医療・ヘルスケア
2018年08月08日

かかりつけ医って何? 私たちはどうすればいいの?

「『かかりつけ医』を持ちましょう」は時代の流れか信頼できる「かかりつけ医」を見つけられればメリットは大きい

松岡 博司

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4――「地域包括ケアシステム」と「かかりつけ医」

高齢化が進行する中、政府や自治体は、住民の日常生活圏の中で医療、介護、予防などを一体的に提供し、住民が高齢になっても可能な限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを全うできるようにすることを目的とする「地域包括ケアシステム」の構築を進めています。

この「地域包括ケアシステム」を運営していく上では「かかりつけ医」の機能発揮が欠かせません。住民の健康を管理し、病気を予防し、病気やケガの際には適切に処置し、必要に応じて専門医療機関を紹介する。そして、専門医療機関から自宅への戻りを在宅医療等でバックアップする。さらには介護や福祉のサービス機関と連携して医療を提供する。いずれにも「かかりつけ医」の力が必要です。

5――総合診療医

「総合診療医」はまだ認められたばかりの新しい専門医です。「耳鼻科」、「整形外科」といった従来からの領域別専門医が専門領域の「医療技術の深さ」を特徴とするのと異なり、「総合診療医」は「扱う問題の幅広さと多様性」を特徴とします。確かな医療技術を持つことは当然として、幅広い病気に対する診断力や、患者やスタッフとのコミュニケーション力等、総合的な力が求められるのが「総合診療医」です。これはまさに「かかりつけ医」に求められる力でしょう。

今後数年の間に増えていくと予想される「総合診療医」が、地域医療の中核として、「かかりつけ医」の役割を担うことが期待されます。

6――では、どうすればいいのでしょうか

地域の中核病院のホームページで、『「かかりつけ医」をお持ちください』等と題するコーナーをご覧になったことはないでしょうか。病院ごとに細かな違いはありますが、概ね、以下のようなことが書かれています。
  • 医療機関間の役割分担・業務連携に関する政策に沿い、当該病院と地域の小規模の病院や医院(「かかりつけ医」)の間で連携を行う「かかりつけ医」制度を推進する
     
  • 患者は、まず近くのなじみの医院(=「かかりつけ医」)で診察を受ける。「かかりつけ医」は、入院または専門的な検査・診療が必要と判断した場合に、当該病院への紹介を行う
     
  • 紹介を受けた当該病院は、専門的な検査、手術、入院等を実施する
     
  • 当該病院での専門的治療が終了し、症状が回復ないし安定した場合、「かかりつけ医」に患者を戻して継続的な治療を続ける
     
  • 患者の容態急変時に備えて、当該病院は24時間受け入れ体制を整えた医療を実施する
 
このように、「かかりつけ医」制度の推進が地域レベルで始まっています。

高齢化に伴う患者数と医療費の増大が続く以上、政府は今後ますます「地域包括ケア」を推進するため、何らかの「かかりつけ医」的なシステムの導入を推奨していくこととなるでしょう。

患者の立場から考えても、いつでも相談でき、家族の健康状態を日常から把握してくれている医師が身近にいれば、安心感ははかりしれません。自分なりの「かかりつけ医」を持っておいて損はないでしょう。とりあえず、日常的な風邪や体調がすぐれないといった一般的な病気の時に頼る、行きつけの「かかりつけ医」を作っておくのがいいのかもしれません。「総合診療医」がまだ普及していないうちは、あまり専門分化していない「内科」の診療所やクリニックが中心となりそうです。

「自宅または勤務地に近い」、「医師としての腕が確か」は当然、さらに、「わかりやすく説明してくれる、患者の話をよく聞いてくれる、相談しやすい」等、コミュニケーション面や自分との相性の面にも目を向け、全人的な信頼関係を築ける「かかりつけ医」を見つけたいものです。

日本医師会等が定める定義のような信頼の置ける「かかりつけ医」が大勢いる。そういう医療環境が早く実現するといいですね。
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松岡 博司

研究・専門分野

(2018年08月08日「基礎研レター」)

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