上げを実施、19年にかけても利上げを継続すると予想。長期金利も政策金利の引き上げに加え、財政状況の悪化に伴う期間プレミアムの上昇などから、19年末にかけて3%台後半への上昇する見込み。
     
  5. 米経済に対するリスクは、短期的には欧州政治に加え、米国の通商政策。とくに、通商政策では、トランプ大統領による保護主義的な通商政策が世界的な貿易戦争に拡大する場合には、実体経済への影響が大きい。また、中期的なリスクは米国内政治。11月に中間選挙を控え、トランプ大統領から選挙対策として極端な政策方針が提示される可能性があるほか、選挙結果次第ではトランプ大統領の弾劾も含めて、政策遂行能力が著しく低下する可能性があり、注目される。
(図表1)米国の実質GDP成長率(寄与度)
■目次

1.経済概況・見通し
  ・(経済概況)1‐3月期の成長率は、個人消費の不振に伴い前期から伸びが鈍化
  ・(経済見通し)成長率は18年+2.9%、19年+2.8%を予想
2.実体経済の動向
  ・(労働市場)
    労働市場の回復が持続。労働需給の逼迫から賃金上昇率は今後加速する見込み
  ・(設備投資)
    17年以降、堅調な伸びが持続。法人税制改革などを追い風に好調を持続する見込み
  ・(住宅投資)
    住宅需要は堅調。住宅価格・住宅ローン金利上昇スピードが需要に影響する可能性
  ・(政府支出、債務残高)
    財政政策は19年度まで景気刺激的。注目される20年度以降の政策
  ・(貿易)通商政策が世界的な貿易数量の回復に水を差す可能性
3.物価・金融政策・長期金利の動向
  ・(物価)エネルギー価格や賃金の上昇から、インフレ率の加速を予想
  ・(金融政策)18年は年4回、19年も利上げ継続を予想
  ・(長期金利)19年末にかけて3%台後半への上昇を予想
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経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

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