2018年05月02日

金融市場を左右する原油相場~原油価格の見通しと市場への影響

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
  1. 最近の円安ドル高を牽引した米長期金利上昇の背景には、米国経済の良好なファンダメンタルズや財政赤字拡大が背景にあるが、原油価格の上昇も一役買っている点は見逃せない。原油価格上昇による期待インフレ率上昇が米金利を押し上げた。
     
  2. 1月下旬から2月の米金利上昇局面では米株価が急落し、リスク回避的な円高を巻き込みつつ日本株の下落をもたらしたが、今回の米金利上昇局面では米国の株価が持ちこたえている。年初からの金利上昇や米政権による保護主義の動きにもかかわらず、米経済が底堅いことなどが下支えになったためだ。この結果、市場がリスク回避に傾かず、日米金利差の拡大が素直に円安を促し、円安が株高に繋がったと解釈できる。
     
  3. つまり、原油価格の上昇は米金利上昇に繋がるが、その際に米株価が持ちこたえれば円安・日本株高要因に、崩れれば円高・日本株安要因になると考えられる。そして、米金利上昇時の米株価のカギを握るのが、米経済に対する市場の見方ということになる。一方、原油価格の下落は、米金利低下等を通じて円高・日本株安を促す可能性が高い。
     
  4. 今後年末までの原油価格は、基本的に高止まりを続けると予想している(年末68ドルと予想)。OPEC等による減産の継続、需要の拡大、地政学リスクが価格上昇圧力となるが、米シェール増産と保護主義への警戒が上昇を抑制する。この場合、原油価格高止まりが米金利の下地となることで、米経済の加速が米金利上昇に繋がりやすくなる。その際には、米経済に対する安心感が米株安を抑制し、円安・日本株高に繋がる可能性が高い。
     
  5. ただし、最近、原油価格急騰リスクが高まっている点には注意が必要だ。トランプ政権はイランへの制裁復活やベネズエラへの制裁強化の可能性を示唆している。両国の原油生産量が急減する場合には原油価格が急騰する可能性が高いが、原油価格の急騰は世界経済に対する悪影響への懸念を喚起し、円高・株安に繋がりかねない。
原油価格による主な影響(金融市場)
■目次

1.トピック:金融市場を左右する原油相場
  ・原油価格上昇が円安株高の一因に
  ・原油相場の金融市場への影響:整理
  ・原油相場と金融市場への影響:今後の見通し
2.日銀金融政策(4月):物価2%の達成時期を削除
  ・(日銀)現状維持
3.金融市場(4月)の振り返りと当面の予想
  ・10年国債利回り
  ・ドル円レート
  ・ユーロドルレート
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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