2018年03月06日

大阪オフィス市場の現況と見通し(2018年)

金融研究部 主任研究員 佐久間 誠

文字サイズ

4. 大阪オフィス市場のエリア別動向

2017年は全地区で空室率が1%以上低下した。特に心斎橋・難波地区では、2016年末の6.90%から2017年末の3.65%へと大幅に改善した。同地区では2015年から自社ビルへの移転に伴う解約などの影響で空室率は上昇したが、2016年半ばからは空室率低下が継続している(図表-10左図)。

募集賃料は、梅田地区の上昇に続いて、淀屋橋・本町地区や船場地区でも2017年初から上昇に転じている。一方、その他の地区(南森町地区、新大阪地区、心斎橋・難波地区)では、まだ募集賃料が底打ちしたと言える状況ではなく、エリア間の格差が拡大している(図表-10右図)。
図表-10 大阪ビジネス地区の地区別空室率・募集賃料の推移(月次)
2017年末時点で最も賃貸可能面積が集積しているのは、梅田地区(34.6%)で、次いで淀屋橋・本町地区(31.0%)、船場地区(15.0%)、新大阪地区(9.7%)、南森町地区(5.1%)、心斎橋・難波地区(4.6%)の順となっている(図表-11)。

2017年は中之島フェスティバルタワー・ウェストの竣工により、梅田地区で賃貸可能面積が2.1万坪増加した。一方で、賃貸面積は淀屋橋・本町地区(滅失などにより減少)以外の全地区で増加しており、特に梅田地区が大きく増加した(3.4万坪)。その結果、空室面積は、梅田地区の1.3万坪減少、淀屋橋・本町地区の1.0万坪の減少等、全ての地区で減少した(図表-12)。
図表-11 大阪ビジネス地区の地区別オフィス面積構成比(2017年)/図表-12 大阪ビジネス地区の地区別オフィス需給面積増分(2017年)

5. 大阪オフィス市場における新規供給・人口見通し

5. 大阪オフィス市場における新規供給・人口見通し

2017年は中之島フェスティバルタワー・ウェストが竣工したが、2013年のグランフロント大阪とダイビルの竣工以降、新規供給は限定的である。2018年になんばSkyO(なんばスカイオ)、2020年にオービック御堂筋ビルが計画されているが、その後の大規模ビルの供給は2022年の梅田1丁目1番地計画(大阪神ビルディング、新阪急ビル建替計画)まで予定されておらず、低水準での供給が続く見込みである6(図表-13)。

国勢調査によると、大阪市の2015年の生産年齢人口(15~64歳人口)は168.3万人と、2010年から5. 2万人の減少となった。これは、国立社会保障・人口問題研究所の予測(8.6万人減少)を上振れる結果である。また大阪市の推計によれば、2015年から2017年にかけて生産年齢人口が7千人増加するなど、少子高齢化による生産年齢人口の減少は今のところ限定的だ(図表-14)。

この要因の一つが、2000年代以降に顕著となった大阪市への転入超過数の増加である7。住民基本台帳人口移動報告によると、2017年の大阪市の転入超過数は+10,691人と、他の主要都市と比較しても多くの人口を引き寄せていることがわかる(図表-15)。

ただし、大阪圏(大阪府,兵庫県,京都府,奈良県)の転入超過数は▲8,825人と流出が続いている。大阪圏では緩やかに地盤沈下か進んでいるものの、大阪市では人口流入が続いており、人口が中心地に一極集中する傾向が続いていることがわかる(図表-16)。
図表-13 大阪のオフィスビル新規供給見通し/図表-14 大阪市の年齢3区分別人口の現況と見通し
図表-15 主要都市の転入超過数/図表-16 大阪圏、大阪府、大阪市の転入超過数
 
6 時期は未定だが、うめきた2期地区の再開発や梅田3丁目計画(大阪中央郵便局跡地開発)などで新規供給がある予定である。
7 2010年頃までは大阪市からの転出者減少による影響も大きかったが、15年以降は転入者数が高水準で推移した影響が大きい。
 

6. 大阪オフィス市場の賃料見通し

6. 大阪オフィス市場の賃料見通し

大阪における今後のオフィス供給や人口流入、経済予測などに基づくオフィス需給の見通しから、2024年までの大阪のオフィス賃料を予測した8

大阪のオフィス賃料は需要の底堅さと、需要に対する供給の少なさから、当面、上昇が続くと予想される。標準シナリオによると、オフィス賃料は、2021年のピークまで2017年下期比+10.4%の上昇となる見込みだ。2022年には新規供給の影響などから賃料は反落し、2024年には2017年下期比+0.1%まで下落する見込みである。楽観シナリオでは、2021年の賃料のピークまでの上昇率は同+17.8%、2024年の賃料水準は同+8.7%となった。また悲観シナリオでは、2020年の賃料のピークまでの上昇率は+3.1%、2024年の賃料水準は同▲10.0%となった(図表-17)。

このように、大阪のオフィス賃料はファンドバブル期のピークを2018年に上回り、その後も上昇を維持する見込みだ。東京都心部Aクラスビルの賃料は、ファンドバブル期のピークに達することなく、2018年後半から下落に転じると予想されたのと、対照的な結果である9。両都市の見通しの違いは、ファンドバブル期に東京のAクラスビル賃料が急上昇したことも一因だが、主因は今後の新規供給見通しの差である。東京では2018年から大量供給が控えているのに対して、大阪では空室率が過去最低水準に達しているにもかかわらず、新規供給が低水準で推移する見込みである。大阪のオフィス市場は、長期にわたる景気拡大に後押しされた堅調なオフィス需要に加え、抑制された新規供給に下支えされ、今後も底堅く推移することが予想される。
図表-17 大阪オフィス賃料見通し
 
8 経済見通しは、ニッセイ基礎研究所経済研究部「中期経済見通し(2017~2027年度)」(2017.10.13)、斎藤太郎「2017~2019年度経済見通し-17年7-9月期GDP2次速報後改定」(2017.12.8)などを基に設定。
9 佐久間誠「東京都心部Aクラスビルのオフィス市況見通し(2018年)-2018年~2024年のオフィス賃料・空室率」(2018.2.8)
 
 

(ご注意)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。
Xでシェアする Facebookでシェアする

金融研究部   主任研究員

佐久間 誠 (さくま まこと)

研究・専門分野
不動産市場、金融市場、不動産テック

(2018年03月06日「不動産投資レポート」)

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【大阪オフィス市場の現況と見通し(2018年)】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

大阪オフィス市場の現況と見通し(2018年)のレポート Topへ