2018年05月16日

【アジア・新興国】韓国の生命保険市場の現状-2017年のデータを中心に-

生活研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 金 明中

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1――はじめに1

韓国では少子・高齢化の急速な進展に伴い、社会保障に対する韓国政府の支出が継続的に増加している。そこで、社会的リスクに対する政府の公的制度と共に、自助努力としての民間保険の必要性に対する認識がますます広がっている。韓国の高齢化率は2017年現在14.2%でまだ日本より低い水準であるが、その進行速度は日本より速い。韓国の高齢化率は2050年に日本を上回りその後も(日本はほぼ横ばいで推移するのに対して)上昇を続ける。
図表1 日韓における高齢化率の推移
韓国政府としては、老後所得保障の2階部分として生命保険を含む民間保険の活性化を望んでいるが、最近の景気低迷などにより、とくに若年層の生命保険離れが進んでいる。2017年の経済成長率は3.1%で、景気は少しずつ回復の様相を見せているものの、韓国国民の多くはまだ景気回復を実感していない。

本稿では、韓国の保険研究院が毎年実施している「保険消費者アンケート調査」や、韓国生命保険協会の「2017年生命保険FACT BOOK」等を用いて韓国における生命保険市場の現状について紹介したい2
 

1 本稿の内容は、金明中(2017)「韓国における生命保険市場の現状- 2016年のデータを中心に -」を加筆、修正したものである。
2 2018年2月末現在、韓国において営業活動をしている生命保険会社は計25社である。
 

2――加入状況

2――加入状況

韓国の保険研究院が2017年に実施したアンケート調査3の結果によると、2017年における生命保険の世帯加入率は84.9%で、2016年の81.8%に比べて3.1%ポイント増加した4。また、生命保険加入世帯の平均加入件数は4.0件で2016年の3.5件に比べて0.5件増加している(図表2)。地域別には、郡地域に比べて中小都市と大都市の加入率が高く、世帯主の年齢階層別には50代が最も高いという結果となった。また、所得階層別には所得水準が高い世帯ほど加入率が高かった(図表3)。
図表2 韓国における生命保険の世帯加入率や生命保険加入世帯の平均加入件数の動向
図表3 世帯属性別加入率
2017年における生命保険の商品別世帯加入率は、疾病保障保険が72.9%で最も高く、実損医療保険(32.1%)、死亡保険(27.5%)、災害傷害保険(23.5%)などの他の商品の加入率を大きく上回った(図表4)。
図表4 生命保険の商品別世帯加入率(2017年)
一方、2017年における生命保険の個人加入率は78.2%で、2016年の73.4%に比べて4.8%ポイント増加した。性別には女性が79.3%で、男性の77.0%より高く、婚姻状態別には、既婚者が80.3%で未婚者の69.9%を大きく上回った(図表5)。
図表5 韓国における生命保険の個人加入率や個人加入件数の現状(婚姻状態や子どもの数別)
 
3 保険研究院(2017)「保険消費者アンケート調査」、調査対象:全国(済州道を除く)の満20歳以上の男女2,200人、調査期間:2017年6月20日~2017年7月24日。
4 一方、損害保険の世帯加入率は89.5%で、加入世帯の平均加入件数は3.4件であった。
 

3――収支の概況

3――収支の概況

2017年第3四半期における生命保険会社の保険料収入総額は25.7兆ウォンで、前年同期の27.3兆ウォンと比べて5.8%減少した。保険料収入総額で個人保険が占める割合は93.8%で、団体保険の6.2%を大きく上回っている。個人保険の保険料収入は、死亡保険と変額保険5の保険料収入が増加したものの、生存保険6と生死混合保険7が減少しており、保険料収入総額は前年当期の25.5兆ウォンに比べて5.5%減少した24.1兆ウォンになった。一方、団体保険の保険料収入も退職年金の販売不振により、前年同期に比べて10.6%減少した。
図表6 生命保険の商品類型別保険料収入の推移
 
5 株価上昇による需要増加と保険会社の積極的なマーケティングが原因。
6 新しい国際会計基準の導入による販売誘因の減少が原因。
7 非課税金額の縮小が原因:2017年4月から所得税法の改正により、貯蓄性保険の保険料納付類型により。一括納付の場合は1億ウォン以下、積立式の場合は1ヶ月の保険料が150万ウォン以下である場合のみ、非課税が適用されることになった。
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生活研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

金 明中 (きむ みょんじゅん)

研究・専門分野
労働経済学、社会保障論、日・韓における社会政策や経済の比較分析

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
    独立行政法人労働政策研究・研修機構アシスタント・フェロー、日本経済研究センター研究員を経て、2008年9月ニッセイ基礎研究所へ、2023年7月から現職

    ・2011年~ 日本女子大学非常勤講師
    ・2015年~  日本女子大学現代女性キャリア研究所特任研究員
    ・2021年~ 横浜市立大学非常勤講師
    ・2021年~ 専修大学非常勤講師
    ・2021年~ 日本大学非常勤講師
    ・2019年  労働政策研究会議準備委員会準備委員
           東アジア経済経営学会理事
    ・2022年~ 亜細亜大学都市創造学部特任准教授
    ・2021年  第36回韓日経済経営国際学術大会準備委員会準備委員

    【加入団体等】
    ・日本経済学会
    ・日本労務学会
    ・社会政策学会
    ・日本労使関係研究協会
    ・東アジア経済経営学会
    ・現代韓国朝鮮学会
    ・韓国人事管理学会
    ・博士(慶應義塾大学、商学)

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