2018年06月08日

2018・2019年度経済見通し-18年1-3月期GDP2次速報後改定

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1. 2018年1-3月期は前期比年率▲0.6%で1次速報と変わらず

6/8に内閣府が公表した2018年1-3月期の実質GDP(2次速報値)は前期比▲0.2%(年率▲0.6%)となり、1次速報と変わらなかった。1-3月期の法人企業統計の結果が反映されたことにより、設備投資(前期比▲0.1%→同0.3%)が上方修正されたが、民間在庫変動(前期比・寄与度▲0.1%→同▲0.2%)、民間消費(前期比▲0.0%→同▲0.1%)の下方修正がそれを打ち消した。

1-3月期は9四半期ぶりのマイナス成長となったが、民間消費の減少は大雪や生鮮野菜の価格高騰といった一時的な下押し要因の影響が大きいこと、企業収益の改善に伴う潤沢なキャッシュフローを背景に設備投資の堅調が維持されていることなどを踏まえれば、それほど悲観する必要はないだろう。

2018年1-3月期の成長率は変わらなかったが、2017年10-12月期の実質GDPは1次速報時点の前期比年率0.6%から同1.0%へと上方修正された。民間消費、設備投資、民間在庫変動がいずれも小幅な上方修正となった。この結果、2017年度の実質GDP成長率は1次速報時点の1.5%から1.6%へ、名目GDP成長率は1.6%から1.7%へと上方修正された。
(企業収益の増勢ペースが鈍化)
6/1に財務省から公表された法人企業統計では、2018年1-3月期の経常利益(金融業、保険業を除く全産業)が前年比0.2%と7四半期連続の増加となったが、2017年10-12月期の同0.9%から伸びが鈍化した。経常利益は2017年1-3月期の前年比26.6%をピークに伸び率の鈍化傾向が続いている。
経常利益の推移/経常利益(季節調整値)の推移
経常利益(季節調整値)は過去最高に近い水準にあるが、人件費や原材料費などのコストが増加しており、利益率の大幅な改善によって収益が急拡大する局面は過ぎたと考えられる。2018年度入り後の原油価格の大幅上昇は利益率を一段と押し下げている可能性が高い。先行きについては、海外経済の回復や国内需要の持ち直しを背景に企業収益の改善基調は維持されるものの、人件費や原材料費の増加が続くことが見込まれるため、増益のペースは緩やかにとどまることが予想される。

設備投資(ソフトウェアを含む)は前年比3.4%(10-12月期:同4.3%)と6四半期連続で増加したが、引き続き前年比で一桁前半の伸びにとどまっている。2016年後半から2017年前半にかけて経常利益が二桁の伸びを続けてきたことを踏まえれば、企業の投資スタンスが積極化しているとは言えない。企業の設備投資意欲を反映する「設備投資/キャッシュフロー比率」は2010年度以降50%台の低水準での推移しており、2017年度は56.8%と2016年度の57.3%から若干低下した。
設備投資/キャッシュフロー比率と期待成長率の関係 内閣府の「企業行動に関するアンケート調査(2017年度)」によれば、今後5年間の実質経済成長率の見通し(いわゆる期待成長率)が1.1%となった。前年度の1.0%からは若干改善したものの、依然として低水準にある。潤沢なキャッシュフローを背景に設備投資は堅調に推移しているが、企業の設備投資意欲が高まり、キャッシュフローに対する設備投資の水準を大きく引き上げるまでには時間がかかるだろう。
IT関連財の出荷・在庫バランスはさらに悪化 (IT関連財の調整が続く)
4月の鉱工業生産は3ヵ月連続で上昇したが、このところ弱い動きとなっているIT関連財の生産は前月比▲3.1%と大きく落ち込んだ。また、出荷が前年比▲3.0%と3月の同▲1.9%からマイナス幅が拡大する一方、在庫の積み上がり幅が3月の前年比15.2%から同22.8%へと拡大したため、IT関連財の出荷・在庫バランス(出荷・前年比-在庫・前年比)は3月の▲17.1%ポイントから4月には▲25.7%ポイントと悪化幅が拡大した。IT関連財は引き続き調整局面にある。品目別には、半導体集積回路、ビデオカメラなどの在庫が大きく積み上がっている。

輸出が底堅さを維持していること、鉱工業全体では在庫調整圧力が限定的にとどまっていることなどから、現時点では4-6月期は増産に転じるとみているが、IT関連財の調整が長期化すれば、生産の下振れリスクが高まるだろう。
 

2. 実質成長率は2018年度1.1%、2019年度0.8%

2. 実質成長率は2018年度1.1%、2019年度0.8%

(2018年度の成長率見通しを上方修正)
2018年1-3月期のGDP2次速報を受けて、5/17に発表した経済見通しを改定した。実質GDP成長率は2018年度が1.1%、2019年度が0.8%と予想する。2018年1-3月期の成長率は1次速報と変わらなかったが、2017年10-12月期が上方修正され2017年度から2018年度への発射台(ゲタ)が1次速報時点の0.1%から0.2%へ上方修正されたこと、4-6月期の見通しを若干上方修正したことから、2018年度の成長率見通しを0.1%上方修正した。2018年4-6月期以降の経済成長のパスはほとんど変更していない。

2017年1-3月期は9四半期ぶりのマイナス成長となったが、1次速報後に公表された4月の経済指標は景気が再び回復軌道に戻っていることを示すものが多い。それまで高い伸びを続けてきた輸出は1-3月期には減速したが、4月の実質輸出(日本銀行作成)は前月比5.2%の高い伸びとなり、1-3月期の水準を3.4%上回った。また、日本銀行作成の実質消費活動指数(旅行収支調整済)は1-3月期の前期比▲0.3%の後、4月は前月比2.4%の高い伸びとなり、1-3月期の水準を1.9%上回った。雇用所得環境が改善を続ける中、1-3月期の消費を下押しした大雪、生鮮野菜の価格高騰といった一時的なマイナス要因がなくなったことが消費の持ち直しに寄与している。
実質輸出、輸出数量指数の推移/個人消費関連指標の推移
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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

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