コラム
2018年03月07日

リスク・コントロール型ファンドにご注意を~2018年2月の投信動向~

金融研究部 主任研究員 前山 裕亮

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内外株式に大規模な資金流入

2018年2月の国内公募追加型投信(ETFを除く)の推計資金流出入を見ると、国内株式、外国株式、バランス型への資金流入が顕著であった【図表1】。流入金額は、内外株式が共に3,000億円を超え、バランス型が1,500億円程度であった。
【図表1】 2018年2月の国内公募追加型投信の推計資金流出入
外国株式は、1月の資金流入は7,000億円に迫っており、1月と比べると2月の資金流入は小規模であった。ただ、1月は新設ファンドへの資金流入が3,000億円程度あり、その一方で2月は外国株式ファンドの大型設定が無かった。新設ファンドの影響を控除すると、1月と2月で流入金額は大きく変らない水準である。そのため、2月は世界的に株式が下落したが、それでも外国株式への投資意欲は1月と同様に高かったといえるだろう。外国株式の中では、引き続きテクノロジー系のテーマ株ファンドの人気が高かった【図表2:青太字】。
【図表2】 2018年2月の推計純流入ランキング

国内株式への資金流入は先高期待のあらわれか

国内株式については、1月と同規模の資金流入であったが、資金流入ファンドの傾向が1月とやや異なっていた。1月は、約3,000億円の資金流入のうち1,300億円以上が中小型株アクティブ・ファンドであった。2月も中小型株アクティブ・ファンドへ資金流入があったが、800億円程度と1月と比べるとやや落ち着いた様子である。その一方で2月は、大型株ファンドへの資金流入が2,000億円に迫り、1月(約1,000億円)の倍であった。大型株ファンドの中でも、特に日経平均株価などに連動するパッシブ・ファンドへの資金流入が目立った【図表2:赤字】。
 
2月の国内株式の下落は月単位で見ると昨年8月以来、半年ぶりであった。流入先が先月までの小型株から大型株へ移ったことを踏まえると、2月の資金流入は市場全体の反発を狙った逆張り投資の意味合いが強かったといえるだろう。国内株式のブル型ファンドである「ブル3倍日本株ポートフォリオⅣ」にも、100億円を超える資金流入があったことからもそのことがうかがえる【図表2】。2月の国内株式の下落は一時的な調整で、再び上昇に転じると考えて行動した投資家が多かったようだ。

2月は厳しい運用環境

2月にパフォーマンスが良好であったファンドを見ると、全て内外株式ファンドであった【図表3】。世界的に株式が下落する中でも、市場に逆行して上昇した銘柄や地域に投資していた株式ファンドのパフォーマンスが相対的に良好であった。また、1月末に1ドル108円後半であったが2月末に107円前半になるなど、2月は1%以上、円高が進んだ。そのため、為替ヘッジをしているファンドが相対的に高パフォーマンスであった【図表3:赤字】。ただ、空売りなどを活用したベア型のファンドを除くと、高パフォーマンスのファンドでも2月の収益率は1~3%程度であり、2月は投資信託にとって厳しい運用環境であったことが分かる。
【図表3】 2018年2月の高パフォーマンス・ランキング

昨年9月からの累積収益率がマイナスになったリスク・コントロール型ファンドも

リスクを一定以内にコントロールしているバランス型ファンド(以後、リスク・コントロール型ファンド)に、投資家の人気が集まっている。足元の2月も、バランス型ファンドの約1,500億円の資金流入のうち、400億円以上がリスク・コントロール型ファンドへの資金流入であった。
 
リスク・コントロール型ファンドの2月のパフォーマンスがどうだったか確認しよう。厳しい運用環境であった2月単月のパフォーマンス(縦軸)のみでは評価しにくいため、株式などのリスク性資産が総じて好調であった昨年9月から1月のパフォーマンス(横軸)と合わせてみていく【図表4】。
 
リスク・コントロール型ファンドのパフォーマンスの分布から、昨年9月から1月まで高パフォーマンスのファンドほど、2月のパフォーマンスが悪い傾向があったことが分かる。右下に分布しているのは、株式などの価格変動の大きい資産を多く組入れている高リスクのファンドといえる。逆に左上に分布しているのは、短期金融資産(現金同等資産)をある程度組入れている、もしくは為替ヘッジ付の先進国債券のような価格変動が少ない資産を中心に運用している低リスクのファンドといえる。ただ、低リスクのファンドには半年の収益率がマイナスになっているものがあった【図表4:×印】。
【図表4】 リスク・コントロール型ファンドのパフォーマンスの分布
半年の収益率がマイナスになったリスク・コントロール型ファンドが低リスクのものばかりであった要因は、2つ考えられる。まず、運用環境である。分析期間では、米国を中心に先進国の長期金利は上昇(債券価格は下落)傾向にあり、主な投資先の一つである先進国債券には逆風が吹いていた。
 
運用環境に加えて、コストの影響も考えられる。リスク・コントロール型ファンドの信託報酬は、多くが年率1%を超えており(中央値で1.34%)、株式のアクティブ・ファンド並みの高水準となっているためである。その一方で、短期金融資産は無論、為替ヘッジ付の先進国債券も低金利である上にヘッジコスト負担もあるため、それらを中心に運用している低リスク・ファンドは株式ファンドのような高い運用収益が期待できない。ゆえに、低リスクのファンドはコスト負けした可能性もあるだろう。
 
当然、半年といった短い期間のパフォーマンスでは、ファンドの実力を十分に評価出来ない。ただ、低リスクのファンドは、預金代替や国内債券代替を求める投資家に人気になっているが、コスト負担が重たく、コストで収益が継続的に圧迫される点は留意した方がよいだろう。
 
 

(ご注意)当資料のデータは信頼ある情報源から入手、加工したものですが、その正確性と完全性を保証するものではありません。当資料の内容について、将来見解を変更することもあります。当資料は情報提供が目的であり、投資信託の勧誘するものではありません。
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金融研究部   主任研究員

前山 裕亮 (まえやま ゆうすけ)

研究・専門分野
株式市場・投資信託・資産運用全般

経歴
  • 【職歴】
    2008年 大和総研入社
    2009年 大和証券キャピタル・マーケッツ(現大和証券)
    2012年 イボットソン・アソシエイツ・ジャパン
    2014年 ニッセイ基礎研究所 金融研究部
    2022年7月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会検定会員
     ・投資信託協会「すべての人に世界の成長を届ける研究会」 客員研究員(2020・2021年度)

(2018年03月07日「研究員の眼」)

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