2018年05月28日

初婚・再婚別にみた「年の差婚の今」(下)-未婚少子化データ考-変わり行く2人のカタチ

生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子

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3――過去の結婚経験はどう反映されているか

以上から、結婚経験をもつ男女(つまり離婚経験がある男女)が次の結婚に踏み出す際に、どのような年齢差の人と結婚するのか、という点について「初婚者とは違う年の差行動を示す」ことが指摘出来るようだ。
最期に、その行動背景を「再婚者サイド」と「再婚者と結婚する初婚者サイド」から考えてみたい。
ここで、婚姻全体と比べた時、各組み合わせにおける「年齢差割合」の乖離が5ポイント以上、プラスマイナス双方どちらかに乖離しているグループは以下の通りである(図表6)。
【図表6】 全婚姻と各組み合わせで比較した場合の年の差別 割合の乖離(5ポイント以上乖離)
【再婚者サイドの考察】
再婚者は初婚者よりも結婚相手として結果的に、「自分より、より若いパートナー」に男女問わず向かう傾向があるようである。
特に再婚男性については、その相手が初婚・再婚女性問わず、ほぼ間違いなくその傾向が見て取れる。
これには過去の離婚経験に起因するものと、再婚者の年齢が必然的に初婚者の年齢よりも上昇することとの、2つの要因が指摘できる。
 
要因1
過去の結婚経験から「庇護されるより、庇護する的な」結婚が自分にはあっている、という気づきが男女問わずあるかに見える。
(ただし、日本の「男性上位婚1」の伝統的価値観に照らし合わせると、男性はその感覚をさらに強めるケース、女性はその感覚から脱却するケースといえる)
 
要因2
初婚者より年齢が上昇している分、異性の未婚者の割合が同じ年齢、もしくは年上であると少なくなる。自分よりも大きく年下の異性ほど、未婚者割合が高くなるため確率的には未婚者と出会いやすい(対象規模の問題)
 
(要因1に関する注目点)
(1) 離婚男性全体がそういう傾向にあるかはまた別の分析が必要であるが、初婚者とマッチングしている再婚者は男女とも「パートナーを庇護したい」結婚観が強い(または向いている)・特に男性再婚者にこの傾向は顕著である
(2) 離婚男性全体がそういう傾向にあるかはまた別の分析が必要であるが、初婚者とマッチングしている再婚者は男女とも、次のパートナーには「全く同じ時代感」を相手に求めない・特に男性再婚者にこの傾向は顕著である
 
【再婚者と結婚する初婚者サイドの考察
初婚側から見ると、初婚相手を選ぶ初婚者よりも、再婚者を選ぶ男女はかなり年上の異性を嗜好しているタイプと見える。
同年齢よりも未婚者の割合が少ない上の年齢マーケットの異性からあえて選んでいることとなるので、再婚者サイドの未婚市場の大きさ(要因2)の説明は、逆に出来ない。
再婚者サイドの考察とは表裏一体の指摘として「庇護するより、庇護される的な」結婚をより強く希望している初婚男女と見られる。
 
(初婚者サイドに関する注目点)
(1) 女性に関しては伝統的な男性上位婚希望の色合いがより強い女性(男性に社会的・経済的に頼りたい)
(2) 男性に関しては伝統的な男性上位婚価値観があわない男性(女性に社会的経済的に一方的に頼られることに拒否感)
 
1 学歴、収入、年齢などすべてにおいて男性が上である結婚。
女性に財産権がなかった第2次世界大戦の戦前では、必然的に男性上位婚が成立していた。
 

4――初婚・再婚別にみた「年の差婚の今」(下) のおわりに

4――初婚・再婚別にみた「年の差婚の今」(下) のおわりに

日本が第2次世界大戦に敗戦した1945年から約70年。
大正生まれである私の祖母が結婚したのは戦前であるが、第2次世界大戦の戦中、満州へ赴いた夫が生死不明の中、彼女の父親が亡くなった。
当時、女性には財産権がなく、彼女の父親の財産はすべて彼女の一人息子に引き継がれた。彼女は昨年亡くなるまで、そのことに納得がいかなかった。
 
日本は戦争に負け、財産制度から考えて男性上位婚が当然の社会ごと否定され、戦後の改革を迫られた。納得の上というよりも「あるべき姿」を外から与えられる形であっただろう。
 
このある種の「敗戦による価値観ちゃぶ台返し改革」が、その後長く、日本社会の「両性の合意のみに基づく自由恋愛」の建前と「(大日本帝国憲法の)家長制」本音の乖離を生んできた様にも思う。
 
建前は恋愛・結婚の多様化。本音は男性上位婚が当然という社会通念。今回のレポートの分析結果から、約70年の時を超えて、その本音と建前の間で生じた社会の歪(ひずみ)に一度ははまった結婚が、離婚をへて、その一部は再婚という形で解消されてきているように思えるのは筆者だけであろうか。
 
いまだ社会では「バツよばわり」されている離婚システムが、実は堅固な伝統的家族観の残るこの日本社会の「価値観が変容する時代の社会のひずみ矯正ツール」とみることも出来るのかもしれない。
 
結婚のカタチに正解はない。
誰かの天使は自分にとっては悪魔である、それくらい相性の世界である。あわなくてもバツではなく、あっても、それは他人目線では評価不能なその人にとってのオリジナルの正解である。
 
初婚・離婚・再婚、どれをとっても、「1人で生まれ1人で死ぬ、そんな人生の旅路のせめて道中、パートナーを」と願う姿の「挑戦」「覚悟」の姿の1形態であり、同じ人としてもっと自然に、社会から評価、応援されてよいように思う。
【参考文献一覧】
 
国立社会保障人口問題研究所.「出生動向基本調査」
  
厚生労働省.「人口動態調査」
 
国立社会保障・人口問題研究所. 「人口統計資料集」2017年版
 
総務省総計局. 「2015年 国勢調査速報値」
 
総務省総計局. 「人口推計(平成29年(2017年)10月確定値)
  
厚生労働省.「平成27年度 人口動態職業・産業別統計」
 
 
天野 馨南子.“2つの出生力推移データが示す日本の「次世代育成力」課題の誤解-少子化社会データ再考:スルーされ続けた次世代育成の3ステップ構造-” ニッセイ基礎研究所「研究員の眼」2016年12月26日号
 
天野 馨南子.“未婚の原因は「お金が足りないから」という幻想-少子化社会データ検証:「未婚化・少子化の背景」は「お金」が一番なのか-” ニッセイ基礎研究所「基礎研レポート」2016年9月5日号
 
天野 馨南子. “消え行く日本の子ども-人口減少(少子化)データを読む-わずか半世紀たたず、半減へ”ニッセイ基礎研究所「研究員の眼」2018年4月9日号
 
天野 馨南子. “ 「年の差婚」の希望と現実-未婚化・少子化社会データ検証-データが示す「年の差」希望の叶い方”ニッセイ基礎研究所 基礎研REPORT(冊子版) 2017年4月号
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生活研究部   人口動態シニアリサーチャー

天野 馨南子 (あまの かなこ)

研究・専門分野
人口動態に関する諸問題-(特に)少子化対策・東京一極集中・女性活躍推進

(2018年05月28日「基礎研レポート」)

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【初婚・再婚別にみた「年の差婚の今」(下)-未婚少子化データ考-変わり行く2人のカタチ】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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