2018年05月08日

オフィス市況は好調維持。Jリート市場は復調。-不動産クォータリー・レビュー2018年第1四半期

金融研究部 主任研究員 佐久間 誠

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1.経済動向

2017年10-12月期の実質GDP成長率(2次速報)は前期比+0.4%となり、1次速報の同+0.1%から上方修正された。これを受けてニッセイ基礎研究所では経済見通しの改定を行い、実質GDP成長率は2017年度+1.8%、2018年度+1.2%、2019年度+0.9%と予想する。実質所得が低迷する家計部門は厳しい状況が続くものの、輸出の増加や設備投資の回復を背景とした企業部門主導の経済成長が続くことが予想される1(図表-1)。

2018年3月の日銀短観では、大企業・製造業の業況判断DIが24(前期比▲2)となった。8期ぶりの悪化となったが、依然高水準で推移している。大企業・不動産業は37(前期比+2)と好調が続いているが、3ヵ月後の見通しは27と今後はやや減速する見通しである(図表-2)。
図表-1 実質GDP成長率の推移(前年比)/図表-2 日銀短観 業況判断DI
雇用人員判断DIを見ると、中小規模の企業を中心に人手不足感は一層強まっている(図表-3)。特に宿泊・飲食サービスや運輸・郵便、建設、情報サービスなど、労働集約的な業種で人手不足感が強い。2018年3月の完全失業率は2.5%と1993年以来の水準で、有効求人倍率は1.59と1974年以来の水準となった(図表-4)。建設技能労働者の需給は、2015年後半には一時的に緩和に向かったものの、その後は逼迫した状況が続いている(図表-5)。上昇を続ける建築コストは、2015年後半から下落に転じたものの、2016年後半から再び上昇し、足元では直近のピークを上回った(図表-6)。
図表-3 日銀短観 雇用人員判断DI/図表-4 完全失業率と有効求人倍率
図表-5 建設技能労働者過不足率(8職種計・全国・季節調整値)/図表-6 建設工事原価指数(東京)
 
1 斎藤太郎 『2018・2019年度経済見通し-17年10-12月期GDP2次速報後改定』、(ニッセイ基礎研究所、Weeklyエコノミスト・レター、2018年3月8日)
 

2.地価動向

2.地価動向

2018 年1 月の公示地価は、全国・全用途で前年比+0.7%、商業地で+1.9%となり、3年連続で上昇した。また住宅地は+0.3%と10年ぶりにプラスに転じた。三大都市圏(東京圏、大阪圏、名古屋圏)と地方四都市(札幌市、仙台市、広島市、福岡市)では全ての用途で前年比プラスとなった。地方圏では、商業地が26年ぶりにプラスとなり、住宅地は下落幅が縮小、全用途は横ばいまで改善した(図表-7)。地価の上昇は地方にも波及しているが、人口が増加している地域ほど地価が上昇する傾向が続いている(図表-8)。地価が上昇した地点の割合は商業地、住宅地の双方で増加した。上昇地点の割合は、住宅地では2007年~2008 年の水準を下回るが、商業地は同時期を上回った(図表-9)。東京23区の地価上昇率を見ると、商業地では地価水準が高く繁華性の高いエリア、住宅地では駅から近く利便性の高いエリアほど上昇率が高い傾向にある(図表-10)。なお個別地点の地価上昇率を見ると、北海道の倶知安(くっちゃん:ニセコ周辺)が商業地で1位、住宅地で1位~3位にランクインするなど、外国人旅行者に人気のリゾート地や商業地の上昇が目立っている(図表-11)。

野村不動産アーバンネットによると、首都圏住宅地価格の変動率(2018年4月1日時点)は前期比+0.2%(年間+0.6%)となった。「横ばい」を示した地点の割合は91.1%と、前回(77.8%)から横ばい傾向が強まっている。
図表-7 公示地価/図表-8 公示地価と人口増減の関係
図表-9 公示地価上昇地点割合の推移(全国)
図表-10 東京23区の地価上昇率の傾向
図表-11 公示地価上昇率上位(全国)

3.住宅市場の動向

3.住宅市場の動向

2018年3月の新設住宅着工戸数は69,616戸(前年比▲8.3%)となり、9ケ月連続で減少した。全体の4割超を占める貸家が、10ケ月連続で減少するなど、落ち込みが続いている。(図表-12)。金融機関は、個人による貸家業向けの新規貸出を抑制しており、2017年第4四半期は前年比▲22.4%となっている(図表-13)。
図表-12 新設住宅着工件数
2017年12月の不動産価格指数は(住宅)は前年比+2.5%と37ヶ月連続で上昇した。地域別では、大阪、名古屋、福岡、札幌など主要都市を擁する地域の住宅価格が大きく上昇している(図表-14)。
図表-13 国内銀行による新規貸出額(前年比)/図表-14 不動産価格指数(住宅総合・2017年12月)
2018年3月の首都圏のマンション新規発売戸数は3,617戸(前年比+6.1%)となり、3ヶ月連続で増加している(図表-15)。東京都区部の契約率は、2016年に好不調の目安とされる70%を下回ったが、2017年には同水準を回復し、2018年も好調を維持している。また東京都下の契約率は、2016年以降70%を下回っているが、2018年は改善傾向にある(図表-16)。東京都区部では1億円以上の高額物件の契約率が高い。また東京都下では郊外の主要駅で駅近のタワーマンションが供給され、7,000万円以上の高価格帯の契約率が上昇した(図表-17)。郊外でも駅近や再開発地域など利便性の高い地点での販売が好調で、都心と郊外の2極化といった単純な構図ではなく、同一エリア内でも好不調が点在するまだら模様の市況となっている。今後は2019年10月に予定される消費税引き上げを前にした駆け込み需要などが注目される。
図表-15 首都圏分譲マンション新規発売戸数/図表-16 東京都の分譲マンション契約率
図表-17 東京都の分譲マンション契約率(価格帯別)
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金融研究部   主任研究員

佐久間 誠 (さくま まこと)

研究・専門分野
不動産市場、金融市場、不動産テック

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