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医療・ヘルスケア
2018年08月08日

かかりつけ医って何? 私たちはどうすればいいの?

「『かかりつけ医』を持ちましょう」は時代の流れか信頼できる「かかりつけ医」を見つけられればメリットは大きい

保険研究部 主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任   松岡 博司

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1――「かかりつけ医」の定義は

1|「かかりつけ医」の明確な定義はありません
「かかりつけ医」と聞いたときに思い浮かべるイメージは人それぞれでしょう。それでいいのです。現在の所、「かかりつけ医」に公式の絶対的な定義は存在しないのですから。

国語辞典『広辞苑』には、「かかりつけ(掛り付け)」について、「病気などでいつも特定の医者や病院にかかっていること」とあり、「掛かる」については、「たよる、頼む、世話になる」とあります。ですから「かかりつけ医」は、「病気などの時にいつも世話になっている特定の医者や病院」を言うとするのが、世間の最大公約数的な意味合いということなのでしょう。

実際、地域の中核病院のホームページなどを見ても、「かかりつけ医は、患者様やご家族の病気のことについて、親身になってくれるお医者様のことです。」、「かかりつけ医は、患者様がまず第一に診療を受ける身近な医師です。」等のように、大まかな意味合いで使われています。

一般的に「かかりつけ医」のような日常的に懇意な医師がいると、以下のようなメリットがあると考えられます。
  • ふだんの状態を知っているので、ちょっとした状態の違いにも気づいてもらいやすい。初期の病気発見や治療開始が期待できる
     
  • 病歴、健康状態やアレルギー等に関する情報がカルテに蓄積されるため、適切な情報に基づく適切な診療・治療を受けられる
     
  • 継続的なつながりを持つことにより気軽に健康相談等ができ、生活指導や、重症化しないうちの早期治療が期待できる
     
  • 複数の病気を複数の病院に分散して受診することによる検査や薬の重複などの無駄がない。専門医にかかるときも情報を連携してもらえる
     
  • 家族で診てもらっていれば、家族単位でかかりやすい病気や体質、生活環境等を理解してもらえる
2|日本医師会等による定義
2013年に日本医師会と四病院団体協議会が、「かかりつけ医」の定義を提示しています。そこでは、「かかりつけ医」は、「なんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」と定義されています。最近の政府の制度論議等の中でも、この定義が使用されています。

この定義によると、「かかりつけ医」に求められる機能は、以下のように多様です。
・なんでも相談できる
・最新の医療情報を熟知している
・必要な時には専門医、専門医療機関を紹介できる
・身近で頼りになる
・地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する
 
医療情報のアップデートを欠かさず、地域での初期の病気やケガ、慢性期の成人病等の医療に専念し、専門的な二次医療は専門職に任せる。そして地域の人々の頼れる相談相手になり、医療の枠を越えて、地域の「医療、保健、福祉」を総合的に担う。地域に深く根ざした幅広い活動を「かかりつけ医」に求めているのが印象的です。

これからの日本では、こうした機能を果たす「かかりつけ医」が求められることになりそうです。

2――イギリスの「かかりつけ医」制度

1|イギリスの状況
欧米には、社会に組み込まれた制度として、「かかりつけ医」を持つ国があります。その代表的な例としてイギリスを見てみましょう。なおイギリスの「かかりつけ医」は、GP(General Practitioner=家庭医または一般医)と呼ばれます。

イギリスでは、税金を財源とする「NHS」(National Health Service=国民保健サービス)が原則無料で医療を提供しています。NHSの下では、住民は、GPの勤務する診療所に登録することを義務付けられています。そして病気やケガの場合、どんな症状であっても原則として、まず登録したGP診療所を受診しなければなりません。この点、患者がいつどの医療機関にかかるかを自由に選べる、フリーアクセスのわが国とは大きく異なります。

患者が、検査、入院治療、手術など、大病院における専門的な処置を希望していたとしても、GPがそれを必要と認め、紹介しない限りは受診することができません。GPは10件のうち9件は、大病院に紹介することなく、自分で処置を完結させると言われます。イギリスでは大きな病院にかかることはたいへん難しいことのようです。

GPの紹介を受け、大病院を受診し、必要な検査や治療等を終えた患者は、再びGPの元に戻されます。イギリスではカルテ情報が電子化され共有されていて、GPは大病院での治療や処置の概要をカルテで確認できますので、治療の継続性が保たれます。

なお、以前は住んでいる地域でGP診療所が割り当てられていましたが、現在は住民が自らの判断で登録する診療所を選べるようになりました。不満があればいつでも登録を変更できます。登録の参考データとしてインターネットで、患者満足度調査結果等の情報が提供されています。
2|日本に導入するとしたら
イギリスの制度と日本の制度では、フリーアクセスについて大きな違いがあります。日本では、これまで認められてきた自由を法律などで制限することには大きな反発があるでしょう。そうしたこともあって、2013年に公表された「社会保障制度改革国民会議報告書」は「患者が大病院、重装備病院への選好を今の形で続けたままでは機能しない」との危機感を示した上で、病院の機能分化を進めるとともに、継続的な関係を持つ医師(=「かかりつけ医」)による「ゆるやかなゲートキーパー」機能を強化することが必要であると提唱しました。

継続的な関係を持つ医師による「ゆるやかなゲートキーパー」機能を強化するとは、ある程度の自由を維持したままで、国民に「かかりつけ医」を持つことを推奨していくということかと思われます。

3――「かかりつけ医」を持っている人はどれぐらいいるのでしょうか-いくつかのアンケート調査の結果から

実際に「かかりつけ医」を持っている人はどれぐらいいるのでしょうか。いくつか、公表されているアンケートの結果を見てみましょう。

1|横浜市健康福祉局の「横浜市民の医療に関する意識調査」(平成24年8月)から
「あなたには、あなたの心身の状態をわかっていて、治療だけでなく日常の健康管理や相談ができる医師(かかりつけ医)がいますか。」という質問に対して、「いる」と答えた回答者は47.5%、「いない」と答えた回答者は51.9%でした。 

「かかりつけ医」がいると答えた回答者の「かかりつけ医」は具体的には、「自宅・職場等から近い身近な地域の診療所(クリニック等)の医師」が73.1%、「自宅・職場等から近い身近な地域の病院の医師(ベッド数が概ね200床未満)」が10.7%、「ある程度大きな病院(ベッド数が概ね200床以上)の医師」が7.9%、「大学病院の医師」が4.0%、「その他」が4.3%でした。
2|東京都生活文化局「健康と保健医療に関する世論調査<概要>」(平成29年3月)から
「普段からかかりつけている医療機関(=かかりつけ医)がありますか」との質問に対して、「ある」と答えた回答者は66%、「ない」と答えた回答者は34%でした。

「かかりつけ医がある」と答えた人の「かかりつけ医」を選んだ理由は、「自宅から近いから」が78%、「家族が利用しているから」が21%、「医師や看護師が話しやすいから」が18%でした。
3|日医総研ワーキングペーパー「第6回 日本の医療に関する意識調査」(2017年7月11日)から
「かかりつけ医」を「健康のことを何でも相談でき、必要なときは専門の医療機関へ紹介してくれる、身近にいて頼りになる医師」として聞いた質問に対して、「かかりつけ医」がいると答えた回答者は全体の 55.9%、いないと答えた人は43.5%でした。

「かかりつけ医」がいると回答した人の67.2%は「かかりつけ医」は1人と答え、24.7%は2人、7.9%が3人以上と答えました。

また、「かかりつけ医」が1人と答えた人の83.4%が「かかりつけ医」は「診療所」の医師と答え、13.5%が「中小病院」の医師、3.1%が「大病院」の医師と答えました。

さらに、「かかりつけ医」がいる人に、その医師の診療科(「かかりつけ医」が2 人以上いる人については、最もよく相談に行く医師の診療科)を尋ねた結果は、「内科」とする人が81.5%を占め圧倒的でした。
4|「かかりつけ医」は広く認知されているのでしょうか
考えてみれば、今ほど自由や選択肢が多くなかった昔の日本では診察を受ける医師の数も限られていたでしょうし、「かかりつけ医」的な関係が普通のことだったのではないかとも思えます。現在でも、人々の心の中に、「かかりつけ医」をあたりまえと考える人は多いのでしょうか。

この点、3つのアンケート結果で、「かかりつけ医」がいると答えた人の割合は47.5%~66%。どちらとも評価できそうな数値になっています。

「かかりつけ医」制度を受け入れる素地はそれなりにあるものの、国民全体に当然の制度として受け入れられるには、あと一歩の後押しが必要といった所でしょうか。
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保険研究部   主任研究員・ヘルスケアリサーチセンター兼任

松岡 博司 (まつおか ひろし)

研究・専門分野
生保経営・生保制度(生保販売チャネル・バンカシュランス等、主に日本生命委託事項を中心とする研究)

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