2018年05月07日

なぜ消費は活性化しないのか-活性化を阻む6つの理由

生活研究部 主任研究員   久我 尚子

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■要旨
 
  • アベノミクス開始から6年目に入ったが、依然として個人消費は力強さに欠ける。実質賃金の伸び悩みも大きな要因の1つだが、賃金はじわりと改善傾向を示す一方で、一層低迷が続く消費の状況を見れば、必ずしも「賃金が上がれば消費も増える」わけではなさそうだ。
     
  • 消費が活性化しにくい理由としては、まず、(1)若い世代をはじめ消費者全体で経済的不安が広がっていることがある。現役世代では、若い世代ほど厳しい雇用環境にあり、少子高齢化による社会保障不安もある。高齢者でも年金受給額の引き下げなど制度変更による生活防衛意識の強まりもあるだろう。
     
  • (2)高齢化の進行で世帯当たりの消費額が減る高齢世帯の存在感が増していることも指摘できる。高齢世帯では世帯当たりの消費額が減り、賃金増の影響も受けにくい。高齢世帯の増加に伴い、2025年頃から国内最終家計消費支出は減少に転じる見込みだ。
     
  • さらに、(3)消費社会の成熟化の恩恵を受けて、支出を抑えても質の高い消費生活を送ることができ、それに伴う(4)価値観の変容もある。シェアリングサービスの登場でモノを買わなくてもすむ環境が広がり、高級品への憧れやモノへの欲求が弱まっている。ミニマリストが賞賛される向きもあり、若い世帯では消費性向が低下している。
     
  • (5)消費者の暮らし方が変化する中でニーズの強い領域に商品やサービスの不足感があることも指摘できる。例えば、保育園待機児童問題やインフレ気味の子ども教育関連サービスの状況を見れば、需要と供給のバランスが取れていない領域もある。
     
  • 最後に、(6)統計上の課題をあげたい。総務省「家計調査」は世帯を対象とした家計簿調査だが、共働き世帯の増加などによる家計の個別化で収支を把握しにくい状況もある。また、シェア消費などは従来の枠組みでは捉えにくいだろう。さらに、決済手段の多様化で近年、増えているネット通販の「ケータイ払い」は通信費に紛れやすい。
     
  • 消費を活性化させるには、(1)は政策として現役世代の経済基盤の安定化や社会保障制度の持続性確保などを進めることで緩和できる。(2)~(5)は企業努力で対応できる部分もある。全体としては消費の盛り上がりに欠ける中でも売れている商品もあり、その背景には何があるのか、また、革新的な商品を生み出す土壌作りとして政府や企業は何ができるのか。まだまだ工夫の余地はある。

■目次

1――賃金上げが進めば、消費は増えるのか?
2――消費が活性化しにくい理由
  1|経済不安の強まり
   ~現役世代の厳しい雇用環境や社会保障不安、高齢者の生活防衛意識の強まり
  2|高齢化の進行
   ~世帯当たりの消費額が減り、賃金増の影響を受けにくい高齢世帯の存在感
  3|消費社会の成熟化
   ~商品・サービスの低価格化や高機能化、シェアでお金を使わなくてもすむ
  4|価値観の変容
   ~消費欲求の弱まりとスマート消費で消費性向の低下、使わないことが格好良い?
  5|欲しい商品・サービスがない
   ~子どもの教育などインフレ気味の市場も、見せ方の工夫で売れるものも?
  6|消費統計上の課題
   ~シェア消費やケータイ払いなど、十分に捉えられていない消費も
3――おわりに
  経済基盤の安定化や社会保障制度の持続性確保などの政策、企業努力の余地も
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生活研究部   主任研究員

久我 尚子 (くが なおこ)

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、保険・金融マーケティング

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