2018年03月08日

2018・2019年度経済見通し-17年10-12月期GDP2次速報後改定

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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(企業部門主導の成長が続くが、2018年度以降は成長率が低下)
先行きの日本経済は、海外経済の回復に伴う輸出の増加、高水準の企業収益を背景とした設備投資の回復が続くことが見込まれる一方、実質所得の低迷が続く家計部門は消費、住宅投資ともに低調に推移する公算が大きい。当面は企業部門主導の成長が続くことが予想される。
実質雇用者報酬の予測 2018年度は春闘賃上げ率が3年ぶりに前年を上回ることを反映し、名目賃金の伸びは2017年度よりも高まるが、物価上昇ペースの加速によりその効果は減殺される。2018年度の雇用者報酬は名目では前年比2.6%(2017年度の見込み値は前年比2.0%)の高い伸びとなるが、実質では前年比1.7%にとどまるだろう。さらに、年金給付額の抑制などから家計の実質可処分所得はゼロ%の低い伸びとなることが予想される。このため、消費が景気の牽引役となることは引き続き期待できない。

また、人件費上昇に伴うコスト増などから企業収益の伸びが鈍化することに伴い設備投資が減速すること、住宅投資、公的固定資本形成が減少に転じることから、2018年度の成長率は2017年度から低下することが予想される。
2019年度は10月に消費税率引き上げ(8%→10%)が予定されているが、前回(2014年度:5%→8%)よりも税率の引き上げ幅が小さく、飲食料品(酒類と外食を除く)及び新聞に軽減税率の導入が予定されていることから、成長率、物価への影響は前回よりも小さくなるだろう。また、税率引き上げは2019年度下期からとなるため、年度ベースの影響は2019年度、2020年度ともに1%分(軽減税率導入を考慮すると0.75%分)となる。さらに、消費増税前後には駆け込み需要とその反動減が発生するが、年度途中での引き上げとなるため、駆け込み需要とその反動減は2019年度内でほぼ相殺されることが想定される。

2014年度の実質GDP成長率は消費税率引き上げによる悪影響を主因として▲0.3%のマイナス成長となった。2019年度は消費税率引き上げの影響が前回よりも小さいことに加え、2020年の東京オリンピック・パラリンピック開催に伴う押し上げ効果も期待されることから、経済成長率が大きく落ち込むことは避けられるだろう。
実質GDP成長率の推移(四半期)/実質GDP成長率の推移(年度)
(物価の見通し)
消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は、2017年11月から2018年1月まで3ヵ月連続で前年比0.9%となった。エネルギー価格の上昇率がやや鈍化する一方、日銀が基調的な物価変動を把握するために重視している「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」(いわゆるコアコアCPI)が2018年1月には前年比0.4%となり、基調的な物価にも改善の兆しがみられる。全国の先行指標となる東京都区部の2月中旬速報値が前年比0.9%と前月から上昇率が0.2ポイント拡大したことを踏まえれば、2月の全国コアCPI上昇率は1%に達する可能性がある。
消費者物価(生鮮食品を除く総合)の予測 ただし、2017年度末から2018年度初め頃にかけてエネルギー価格の上昇率鈍化が見込まれること、2月上旬以降の大幅な円高が輸入物価の下落を通じて先行きの物価下押し圧力となることから、コアCPI上昇率の1%台が定着するのは2018年後半までずれこむだろう。

景気回復持続に伴う需給バランスの改善は引き続き物価の押し上げ要因となるものの、企業の価格改定に直結する個人消費の回復が緩やかにとどまること、賃金上昇率がベースアップでゼロ%台にとどまる中ではサービス価格の上昇圧力も限られることなどから、2%に向けて上昇ペースがさらに加速する可能性は低いだろう。

コアCPI上昇率は2017年度が前年比0.7%、2018年度が同1.0%、2019年度が同1.6%(1.1%)と予想する(括弧内は消費税率引き上げの影響を除くベース)。
日本経済の見通し(2017年10-12月期2次QE(3/8発表)反映後)
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

(2018年03月08日「Weekly エコノミスト・レター」)

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