2018年03月19日

貿易統計18年2月-春節の影響で貿易収支(季節調整値)が2年4ヵ月ぶりの赤字に

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.貿易収支(季節調整値)が赤字に転落

財務省が3月19日に公表した貿易統計によると、18年2月の貿易収支は34億円と小幅ながら2ヵ月ぶりの黒字となり、事前の市場予想(QUICK集計:▲996億円、当社予想は3,050億円)を上回る結果となった。輸出が前年比1.8%(1月:同12.3%)と前月から伸びが大きく鈍化する一方、輸入が前年比16.5%(1月:同7.7%)と伸びを高めたため、貿易収支は前年に比べ▲8,011億円の悪化となった。

輸出の内訳を数量、価格に分けてみると、輸出数量が前年比▲2.1%(1月:同9.3%)、輸出価格が前年比4.0%(1月:同2.7%)、輸入の内訳は、輸入数量が前年比11.7%(1月:同2.6%)、輸入価格が前年比4.4%(1月:同5.0%)であった。
貿易収支の推移/貿易収支(季節調整値)の推移
輸出金額の要因分解/輸入金額の要因分解
季節調整済の貿易収支は▲2,015億円(1月は3,523億円)の赤字となった。輸出が前月比▲1.0%(1月:同▲1.0%)と2ヵ月連続で減少する一方、輸入が前月比7.5%(1月:同▲5.2%)の高い伸びとなった。
原油価格(ドバイと入着ベース)の推移 貿易収支(季節調整値)は15年10月以来2年4ヵ月ぶりの赤字となったが、2月は中華圏の春節の影響で輸出が実勢よりも弱めの結果となったこと、既往の原油高の影響で輸入が高い伸びとなったことが影響している。1、2月の貿易収支(季節調整値)を平均すれば黒字を維持しており、貿易収支が基調として赤字に転落したわけではない。

2月の通関(入着)ベースの原油価格は1バレル=68.4ドル(当研究所による試算値)となり、1月の64.6ドルから大幅に上昇したが、足もとのドバイ原油は60ドル台前半となっており、通関ベースの原油価格も3月以降は低下することが見込まれる。貿易収支(季節調整値)は3月には再び黒字となる可能性が高いだろう。

2.2月の輸出は春節の影響で大きく下振れ

2月の輸出数量指数を地域別に見ると、米国向けが前年比5.1%(1月:同4.2%)、EU向けが前年比▲0.9%(1月:同9.7%)、アジア向けが前年比▲8.5%(1月:同9.7%)となった。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移 季節調整値(当研究所による試算値)では、米国向けが前月比5.7%(1月:同▲4.6%)、EU向けが前月比▲0.6%(1月:同0.8%)、アジア向けが前月比▲4.9%(1月:同▲0.6%)、全体では前月比▲1.2%(1月:▲1.6%)となった。

18年1、2月の輸出数量指数(季節調整値)を17年10-12月期と比べると、EU向けは1.8%高いが、米国向けは▲1.3%、アジア向けは▲2.5%、全体では▲0.7%低い水準となっている。

輸出は1、2月を均しても弱めの動きとなっているが、2月の輸出金額を上旬、中旬、下旬に分けてみると、春節の影響を受けた上旬の前年比▲2.7%、中旬の同▲7.1%から春節明けの下旬には同16.3%の急増となっている。3月の輸出は2月の急速な落ち込みの反動で高い伸びとなり、1-3月期を通してみれば底堅さが確認されることになろう。
 
 

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斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2018年03月19日「経済・金融フラッシュ」)

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