2018年03月02日

【1月米個人所得・消費支出】可処分所得(前月比)は減税の効果もあり高い伸びも、消費者支出は前月から伸びが鈍化

経済研究部 主任研究員 窪谷 浩

このレポートの関連カテゴリ

文字サイズ

1.結果の概要:個人所得は市場予想を上回るも、個人消費は市場予想に一致

3月1日、米商務省の経済分析局(BEA)は1月の個人所得・消費支出統計を公表した。個人所得(名目値)は前月比+0.4%(前月値:+0.4%)となり、前月に一致、市場予想(Bloomberg集計の中央値、以下同様)の+0.3%は上回った。個人消費支出(名目値)は前月比+0.2%(前月値:+0.4%)と前月から伸びが鈍化する一方、市場予想(+0.2%)には一致した(図表1)。価格変動の影響を除いた実質個人消費支出は前月比▲0.1%(前月改定値:+0.2%)と、こちらは+0.3%から下方修正された前月をさらに下回った一方、市場予想(▲0.1%)には一致した(図表5)。貯蓄率1は3.2%(前月:2.5%)と前月から上昇した。

価格指数は、総合指数が前月比+0.4%(前月:+0.1%)と前月から伸びが加速、市場予想(+0.4%)に一致した。また、変動の大きい食料品・エネルギーを除いたコア指数は、前月比+0.3%(前月値:+0.2%)と、こちらも前月から伸びが加速、市場予想(+0.3%)には一致した(図表6)。前年同月比では、総合指数が+1.7%(前月値:+1.7%)と前月、市場予想(+1.7%)に一致した。コア指数は+1.5%(前月値:+1.5%)と、こちらも前月、市場予想(+1.5%)に一致した(図表7)。
 
1 可処分所得に対する貯蓄(可処分所得-個人支出)の比率。

2.結果の評価:可処分所得の高い伸びにも係わらず、消費の伸びは鈍化

(図表1)個人所得・消費支出、貯蓄率 1月の名目個人消費(前月比)は、好調な年末商戦の反動もあって伸びが鈍化した前月から、さらに自動車販売の減少などもあって2ヵ月連続の鈍化となった(図表1)。

一方、所得対比では消費の伸びが冴えない一方、1月は今年から実施された減税の効果によって可処分所得が大幅な増加となったこともあって、貯蓄率は17年12月に05年9月以来の水準に低下した後、1月は、17年8月以来の水準に回復するなど、消費は余力を残す状況となっている。

一方、物価は前月比では総合指数、コア指数ともに前月から伸びが加速しており、物価上昇圧力が高まっているものの、前年同月比では物価目標となる2%の水準を下回っているほか、総合指数は3ヵ月連続、コア指数は4ヵ月連続で横這いの水準となっており、安定した状況が続いている。

3.所得動向:減税の効果により、可処分所得の伸びが大幅に加速

個人所得の内訳をみると賃金・給与が前月比+0.5%(前月:+0.4%)と前月から小幅ながら伸びが加速した一方、利息・配当収入は▲0.4%(前月:+0.7%)と、こちらは高い伸びとなった前月の反動もあって17年6月以来のマイナスとなった(図表2)。また、移転所得は+1.3%(前月:+0.2%)と前月から大幅に伸びが加速した。

個人所得から税負担などを除いた可処分所得(前月比)は+0.9%(前月:+0.4%)と、17年1月以来の高い伸びとなった(図表3)。これは税負担が▲3.3%(前月:+0.5%)と、減税に伴い大幅に軽減されたことが大きい。一方、価格変動の影響を除いた実質ベースでは前月比+0.6%(前月:+0.2%)と、15年4月以来の伸びとなった。
(図表2)名目個人所得(前月比寄与度)/(図表3)可処分所得(名目、実質)

4.消費動向:自動車関連消費が減少

名目個人消費(前月比)は、財消費が+0.1%(前月:▲0.1%)と前月から小幅ながらプラスに転じた一方、サービス消費は+0.3%(前月:+0.6%)と前月から伸びが鈍化した(図表4)。

財消費では、非耐久財が+1.0%(前月:+▲0.9%)と前月からプラスに転じた。ガソリン・エネルギーが+7.8%(前月:▲2.7%)と前月から大幅なプラスに転じたほか、衣料・靴が+0.8%(前月:▲0.5%)とこちらもプラスに転じた。

一方、耐久財は▲1.5%(前月:+0.5%)と前月からマイナスに転じた。家具・家電が▲0.3%(前月:▲0.5%)と2ヵ月連続でマイナスとなったほか、娯楽財・スポーツカー▲0.4%(前月:+0.4%)や、自動車・自動車部品▲3.2%(前月:+2.3%)が前月からマイナスに転じた。とくに、1月は自動車・自動車部品が消費の足を引っ張った。

サービス消費では、娯楽が▲1.2%(前月:+0.4%)、外食・宿泊が横這い(前月:+0.8%)と、年末商戦の反動もあって大幅に伸びが鈍化したほか、住宅・公共料金も+0.1%(前月:+0.9%)と伸びが鈍化した。
(図表4)名目個人消費(前月比寄与度)/(図表5)個人消費支出(名目、実質)

5.価格指数:エネルギー価格は前月比、前年同月比ともに物価を押上げ

価格指数(前月比)の内訳をみると、エネルギー価格指数が+3.0%(前月:▲0.2%)と前月からプラスに転じ物価を押上げた(図表6)。一方、食料品価格指数は+0.1%(前月:+0.1%)とこちらも2ヵ月連続で小幅なプラスとなった。

前年同月比では、エネルギー価格指数が+5.9%(前月:+7.3%)と前月から伸びは鈍化したものの、16年11月以降は物価を押上げている(図表7)。最後に食料品価格指数は+0.9%(前月:+0.9%)と、7ヵ月連続のプラスとなっているものの、物価上昇圧力は抑制されている。
(図表6)PCE価格指数(前月比)/(図表7)PCE価格指数(前年同月比)
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
Xでシェアする Facebookでシェアする

このレポートの関連カテゴリ

経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

経歴
  • 【職歴】
     1991年 日本生命保険相互会社入社
     1999年 NLI International Inc.(米国)
     2004年 ニッセイアセットマネジメント株式会社
     2008年 公益財団法人 国際金融情報センター
     2014年10月より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2018年03月02日「経済・金融フラッシュ」)

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【【1月米個人所得・消費支出】可処分所得(前月比)は減税の効果もあり高い伸びも、消費者支出は前月から伸びが鈍化】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

【1月米個人所得・消費支出】可処分所得(前月比)は減税の効果もあり高い伸びも、消費者支出は前月から伸びが鈍化のレポート Topへ