2018年04月17日

国保の都道府県化で何が変わるのか(下)-制度改革の歴史から見えてくる論点

保険研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 三原 岳

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■要旨

2018年4月から国民健康保険の運営が市町村単位から都道府県単位に変わった。(上)で見た通り、この背景には、恒常的な赤字財政に苦しむ国民健康保険の財政安定化に加えて、医療費適正化に関する都道府県の役割強化という目的があり、(1)負担と給付の関係の明確化による「見える化」、(2)医療行政の地方分権化――という2点が都道府県化の意義であると論じた。さらに、(中)では2つの意義を踏まえ、都道府県が策定した「運営方針」を比較・分析することを通じて、その対応や課題を考察した。

一方、今回の制度改革には30年に及ぶ長年の経緯があり、国が計3,400億円の追加財政投入を決めた理由などを理解する上で、制度改革のプロセスを考察することは欠かせない。そして、1980年代以降の今回の制度改革に至る経緯を振り返ると、都道府県化が選ばれた根本的な原因、制度が複雑化した理由、都道府県や市町村に求められる今後への対応などが浮き彫りになる。

国民健康保険の都道府県化を取り上げるシリーズ(全3回)の最終回は30年来の歴史を振り返ることで、こうした論点を考察したい。

■目次

1――はじめに~都道府県化の歴史から見える論点~
2――国民健康保険財政の全体像と構造的な問題
3――1980年代以降の都道府県化に向けた歴史
  1|第2臨調の答申から始まった制度改正
  2|三位一体改革での攻防
  3|民主党政権期の議論
  4|2015年成立の医療制度改革法
4――1980年代以降の都道府県化に向けた歴史から分かること
  1|一つの節目としての都道府県化
  2|背景と過程の考察
5――おわりに
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保険研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

三原 岳 (みはら たかし)

研究・専門分野
医療・介護・福祉、政策過程論

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     1995年4月~ 時事通信社
     2011年4月~ 東京財団研究員
     2017年10月~ ニッセイ基礎研究所
     2023年7月から現職

    【加入団体等】
    ・社会政策学会
    ・日本財政学会
    ・日本地方財政学会
    ・自治体学会
    ・日本ケアマネジメント学会

    【講演等】
    ・経団連、経済同友会、日本商工会議所、財政制度等審議会、日本医師会、連合など多数
    ・藤田医科大学を中心とする厚生労働省の市町村人材育成プログラムの講師(2020年度~)

    【主な著書・寄稿など】
    ・『必携自治体職員ハンドブック』公職研(2021年5月、共著)
    ・『地域医療は再生するか』医薬経済社(2020年11月)
    ・『医薬経済』に『現場が望む社会保障制度』を連載中(毎月)
    ・「障害者政策の変容と差別解消法の意義」「合理的配慮の考え方と決定過程」日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク編『トピック別 聴覚障害学生支援ガイド』(2017年3月、共著)
    ・「介護報酬複雑化の過程と問題点」『社会政策』(通巻第20号、2015年7月)ほか多数

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【国保の都道府県化で何が変わるのか(下)-制度改革の歴史から見えてくる論点】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

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