2018年05月02日

欧州大手保険グループの地域別の事業展開状況-2017年決算数値等に基づく現状分析-

中村 亮一

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4|Prudential
(1)地域別の業績-2017年の結果-
Prudential は、自国の英国を中心とした欧州での20カ国以上に加えて、米国やアジアの14カ国及びアフリカの4カ国等、40カ国以上で商品提供等を通じた生命保険の事業展開を行っている。

米国子会社のJackson National Groupは、2017年末の認容資産で、生命保険・健康保険グループで第10位となっている。収入保険料や営業利益では米国のウェイトが最も高いが、将来の利益に基づくEEVや新契約価値ベースではアジアの位置付けが最も高いものとなっている。
生命保険事業(Long-Term Business Operation)の地域別内訳(2017年)
(2)地域別の業績-2016年との比較-
2016年との比較では、アジアが2割を超える増収増益で、全体の2桁の増収増益に大きく貢献している。2017年は、英国&欧州での保険料が大幅に進展し、営業利益も8%増加している。

アジアでは、エージェンシーや銀行窓販を通じて、成長する中間所得層向けに保障・貯蓄性商品の販売が好調で、新契約利益、営業利益及び資本形成において、8年連続で2桁成長を遂げている。

英国の営業利益については、2016年に、バルク年金市場からの撤退により、年金からの利益が大幅に減少したことや過去の助言無年金商品の販売実務や関連する補償のレビューを行うコストとして175百万ポンドの準備金設定等を行った影響で、大きく減少したことの反動もあり、大きく増加した。

米国では、変額年金事業の利益の増加を反映したことに加えて、スプレッドは引き続き低下したものの、米国株式市場の上昇に伴い、手数料収入が増加したこと及び為替レートの影響もあり、営業利益が8%増加した。
生命保険事業(Long-Term Business Operation)の地域別内訳(2016年から2017年に向けての増加額と進展率)
 (参考)地域別の営業利益
IFRS営業利益で見た場合の各国別の営業利益の状況は、以下の図表の通りである。

ここ数年、香港、中国、台湾等の中国系市場で高い成長をみせており、シンガポールも高い構成比となっている。これ以外では、インドネシアが高水準かつ高成長を遂げている。
IFRS営業利益の地域別内訳/IFRS営業利益の地域別内訳(アジアの主要国)/
(3)地域別展開に関する方針及びトピック
Prudentialは、保険事業に関して、例えば、以下の地域別展開の見直し等を行っている。

・韓国生命保険会社PCA Life Insuranceの売却(2017年5月)
・米国のブローカー・ディーラーネットワークの売却(2017年8月)
・M&GとPrudential UK & Europe (Prudential UK&E)を統合して、M&G Prudentialを設立(2017年8月)
・ナイジェリアのZenith Lifeの過半数株式の取得(2017年7月)
・英国の年金ポートフォリオの一部のRothesay Lifeへの売却

なお、Prudentialは、過去10年間において、それまでの英国中心から国際展開中心へと急速にシフトさせてきており、EEV株主ファンドベースで、国際部門のシェアは2007年の49%から2017年の72%(その中でもアジアのシェアが26%から44%)へと大幅に増加している。
Prudentialは、こうした戦略をさらに推進していくとしている。
5Aviva
(1)地域別の業績-2017年の結果-
Avivaは、世界の16カ国で事業展開している。

Avivaの保険料、営業利益及び資産の9割程度は欧州からのものである。それ以外は、カナダとアジアが占めている。欧州では、英国(生保)が保険料では25%だが、営業利益では約6割を占めており、それ以外は英国(損保・医療)とフランスの構成比が高く、これらにポーランド、アイルランド、スペイン、イタリアの国々が有意な水準で続いている。

Avivaは、英国、フランス、ポーランド、アイルランド、イタリア、カナダ、シンガポール、Aviva  Investorsを8つの主要市場として位置付けている。なお、英国以外では、カナダが全て損害保険であるが、それ以外の国では生命保険が中心となっている。

また、Avivaは、中国、香港、インド、トルコ、ベトナム、インドネシアの6つを戦略的投資市場として、成長特性を持つ人口の多い国として、主要な現地パートナーと協力して、長期的な成長を目指していく方針を示しているが、アジアのこれらの地域の財務面でのシェアは未だ数%程度である。
保険事業の地域別内訳(2017年)/うち 欧州の主要国別内訳
(2)地域別の業績-2016年との比較-
2016年との比較では、各地域で保険料を順調に進展させている。先に述べた8つの主要市場のうちの6つで二桁の利益成長を遂げた。

生命保険の営業利益は2,882百万ポンドで対前年9%増加した。

英国の生命保険事業が、Friends Lifeの買収(2015年4月)と統合シナジー効果もあり、大きく増加した。長期貯蓄のネットフローが倍増し、バルク年金販売が3倍になり、保障商品の新契約価値も2割増加した。

ポーランドでは、ユニットリンク型商品と保障商品の販売が好調で、利益も2桁進展した。シンガポールでは、貯蓄と保障商品が2桁進展し、新契約価値も3割増加した。

ただし、カナダの営業利益が、自動車と不動産の保険における準備金積増の影響で、▲83%と大きく低迷した。
保険事業の地域別内訳(2016年から2017年に向けての増加額と進展率)/うち 欧州の主要国別内訳(2016年から2017年に向けての増加額と進展率)
(参考)地域別ROEの状況
Avivaは、地域別のROEを開示しているが、各地域で10%を超える高いROEを計上している。
保険事業のROE(資本収益率)の地域別状況
(3)地域別展開に関する方針及びトピック
Avivaは、保険事業に関して、ここ数年で事業展開を行う市場の集中化を図ってきており、市場の数を半減させてきている。会社によれば、2017年までの取組みでこのプロセスは完了しており、これ以上事業展開地域を積極的に削減する方針ではない、としている。最近では、以下の地域別展開の見直し等を行っている。

・Friends Lifeの買収(2015年4月)及びFriends Lifeの事業の英国の生命保険ファンドへの移管
・アイルランドでAchmeaからFriends Firstを買収(2017年)
・フランスのAntariusのSociete Generaleへの売却(2017年4月)
・台湾における合弁事業の売却(2018年1月)
・スペインのジョイントベンチャーUnicorp Vida、Caja EspanaVida及びAviva Vida y Pensionesの売却(2017年9月及び2018年)
・スペインの残されていた生命保険事業及び年金ジョイントベンチャーCajamurcia Vida及びCaja Granada Vidaの株式のBankiaへの売却(2018年)
・イタリアのジョイントベンチャーAvivpop Assicurazioni S.p.A.のBanco BPMへの売却(2018年)
・Friends Provident International Limited(FPIL)のIFGへの売却(2018年)
・ベトナムでVietinBankとの合弁事業の100%所有権を取得

2018年から、主要市場では「mid-single digit(一桁台半ば)」を超える成長を、戦略的投資市場では「long-term growth(長期成長)」を支援し「High growth(高い成長)」を目指すとしている。
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中村 亮一

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