コラム
2018年03月26日

日本の通商戦略の立て直し急務~トランプ政権の保護主義の矛先が日本にも向けられた

総合政策研究部 研究理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任   矢嶋 康次

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米中貿易戦争勃発?日本も蚊帳の外ではいられない

トランプ米大統領による中国に焦点を当てた制裁や輸入制限が動き出す。鉄鋼やアルミニウムの輸入制限に続き、中国による知的財産の侵害を理由に通商法301条を発動し、500億ドル相当の同国製品に高関税を課す措置を正式に表明。また中国企業の対米投資も一部制限する。

中国政府もこれに反発し、報復措置を辞さない構えを示している。完全にトランプ政権は今年11月の中間選挙対策モードに突入し強硬姿勢を鮮明にしてきている。米中は報復措置の連鎖に陥る「貿易戦争」の瀬戸際に立っている。
 
ただ今回の米国の動きは日本にとって他人事ではいられない、当事者でもある。

今回の「鉄鋼とアルミニウムの輸入制限措置」でEU、韓国、オーストラリア、アルゼンチン、ブラジル、カナダ、メキシコの7カ国・地域は5月1日まで適用除外とされたが、日本は適用除外を求めていたが発動段階では聞き入れられなかった。

トランプ大統領は『日本の安倍首相らは「こんなに長い間アメリカをうまくだませるなんて信じられない」とほくそ笑んでいる、そんな日々はもう終わりだ』と発言、米国の保護主義の矛先は日本にも向けられたからだ。
 
今後日本は、(1)政府は適用除外を求めてトランプ米政権と再交渉、(2)品目別の除外を米側に働きかけるよう促すだろう。日本から米国向けの鉄鋼・アルミ製品は約20億ドル。主力製品の中には、石油のパイプや鉄道レールなど米国では作ることが難しく日本の製品が使われているものが多く、これを主張するだろう。

今回適用除外になった国・地域を見るとNAFTAやFTAなどの交渉を行っているところが大半だ。つまり米国の戦略は、適用除外の代わりに保護主義的な要求を日本に突きつけてくることになる。

具体的には農業や自動車などでの譲歩や、日米自由貿易協定(FTA)の交渉条件を突きつけてくるに違いない。
(図表)

通商戦略の立て直し:4月開催予定の日米首脳会談が大きな試金石

この現実を見据え、日本は通商戦略の立て直しが急務だ。
 
米国を除く11か国での環太平洋経済連携協定(TPP)の発効などを急ぐ必要があるだろう。また日欧EPAや日中韓FTAなど複数の通商の枠組みを同時に動かし、具体的にそれらを土台に日米2国間の自由貿易交渉に向き合うことも検討せねばなるまい。

トランプ政権誕生から日本は、麻生(副総理)・ペンス(副大統領)による「日米経済対話」で、貿易摩擦問題を議論してきた。現在まで2回開催されたが、うまく活用されているとは言いがたい。

この議論の場も進化させる必要もあろう。

ただこれらの正攻法が今回どれだけ通用するか、かなり多面的な戦略を構築しておく必要がありそうだ。
 
まだ日程は決まっていないが、4月の日米首脳会談が、直近かつ最大のイベントになりそうだ。そこでどんな球を打ち返せるのか、今後の日米貿易摩擦がどの程度深刻なものになっていくのか大きな試金石となる。
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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総合政策研究部   研究理事 チーフエコノミスト・経済研究部 兼任

矢嶋 康次 (やじま やすひで)

研究・専門分野
金融、日本経済

(2018年03月26日「研究員の眼」)

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