2018年03月07日

【豪州GDP】10-12月期は前年同期比0.4%増~民間消費が堅調に推移~

経済研究部 研究員   神戸 雄堂

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3月7日、オーストラリア統計局(ABS)は、2017年10-12月期のGDP統計を公表した。10-12月期の実質GDP成長率は前期比0.4%増(季節調整済系列)と、1991年から続いている景気拡大の世界最長記録1をさらに更新した。また、2017年通年の成長率は前年比2.3%増(原系列)と、1992年から26年連続のプラス成長となった。
 
1 106四半期連続でリセッション(2四半期以上連続のマイナス成長)を回避しての景気拡大となった。

1.四半期GDP概況(需要側):消費が内需を牽引

需要項目別に見ると、内需は民間固定資本形成が落ち込む中、消費が牽引役となった。外需の成長率寄与度は-0.5%ポイントであった(図表1)。
(図表1)【需要項目別】実質GDP成長率(季節調整済系列)の推移 GDPの60%近くを占める民間消費は前期比1.0%増と前期の同0.5%増から加速した。前回(2017年12月)公表のGDP統計では、7-9月期の民間消費はリーマンショック以降、最も低調な結果となったが、今回上方修正され、依然として堅調に推移していることがうかがえる。

政府消費も、同1.7%増と前期の同0.2%増から加速した。特に、連邦政府の支出が同3.3%増と高い伸びとなった。

好調な結果となった消費に比べて、総固定資本形成は前期比1.2%減と前期の同2.4%増から悪化した。公的固定資本形成は同2.9%増と前期(同7.0%減)から改善したものの、民間部門の悪化(同2.2%減、前期:同5.1%増)が響いた。民間部門の内訳は、外国人投資家に対する増税と融資規制の強化の余波で住宅投資が同1.3%減(前期:同1.7%減)、民間設備投資が前期(同10.0%増)の反動から同2.7%減と落ち込んだ。

純輸出は輸出が同1.8%減、輸入が同0.5%増となった結果、成長率寄与度が-0.5%ポイント(前期:同 -0.3%ポイント)と成長率を押し下げた。通関ベースで見ると、10-12月は輸出が前期比でほぼ横ばいであったが、輸入が増加したことで、貿易収支が小幅の赤字に転じた。輸入は、企業の生産活動の回復を背景に中間財の増加が押し上げた。

2.四半期GDP概況(供給側):サービス業が牽引

供給項目別に見ると、サービス業が牽引役となった(図表2)。
(図表2)【供給項目別】実質GDP成長率(季節調整済系列)の推移 GDPの約7割を占めるサービス業は、前期比0.7%増と前期の同0.6%増からやや加速し、牽引役となった。サービス業の内訳は、小売業が同0.3%増(前期:同0.2%増)、情報通信業が同2.9%増(前期:同1.2%減)、不動産・物品賃貸が同2.5%増(前期:同2.2%減)、政府行政・国防が同1.2%増(前期:同0.5%増)、娯楽が同2.2%増(前期:同1.1%増)と改善した一方で、卸売業が同0.2%減(前期:同0.2%増)、宿泊・飲食業が同1.0%増(前期:同1.2%増)、運輸・郵便・倉庫業が同0.8%減(前期:同0.6%増)、金融・保険業が同0.1%増(前期:同0.8%増)、専門・科学・技術サービス業が同0.3%増(前期:同0.9%増)、行政サービスが同0.6%減(前期:同1.0%増)、医療・福祉業が同1.9%増(前期:同2.1%増)、その他サービス業が同1.9%増(前期:同2.5%増)と悪化した。教育・学習支援業は同0.5%増(前期:同0.5%増)と横ばいであった。

鉱工業は、前期比0.1%増と増加したものの、前期(同0.8%増)から伸びが鈍化した。鉱工業の内訳は、鉱業が同1.3%増(前期:同1.1%減)と改善した一方で、製造業が同1.0%減(前期:同1.7%増)、電気・ガス・水道業が同0.8%減(前期:同1.8%増)、建設業が同0.3%増(前期:同1.3%増)と悪化した。

農林水産業は、前期比2.7%減と前期(同5.9%減)から減少幅が縮小したものの、低迷が続いている。農林水産業の内訳は、農業が同3.1%減(前期:同6.5%減)、林業・水産業が同0.1%減(前期:同2.6%減)と、ともに減少幅は縮小した。

3.先行きのポイント

オーストラリア経済は、民間消費を中心に堅調に推移するだろう。民間消費は、足元では鈍い賃金上昇と家計における住宅ローン債務の積み上がりによる家計の圧迫が重石となるが、今後は労働需給逼迫による緩やかな賃金上昇を背景に、家計の購買力が徐々に改善されることから引き続き堅調な推移が見込まれる。また、緩やかなインフレと緩和的な金融環境が継続することが、民間消費に追い風となるだろう。
 
労働市場では、2017年以降、フルタイム労働者を中心に就業者数が増加し、失業率の低下傾向が続いている(図表3)。賃金上昇率は労働需給の逼迫や7月の最低賃金引き上げなどの材料がありながらも依然として鈍い。しかし、足元では上向きの兆しが見られる(図表4)。実質賃金上昇率についても2017年初はマイナスであったが、低インフレもあいまってプラスに転じた。今後も労働需給の逼迫を背景に、雇用環境は緩やかながら改善していくと予想される。
(図表3)失業率と就業者数の推移/(図表4)インフレ率と賃金上昇率の推移
(図表5)インフレ率・政策金利・為替レートの推移 10-12月期のインフレ率は前年同期比1.9%と前期の1.8%を上回ったものの、依然としてインフレ目標下限の2.0%を下回っている(図表5)。オーストラリア連邦準備銀行(NAB)は、昨日(3月6日)の金融政策決定会合において、市場の予想通り、政策金利を過去最低水準の1.5%に据え置くことを決定した。同行は、鈍い賃金の伸びや小売業の競争激化等を理由に、インフレは低い水準で推移する可能性が高いという見解を示しており、当面政策金利は据え置かれる見込みである。今後は、緩やかな賃金上昇に加えて、米国の利上げに伴う米豪金利差の拡大によって為替が豪ドル安方向に進む可能性もあり、その場合は緩やかにインフレ率が上昇していくだろう。

また、5月に発表される18-19年度予算案2で検討されている中産階級向けの所得税減税の行方が注目される。当初、連邦政府は18-19年度予算案において法人税減税を進めていたが3、野党の反対によりその実現が難しくなったことから、妥協案として中産階級向けの所得税減税を検討していると見られる。2020/21年度までの財政黒字化達成を目指しているため、減税規模が制限されることも考えられるが、もしこの所得税減税が実現すれば、可処分所得の増加を通じて民間消費の押上げに寄与すると期待される。
(図表6)鉄鉱石価格と企業景況感指数の推移 企業の設備投資は、10-12月期こそ前期比で減少したが、これは高水準だった前期からの反動によるものであり、2014年半ばから続く設備投資の停滞は底打ちしたと見られる。企業の景況感は、コモディティ価格の上昇によって回復しており、企業景況感指数が金融危機以来の最高水準に達した17年7月以降も堅調に推移している(図表6)。企業の営業利益についても、10-12月は前年同期比の伸び率が前期から低下したものの、拡大が続いている。

主力輸出品である鉄鉱石の価格は、2017年初から一進一退の展開が続いているが、中国のインフラ投資需要の拡大を背景に、需要は引き続き底堅く推移しており、これ以上の底割れは考えにくい。鉄鉱石価格が堅調に推移する限り、今後も関連企業の業績改善を通じた民間投資の拡大に寄与するだろう。
(図表7)住宅ローン承認額と家計債務の推移 一方で、先行きの懸念材料としては、家計債務の拡大が挙げられる。家計債務は、住宅ローン残高の増加を背景に、足元では対可処分所得比200%近い水準にまで達している(図表7)。その結果、消費マインドにも悪影響を与えていると考えられる。住宅ローン残高の増加の一因は、2011年以降の金融緩和であるが、今後も緩和的な金融政策が継続することを踏まえると、住宅ローンの承認額は高止まりする公算が大きい。そのため、家計債務の拡大は続くと予想される。賃金の上昇によって、家計債務が消費マインドに与える影響も徐々に改善するだろうが、当面は家計債務が民間消費の重石となるだろう。
 
なお、米国のトランプ大統領が表明した鉄鋼とアルミニウムへの輸入関税賦課が実施された場合、対米鉄鋼・アルミ輸出への直接的な悪影響に加え、他国からだぶついた鉄鋼・アルミが流入することで国内鉄鋼・アルミ産業が打撃を受けることも考えられ、今後の動向が注目される。
 
 
2 オーストラリアの会計年度は7月から翌年6月まで。
3 法人税率を現行の27.5%~30%から一律25%まで引き下げる減税案。
 
 

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経済研究部   研究員

神戸 雄堂 (かんべ ゆうどう)

研究・専門分野
財政

(2018年03月07日「経済・金融フラッシュ」)

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