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テロ保険の浸透-テロのリスクに対して保険の備えは進んでいるか?
保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員 篠原 拓也
4――テロ保険の動向
6 “2016 Terrorism Risk Insurance Report”(Marsh, Jul. 2016)による。同資料では、加入率として、2015年の財産保険契約に組み込まれているTRIPRAの補償に関するMarsh社の顧客のデータ(2,051社)がまとめられている。
テロ保険は、なぜ加入率が高いのか。その理由として、保険料が少額であることが挙げられる。テロ保険は、一般に企業保険の補償の一部として組み込まれる。テロ損害補償の保険料が契約全体の保険料に占める割合は2.6%と低い。企業保険の種目別に見ると、割合が一番高い飛行機に関する補償でも7.1%。ボイラー・機械の補償では0.7%、海上船舶の補償や製造物責任補償は、1.1%に過ぎない。
さらに、テロリスク補償分の保険料を明示的に徴収せずに、その補償を行うケース(0ドル契約)も23%ある。種目別には、内陸の湖沼河川船舶の補償では74%ものケースで保険料を徴収していない。保険料がないか、もしくは少額であることが、テロ保険の加入率を高めている要因の1つと考えられる。
7 図表7の元資料(連邦保険局の報告書)には、A.M.Best社のデータが掲載されている。同データは、同社に報告が寄せられた情報のみを対象としている。このため、本来の収入保険料よりも少ない金額が掲載されているものとみられる。
5――おわりに (私見)
今後、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催をはじめ、2019年のラグビーワールドカップ開催、2025年の大阪万博誘致など、大規模な国際的イベントの開催や誘致が計画されている。ソフトターゲットを対象としたテロのリスクは高まる恐れがある。テロ損害のリスク軽減策の1つとして、テロ保険への注目度が上昇することが考えられる。
今後も、テロの発生と、テロ保険での対応の動向について、引き続き、注視する必要があろう。
保険研究部 主席研究員 兼 気候変動リサーチセンター チーフ気候変動アナリスト 兼 ヘルスケアリサーチセンター 主席研究員
篠原 拓也 (しのはら たくや)
研究・専門分野
保険商品・計理、共済計理人・コンサルティング業務
03-3512-1823
- 【職歴】
1992年 日本生命保険相互会社入社
2014年 ニッセイ基礎研究所へ
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
(2018年03月13日「保険・年金フォーカス」)
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