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- ベンチャー企業の成長ステージ~早いステージや研究開発型ベンチャーならではの難しさ~
1――はじめに
他方、レイターステージのように遅いステージになると、一定の売上・利益が出ていて、顧客や従業員等、会社としての基盤がそれなりに出来上がっている。早いステージと比較して、投資してからすぐに倒産してしまうリスクも低くなる。また、販売・開発等のトラックレコードがある分、製品・サービスの評価や、事業計画・収益力の分析は手がけやすくなる。一方で、企業価値は成長している分だけ高くなっているので、一定の株主持分を保有するためにはそれなりの投資金額が必要になる。注目の有望ベンチャー企業であればなおさらで、億円単位の金額を想定する必要がある。また、先に同業の競合他社が資本参加していて入り込めない等、先行者メリットを享受出来ない場合もある。リスクが低くなった分、投資の果実も少なくなる。
上記のように、ステージによって、必要資金、投資リターン、リスク、要求される目利き・経営支援能力、投資効果の実現時期や成功確度が異なってくる。ベンチャー投資を専門にする投資家の中には、得意なステージに特化した投資戦略をとっているプレイヤーもいる。どのステージまでターゲットを広げるのかは、よく考えておきたいポイントだ。
参考として、米国における創業後の企業生存率(図表2)を見ると、創業から1年で約8割、2年で約7割、3年で約6割となっている。創業間もない企業が生き残るのは簡単ではない。もし、早いステージのベンチャー企業もターゲットにするのであれば、投資した後、製品・サービスの開発が計画から遅れて資金も底を突きつつある、という痺れる局面に出くわすことも、十分想定しておきたい。
3――おわりに
日本のベンチャー企業・イノベーションを取り巻く環境は良くなってきた。そのような中、投資の目的や理解が不十分なままで失敗してしまい、「こんなはずじゃなかった。」とベンチャーとの連携をやめてしまう事例が出るのはあまりに惜しい。足もとの良い機運が一時的なブームで終わることなく、多くの企業にとってベンチャーとの連携が当たり前になることを願ってやまない。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
中村 洋介
研究・専門分野
(2018年04月16日「研究員の眼」)
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